第6話 弓と、娯楽施設

Side:スパロ


 重湯もどきを食った村人の幾人かは動けるようになっていた。


「畑の石を集めてほしい」

「何でまた」

「精霊が欲しがるんだ」

「精霊ねぇ、食わしてもらった分は働くけど」


 村人が石を集めてゴーレムのお腹に入れる。

 ゴーレムは砂を畑に撒いた。


「ゴブリン狩りに行ってほしい」

「冗談じゃない。俺達は冒険者じゃない。命を賭けられるものか。モンスターさえいなければ村から逃げ出しているところだ」


 俺がやらないといけないらしい。


「ナノ、剣より強力な武器がほしい」

『槍か? 斧か? まさか、パイルバンカーじゃないだろうな』

「弓が良い。ずぶの素人でも扱えるのにして」

『よし、作るぞ。弓を畑に植えろ』


 猟師から弓を借りてきて、土に植えた。

 蔦がより合わさったような弓ができた。


 手にとってみると冷たい。

 金属でできいるらしい。

 矢をつがえると、弓が勝手に引き絞れられて、遠くに印が出る。


「あの印は何なの?」

『目標に印を合わせてみろよ』


 俺は遠くの木に印を合わせた。


「やったよ」

『発射と言え

「発射」


 矢が飛んでいく。

 風で少し軌道がそれたが、驚いた事に元の軌道に戻った。

 そして木に矢が刺さった。

「えっ、これ何っ!」

『弓と矢だが、違ったか?』

「魔道具の事を言ってるの。あんな高い物を俺が手にしていいの。必中の弓なんて、たぶん国宝だよ」

『まあ貰っておけ。気にするな』


 俺でもこれなら当たる。

 何度も試射していたら、ベルベルが寄って来た。


「凄い、スパロって弓の名手だったのね」


 どう言おう。

 凄いのは魔道具の弓で、俺は何にもしてないって言うか。

 いいや。


「前にこっそり練習してたんだよ」

『見栄を張りたいお年頃か』


 うるさい。


「そうなの。頑張ったのね。でもあなたの取柄は正直で優しい所よ。忘れないで」

「ごめん。嘘を言った。本当はこの弓は魔道具で、必ず当たるんだ」

「やっぱりね」


 ベルベルには嘘をつけないな。


「狩りに行って来るよ」


 俺は少し恥ずかしさもあって、この場から立ち去りたかった。


「気をつけてね」

「ああ」


 さあ、狩りの開始だ。


Side:ハイチック8000


 武器を要求してきた。

 弓が良いらしい。


【弓を設計しろ】

【弓のデータはありません】


 サンプルがいるな。

 弓を埋めて貰った。


 畑から弓が生えるのは不自然だな。

 蔦に似せたデザインにするか。

 どうせ、形なんかどうでもいい。

 機能は矢に付けるからな。


 スパロの中のナノマシンと連携して照準が出るようにする。

 ミサイル弓の完成だ。


 試射してみたが、いい出来だ。

 本当はレーザーで撃ち抜きたいところだ。


 スパロはベルベルに嘘をついた。

 見栄を張りたいみたいだな。

 だが、見破られてんの。

 ざまぁ。


 スパロがベルベルの尻に敷かれる図が見えた。

 だが、羨ましい。


【娯楽施設を要求する】

【そんな余裕はありません】

【銀河連邦に届く通信設備って、資源がどれだけ必要なんだ?】

【星丸ごとでも成功率0.000000001%と出ています】

【無理って事じゃん。だが、諦めん。エロVRをやるまでは】


 あれっ待てよ。

 資源はリサイクル可能だ。

 とりあえず、余分な資源は演算ユニットにして貯蔵すれば。

 演算ユニットを遊ばせておくのもなんだから、俺が娯楽に使う。

 いいんじゃね。


【余分な資源は、全部演算ユニットにする】

【理由はなんですか?】

【帰還する計画立案の成功率を上げる為だ。いま必要なのは考える頭だろう】

【その理由なら推奨できます】


【じゃあ、やって。そんでもって演算ユニットでVR空間を作る】

【正当な理由があるのですか】

【帰還する計画立案なんて、一瞬だろ。遊ばせておくのも勿体ないからさ】

【推奨できませんが、否定も出来ません】

【じゃあ、オッケーって事で】


 VR空間は瞬く間に出来上がった。

 ゲームも何もないグリッド線の空間だけど。

 殺風景なので、この村の女の子達の画像を貼り付ける。


【警告。銀河連邦法に違反してます。許諾の無い画像です】

【硬い事いうなよ】


【警告。許可出来ません。これ以上言うのでしたら、破壊コードを打ち込みます】

【悪かった。冗談だよ】


 俺は画像を消去した。

 なんて頭の固いAIだ。

 ちょっとぐらい良いだろう。

 画像データぐらい大目にみろよ。


 本当は3Dスキャンしたいところだ。

 エッチなところをすべてな。

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