第5話 ゴーレムと、こんなのありか

Side:スパロ


「麦を作ってくれ。塩はまだあるけど。あー、干し肉はどうするかな」

『干し肉も作れるぞ』

「本当か?」

『やってみる』


 麦が実った。

 それは良いんだが、干し肉が野菜みたいに生った。


 精霊のする事だからな。

 深く考えないでおこう。


「スパロ、麦の脱穀なんてやった事がないわ」

「俺もだ」

『脱穀は出来るが、問題がな』

「ナノが脱穀出来るって。でも問題があるみたい。問題って?」

『隠密行動中だ。現地の物に偽装するなら良いけど』


 言ってる言葉は分かるんだけど、意味が分からない。

 隠れなきゃならないって事だよね。

 それと脱穀とどんな関係が。


「じゃあ偽装してよ」

『何にだ?』


 ええと脱穀してくれる物。

 水車が畑の真ん中にあったらおかしいよな。

 じゃあ、ゴーレムか。

 聞いた話ではゴーレムは魔法使いの命令通り動くらしい。

 脱穀ぐらい余裕だろ。


「ゴーレムでどうかな」

『了解』


 畑の土が盛り上がると銀色のゴーレムが出来上がった。

 頭にはなぜか緑色の葉っぱがある。


「凄い、ゴーレムだよ。1流の魔法使いしか使えないのに。さすが精霊ね」


 ベルベルが喜ぶ。

 ゴーレムは麦を刈り取り、腹の中に納めると、麻袋に容れた小麦粉を腹から出した。


『なんだかな。非効率的過ぎる』


「十分に効率的だと思うけどな」

『ゴーレム制作で資材を消費した。補充を要求する』

「石で良いか」

『おう、いいぜ』


「ベルベル、石が必要らしい。他所の畑から取ってこよう」

「ええ、手伝うわ」


 ゴーレムも手伝ってくれるらしい。

 俺が隣の畑に行くとついて来た。


 ベルベルと石を拾う。

 ゴーレムはお腹の所を開けた。


『石を入れてくれ』


 俺とベルベルは石をゴーレムのお腹に放り込んだ。

 このゴーレム、段々と大きくなってないか。

 やっぱりだ大きくなっている。


 しばらく作業をすると、ゴーレムのお腹が閉じた。

 ゴーレムは畑に戻るとキラキラした砂を腹から吐き出した。


「ゴーレムに石拾いさせられないのかな」

『採掘権は持てない事になってる』


 だいぶ、めんどくさい。

 もしかして。


「重湯もどきって作れる?」

『お任せあれ』


 作れるらしい。

 便利なんだか、不便なんだか。


Side:ハイチック8000


 麦と干し肉が欲しいらしい。


 たんぱく質、脂肪、糖分を合成して疑似肉は作れるけども、パッケージをどうするかな。

 高機能プラスチックとかに包まれるのは不味いよな。

 みたところ、原始的なプラスチックも無いようだ。


【野菜の木に干し肉が生ったら、おかしいよな】

【設計可能。データには肉に類似した物が実る植物があります】


【そりゃあ、銀河連邦は広いけから、類似植物はあるかもだけど、それで良いのか】

【法律には抵触しません】

【変だと思うけどな。まあいいか】


 作ってみたが、スパロとベルベルは何も言わない。

 えっ、良いのか。


 麦の脱穀が出来ないって。

【ナノマシンで脱穀機を作れば、そんなのは簡単だ】

【機械は技術漏洩に該当します。現地機械に偽装を推奨】


 偽装しろって、どんな。

 分からない時は聞いてみる。


 スパロからの答えはゴーレムだ。

 ゴーレムは知っている。

 VRゲームで色々とお世話になっているからな。


 ゴーレムって、畑から作られるのか。

 ええとそんな馬鹿な。


【ええと、頭に葉っぱの髪の毛がついた万能ゴーレムを設計してくれ】

【ナノマシンをかなり消費しますが、よろしいですか?】


【もっと畑の土を採取しろよ】

【銀河連邦法では畑の地下利用は2メートルまでとなっています】

【仕方ないな。後で資材をもらって補充する】


 ゴーレムと言う名の万能ロボットが完成した。

 体はナノマシンで出来ている。

 主な材料はシリコンだ。

 土にふんだんに含まれているからな。


 こういうものを作った時のマニュアルは?

 あるのか。


【ぼく、ドラ○○ん】


 おい、伏字があるぞ。


【銀河連邦法では著作権は永遠です】

【そんなのマニュアルに書くなよ】


 万能ロボットが脱穀する。

 なんだかな、非効率過ぎる。

 もっとスマートにできないのか。

 出来ないんだろな。

 でも良い案も浮かばない。


 資材を補充してもらう。


【ゴーレムで採取できないの?】

【所有権のない採掘は禁止されています】


 くそっ、非効率さにうんざりする。

 こういう時のマニュアルは?


【HERO-Cです……。一見非効率に見えても、それが最善な事はよくあるとです】

【HERO-Cって誰だ?】

【銀河歴1972年生まれの人物です】

【知るかよ】

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