第4話 ゴブリン狩りと、爆発してしまえ
Side:スパロ
『おっ、起きたな。おはよう』
「びっくりした」
「何? どうしたの?」
心配そうなベルベルの顔。
「ナノが突然、話し掛けてきたからさ」
「ナノって誰? 何も聞こえなかったけど」
ナノの声は俺しか聞こえないのか。
「畑の精霊さ。俺にしか聞こえないらしい」
「精霊っておとぎ話の?」
「そうだよ」
「信じるわ。昨日の落ちた星に乗ってやって来たのね」
朝の支度を手早く終え、ベルベルとナノの畑に行く。
「この畑に精霊が宿っているのね。普通の土と変わりがないわ」
「ナノ、野菜を作ってくれ」
『材料が不足しているんだ。不用品を畑に持って来てくれ。死骸でも何でも良い』
「ええとゴミを入れろって言うんだよな」
『おう』
俺は村を出てモンスターを探した。
モンスターはすぐに見つかったゴブリンだ。
これを倒さないといけない。
俺は剣を抜いた。
『おい、心拍数が上昇してるぞ。大丈夫か?』
「戦いなんだよ。静かにしてくれ」
『補助してやろうか。剣に指を滑らせてくれ』
「こうか?」
俺が剣に指を這わせると、剣が不思議な光沢を帯びた。
『勇者よ、剣に精霊の加護を与えた』
これなら、出来る。
俺にも勝てる。
心が落ち着いた。
「てーーーーーやー!」
俺は剣を振りかぶるとゴブリンに振り下ろした。
ゴブリンは余裕綽々でこん棒を使って防御する。
俺の剣は水を切ったかのような感触でこん棒を斬り裂き、ゴブリンの肉も斬り裂いた。
ゴブリンのいやらしい笑いが驚愕に縁どられ、ゴブリンは死んだ。
うぇ、生き物を初めて殺したが嫌な感じがする。
でも必要な事だ。
魔石を剣でえぐり出す。
爪ほどもない魔石だ。
売っても銅貨数枚にしかならないだろう。
でも無駄には出来ない。
ゴブリンを引きずって畑に戻る。
畑の上にゴブリンを置くと、ゴブリンの死骸は溶けるように吸収されていった。
『勇者どの、姫の名前は?』
姫?
ああ、ベルベルの事か。
「ベルベルだよ」
『魔王を退治したあかつきに、王になるおつもりか』
なんて事を言うんだ。
でも精霊なりの洒落かな。
どう答えよう。
「なれるものならね。とりあえずモンスターは殺したい。協力してくれるかい」
『末永く爆発しろ』
どういう意味だろ。
精霊のギャグは分からない。
Side:ハイチック8000
スパロに朝の挨拶する。
女と暮らしてやがる。
羨ましい。
こういう時のマニュアルは?
おっ、あるぞ。
なになに。
【カップルなど爆発してしまえ】
【許可されない行動です】
【うるさいよ。大きなお世話だ】
夫婦ではないようだ。
ゆうべはお楽しみでしたねが無かったからだ。
兄妹かな。
それだと、悪く言って悪かった。
狩りに行くらしい。
獲物は緑色した猿みたいな奴。
スパロの心拍数が上昇してる。
助けてやるか。
【武器を与えるのは不味いか】
【今ある武器なら可能です】
剣を持っているが、剣が二つになっても強くなったとは言えない。
【ナノマシンを剣にコーティングするのはどうだ?】
【メッキと思わせるなら良いでしょう。剣の柄は銀メッキされています】
【じゃあそれで】
『補助してやろうか。剣に指を滑らせてくれ』
「こうか?」
剣を武器にしたい時のマニュアルは?
【民衆よ武器を取れ。戦いの鐘は鳴らされた。銀河連邦戦記、第13章】
【反乱は推奨されません】
このマニュアルおかしいよ。
俺の感性に従えば良いんだな。
『勇者よ、剣に精霊の加護を与えた』
剣をコーテイングする。
キラキラして玩具の剣みたいだ。
スパロの心拍数が落ち着いた。
緑色の生き物は殺された。
【あれは知的生命体のうちに含まれないのかな】
【含まれません】
【基準は?】
【文字文化を持つかどうかです】
銀河連邦の人類も文字を持たない時代があったのにな。
それ以前は動物扱いらしい。
緑色の生き物は畑で資源に分解された。
水分の一滴たりとも無駄に出来ない。
何時になったら、銀河連邦に帰れるのかな。
でも焦ってはいない。
俺には寿命がないからだ。
女の子はベルベルというらしい。
遠回しに結婚する意志があるか聞いたら。
結婚したいらしい。
末永く爆発しろと言っておいた。
ベルベルの体をスキャンして、エロVRのキャラに付け加えたい。
【くそう、何で俺には体を作る権限が無いんだ】
【人間そっくりなロボットにAIを入れるのは違法です】
【分かってるよ。スパロよ、末永く爆発しちまえ】
【爆発は一瞬です。論理的ではありません。継続する爆発は、爆発とは言えません】
分かってるよ。
いちいち、うるさいな。
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