第45話 ついに完成!

「うわあ!もうできたんですか?!」


 マリーの家のアパルトパンの2階、マリーとジェニーの薬草工房に大量の小瓶が運び込まれた。

 すべて作るのは10日後くらいだろうと言われていたラベンダー水と美容液のための小瓶が、発注からわずか3日後の今日、すべて納品されたのである。


「おうよ!なんだ、うちのやつらが色付瓶を作るのを面白がっちまってな。それに形も綺麗だろう?みんながこいつを作りたがっちまってよ」


「うちとしてはとても助かります!ありがとうございます!」


 箱の中には、それぞれ透明の瓶と、紫、ピンク、黄色の半透明の薄い色合いの、繊細で優美な美しいタイプとシンプルなタイプの2種類が、色ごと・形状ごとにびっしりと詰められていた。

 瓶工房では色付きの瓶が珍しくて、しかも美しい形の瓶は作る方も人気で、職人さんたちがこぞって仕事を取り合ってくれたらしい。


「わあ〜〜〜〜〜、綺麗〜〜〜〜〜!!」

「綺麗ね!!!」

「どちらのタイプも、とってもいいわね!」

「いいですね!!」


「満足してもらえて何よりだ。納品前に検品もしてあるし、割れることはねえ瓶だが、何か不具合がればすぐに知らせてくれよ」


「ありがとうございます。また追加でお願いするかもしれませんので、その時は宜しくお願いします!」


「おうよ!こっちこそ宜しく頼むわ!あ、うちの工房の女子共が、今度の祭りで、商品になったやつを見るの、楽しみにしてたぞ」


「わあ〜、そうなんですか?嬉しいです!」


「じゃあな!」


 工房長が数人の工房の人たちと薬草工房に箱をどっさりと積んで帰って行った。

 ガラスと違って丈夫なのに軽いのがありがたい。昇降機があるし、荷運びは男性に頼めるとはいえ、普段女子だけで作業するなら、軽いに越したことはないのだ。

 納品されたのは、


ラベンダー水用が全部で2400個

・繊細で優美な美しいタイプ 300個×4色=1200個

・シンプルなタイプ 300個×4色=1200個


ラベンダー美容液用が全部で1600個

・繊細で優美な美しいタイプ 200個×4色=800個

・シンプルなタイプ 200個×4色=800個


それから、今のところ販売の予定はないけれど、精油の瓶が200個だ。



「ええ、予想よりだいぶ早かったわね。ざっとだけど、部屋の中を整えていて良かったわ」


 元が空き部屋だったので大したものはなかったけれど、瓶詰めするスペースや在庫を置くスペースなど、動線を考えて早めに部屋を整えていて正解だった。


「ジェニーさん、ついに瓶もできましたよ!いよいよ、完成ですね!!」


 あれから孤児院へ話をして、間もなく成人をむかえる子供で、工房の仕事を希望していた二人の子供を、サシェ作りと美容アイテムそれぞれの工房に見習いから採用することになっている。

 その二人以外に、これまで通り手間賃を払って仕事を依頼する子供たちがいる。みんな器用な子ばかりだけれど、サシェ作りと美容アイテムの方と、どちらか得意な方を担当してもらおうと考えている。


「子供たちも、早速今日の午後にはやってくることになっていましたし、当面はサシェ作りを手伝ってもらうつもりでしたが、早速、瓶詰めを始めてもらいましょう!」


「そうね!」



 そして、午後になると子供たちが五人やってきた。サシェ作りの子供たちも作業をやめてもらい、一旦集まってもらい、説明をすることにする。

 すでに、採用の話をする際に、子供達にはサシェ作りと美容アイテム作りの2つの製品を作ることを説明しているけれど、改めて実物を見せながら、どういう仕事を行うか説明を行うのだ。


 ジェニーが開発したラベンダー用の装置は、完成したラベンダー水と美容液が蓋付きのビーカーのような容器に入るようになっている。ビーカーに入ったものを注ぎ口からそれぞれの瓶に注いでいくのだ。

 ただ、ビーカーは女性が持ちやすいように小ぶりなサイズにしてあるので、頻繁に空の容器に取り替える必要もある。

 そして、瓶に注ぎ終わった後、空になったビーカーは洗って煮沸消毒をして、また装置に設置する、ということの繰り返しである。


 まずは今日半日の作業の様子を見ることにする。主に子供たちが作業をすることになるので、やりにくそうなところがあれば改善する要もあるだろうし、1日にどれくらいの瓶詰めができるかも確認しておかなくてはならない。お祭りまで、後2週間ちょっとなのだ。


「みんな、瓶詰めするときは、ゆっくりでいいからね?やりにくいこととかがあったら教えてくれる?」


「「「「「「「「「「「 はい!! 」」」」」」」」」」」


 子供達から元気な声が返ってきて、早速、サシェ作りと薬草工房に分かれて、いよいよ製品作りの開始だ。



 結局、薬草工房には今日来た5名のうち4名がそのまま仕事に就くことになった。サシェ作りの1名が裁縫より薬草工房の方が良さそうということで、今日来たうちの裁縫が得意だという1名と入れ替わってもらった。


(ミシンがあったら楽なんだけどなー。こっちは全部手縫いだもんね。ミシンとか作れないかな?今度、瓶のおじさんに瓶の工房長どこかで作れないか聞いてみようかな)


 魔導具のおかげで、多くの部分は前世とあまり変わらない便利な生活ができているけれど、細かなところでは手作業だったりアナログなのである。

 サシェの方も祭りではたくさん在庫を用意する予定なのだが、ありがたいことに、すでに日々の宿泊のお客様も購入してくれていることもあって、手縫いには限界がありそうだと思っているマリーだった。


(うん、明日にでも瓶のおじさん瓶の工房長のところに行ってみよう!)


 そんなことを考えていたマリーだったが、ふと思いつく。


「ジェニーさん…そういえばなんですけど」


「なあに?」


「ラベンダーの美容アイテムって、製品化するまでの時間を考えて、お祭りで販売することにしてましたよね」


「そうね」


「でも、もうできちゃいますよね?」


「…そうね…」


「これって、もう販売できますよね?」


「…そうよね!」


「ですよね!じゃあ、早速販売していいか、パパとオリバー支配人に確認してみて、OKが出れば、早速販売したいですよね!」


「そうよね!!お客様の反応も見れるし、改善点などもあるかもしれないもの!」


「ですよね!!では、二人のところに行ってきますね!!」


「マリーちゃん、頼んだわ!!」


 マリーは、瓶詰めが終わったばかりのラベンダー水と美容液をそれぞれ手に取ると、ふんす!鼻息も荒く、セルジュとオリバー支配人の元へ向かったのである。

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