第三話 

――次の朝


アネットは自分が作った光景に驚いていた。


「すご~い!」


そう、森を開拓した場所は農地に。


農地は主に野菜畑に。


そして家はまともに住める状況となった。釘を使わずに補修とかすごい。組み込み式で補修したのだ。


「服が買えるわ!」


アネット念願のボロ学生服からの脱出である。そして餓死で死亡という破滅フラグからの回避である。服どころか靴も買えそうだ。


その時人形たちからなにやらジェスチャーが出た。


「うん? なになに……私の……全体……にください」


(どういう意味だろう? まさか……)


「名前をください?」


そう言うと人形たちはいっせいに頷く!!


「そうだよね! ごめんね。いつまでも『奉仕人形』とか失礼だよね!!」


そうだ、そうだと人形たちはいっせいに頷く!!


「ごめんね……」


(うーん、どうしよう)


「じゃあ、最初に作った人形は『アルファ』ちゃん」


アルファは嬉しそうだ。なにより家という始まりの地を作ったに等しい。いろんな意味で「α」なのである。


「2番目は『アグリ』ちゃん」


アグリは納得のようだ。初めての農業担当の人形だからアグリである。


「3番目は『フォレスト』ちゃん」


森の開拓を担ってきた人形である。誇らしげだ。人形サイズ用のこぎりをや斧を作るのは大変だった。いくら初歩の魔法が使えるとはいえ。


「4番目は『アクア』ちゃん」


同じ農業担当でも農業用水を確保してきた人形である。


「5番目は『ガイア』ちゃんよ!」


ガイア。大地という意味である。樹の株を細かく切って農地に変えて来た大地の子。この子ものこぎりや斧を持ってる。


(うーん、そういえば5人とも全員男の子の人形を作ってしまったのですわ。今度は女の子も作らないと。そのときはアルファちゃんは家事以外の仕事に就いてもらおうかしら)


◆◇◆◇


そしてふもとの村に降りて念願の服をゲット。もちろん布地と綿も買った。魔導石が切れて人形が動けなくなっても大丈夫ないように予備の魔導石を買えるようにもなった、もはやアネットは村のお得意さまだ。


これで6人目の人形が作れる。いずれは村の人口を抜けるわ。


そう、村の人口は30人程度である。つまり人形を30人以上作ればちょっとした小領主に等しいのだ。


6人目の人形を作り魔導石を埋め込み、魔法を唱える。新しい命が誕生する。


「今日から君は『キーパー』ちゃんよ!」


家事全般を担うからキーパー。人形を洗うことまで全部である。初の女の子の風貌を持った人形となった。アネットはこれでだいぶ楽になる。


「アルファちゃんはとりあえず農業に回って頂戴」


アルファは親指を出す。OKって意味かしら?


「それとみんな、明日は休んでいいわよ」


その声をきくと人形は一斉に喜ぶ。


「実は、じゃーん」


それは茶葉の缶にカップだった。


(安物だけどね)


「明日みんなでお茶会やろうね」


人形たちは喜んだ。


「もちろんあなたたちは飲むことも食べる事も出来ないから……貴方たちの分も食べてから魔導石へのエネルギーチャージを一杯するからね!」


そう、人形にとって実際のごちそうはお茶でもクッキーでもない。エネルギーチャージなのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る