C4 黒に溺れる
File4-1 煩悶
ずっと、理由を探していた。何故私が選ばれたのか。何故私は、あのとき"アディ"を殺したのか。何故、私たちは救済代行屋などと名乗っているのか。
何故、何故、何故、何故、
わかるものとわからないものの境界さえ、今は曖昧だ。しかし。
「もう、どうでもいいか……」
全て諦めた。私の愚行の先には何も残らないのだ。私は歪んだ感情に従い動くことにした。
……そしてこの世界も、私によって壊される。
■ ■ ■
私の目前には、世界の兵士を全て揃えたような軍隊が配列されている。見たこともない兵器もある。
「ふふっ、あははっ」
笑った。私は今、笑っているのだ。
「はじめてだよ。こんな気持ち」
今この瞬間、私は存分に力を振るう事ができる。
「本当に、……本当に用意してくれたんだ! 私の為に! 私ひとりの為だけに!!」
彼らは私をどう見ているだろうか。私に対し、個人個人はどのような感情を抱いているだろうか。恐れ、怒り、それらの感情が浮き出るようにわかる。
「……ははっ。これでいいんだ。見ていられないほどの醜い戦争なんて起こすくらいなら、私という一人の敵の為に全ての国が協力してる姿のほうがよっぽど美しい! さあ! 手を取り合って! 力をあわせて! みんなの力で、私を止めてみせなさいよ!」
ただの娯楽だ。この世界は、私の為の娯楽にしよう。そう決めた。
「
この世界に入ったときからずっと抑えてきた制約が、消える。私の全てが、解き放たれる。
私は虚空から銃を取り出した。私の象徴であり、私の最高の"武器"。
「"
私は呪文を唱え、引き金を引いた。一切の制限のない全力の一撃を叩き込んだ。
数千万の軍勢など意味はない。世界は砕け、無が満ちた。世界は無意味な停滞から"救済"された。
「ねえ、この世界は救われたんだよ。最期にはみんなが一致団結して、戦争なんてなくなっちゃった! 綺麗な物語の終わりだね!」
高らかに笑っていたが、すぐに落ち着き真顔になる。
「……違うよ。こんなの」
無となった世界で、ただ一人嘆く。
「……私、こんな力なんて望んでない!!」
この力は、私が信じていたほど綺麗なものではなかった。破壊による救済。私にできるのは、ただそれだけ。
「はは……、何、やってるんだろ」
残ったのは、虚しさ。
誰も私に共感しない。
誰も私に寄り添わない。
誰も私を、認めない。
「……でも、それでいいんだ」
誰も私を阻めない。
私は、ひとり。
『帝国と共和国による終わらない戦争は、世界の外から来た天災により中断させられたの。……そのまま世界は壊されたの』
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