第13話 母の仕事場⑤

嘘ぉおおお!?忙し!?え…なんで?まだお昼でっせ?


「ミヤ、こっち任せる!」


「うぃうぃ」


いや~いやぁ~!!

お昼から忙しいとは思わんかったわ…。


「うーちゃん、3番席」


「はいっす」


「有田君、こいつら2番席」


「へい」


あ~忙し忙し。

次は~お昼からステーキってやるなぁ…。

ジャガイモ付けたろ。多すぎんねん。


「ミヤ!」


へいへい。お任せあれ~ってな。


「5番席と座敷3番、置いとくね」


「はいよ。かよ、付いて来て。先ずは座席を覚えよう。空いた時間で店長から接客教わるから」


「うん」


かよちゃん頑張え~。今日はおかしい日やねん。普通こんなに忙しくないねん。


「5番席ポテト盛り合わせ2つと、シーザーサラダ1つ追加」


「10番席炒飯2とロシアン餃子1も追加です」


あっれぇ?おかしいぞぉ?

お客さん多すぎない?なんでぇ?

忙しかったらそれだけ時間が過ぎるのも早いんやで~。

お客さん捌ききったらやっと休憩やわ~。


「へい、賄い出来たでぇ!?」


疲れ切ったウェイター諸君。ご飯ですぞ?


「ミヤちゃんありがと~」


「ミヤさん、あざ~す」


「しっかりせんね。ほれ、ロシアン餃子のおまけですん」


「「いらない」」


「嘘やで?」


「えぇ?どっち?」


「さぁ?どうやろか…ふふっ」


「あ~こういう時は大丈夫だろ?」


「ふふっ、有田君…頑張りや?」


意味深に去っていくぜ!!

まぁ普通の餃子ですがね。

にしても、なんでこんなに多かったんだろうか?


「ミヤ、お疲れさん。」


あ、野生のマネージャーが現れた。

ゲットしますか?いいえ、捨ててしまいましょう。


「はい、ここから先はダメですよ~。あっちの方から入って下さい」


「別にいいじゃん?見られる場所じゃ無いんだし…」


「そう言ってると痛い目見ますぞ?ほれほれ」


追い出し成功。キッチンは神聖な場所やねん。

まあ、ノブやん確認してたし…出てくわな。

それに、不潔は許しません。社長との約束なんです。


「なんだ、あいつ来やがったのか」


「そうやねん。ノブやんからもビシッていてこましたって!」


「めんどくせぇ…」


まぁ、マネージャーからノブやんには近寄らへんと思うよ?

社長の息子兼マネージャー。

敏腕とは言い難いけど、仕事はきっちりする方の息子さん。

長男はぁ…あかん。長女もあかん。次男だけマシ。


「ほれ、賄い」


「おぉ…ありがと。ノブやんは?」


「俺はさっき食った」


「ゼリーはおやつやで?」


「は、別に良いだろ?」


「しゃあないなぁ…待ってて」


「おい…たくっ」


ふふん。栄養のアドバイザーとインストラクターの資格を持つ吾輩に任せよ。

ノブやん料理人やのに食事に興味なさすぎるからな~。

せやからガリガリやねん。飯食え。米食え。肉食べろぉ!


「はい、食べるまで見ときます」


「…くそっ」


「御下品ですわよ?」


「うざっ…」


ノブやん作のカツレツサンド美味しいです。うま~。


「そういや、あいつ何しに来たんだ?」


「知らない。なんだろ?」


「うぃ~終わった~。暫く来ないっしょ」


「お疲れ、マキちゃん」


「あ、美味しそう…一つ良いです?」


「おう、食いきれねぇ」


「ありがとうございます。いただきまーす」


マキちゃんヘロヘロ状態。

もう少しで勤務終わりだから頑張えー。


「6連勤きついっす」


「若いんだからいけるだろ?」


ノブやん的にはマキちゃんはセーフ。働き者だからね。


「ムリムリ…無理っス」


マキちゃんはノブやんを怖がってる。二人にはなりたくない派。


「大丈夫大丈夫。明日休みでしょ?」


「そうだけど…ねぇ?」


おいおい、明後日のシフトはノブやんとマキちゃんじゃぞ?

いい加減慣れなはれ。ただのツンデレ拗らせたおっちゃんやで?


「あ、そうだ(唐突)、ノブやん、パ…チンコ勝った?」


「変な所で切るな…。負けたよ」


「ん?あぁ、ノブさんパチンコしてるんです?」


実はマキちゃんもスロットしたりしてます。

ギャンブラー同志だったの教えたろ。


「おう、新台が入っててな…最近のは小難しくなっちまったなぁ…。この前ミヤと店の前でばったり会ってな。うるさかった…」


「んこんこ言ってただけじゃ無いですか」


「ミヤちゃん…ち、もつけてたでしょ?」


「正解。マキちゃんにはこれをプレゼンツ!」


どや顔で親指立てます。景品にカツレツサンドを一つプレゼンツ!美味しいよ!


「こいつ馬鹿すぎるだろ?」


「まぁ…。でも良い子ですよ?」


「それはまぁ…。でもなぁ…」


おうおう。素直に褒んかい!!泣くでぇ?


「まぁ、良い所も馬鹿な所もひっくるめてミヤですよ」


「馬鹿って…褒めんといてぇな♪」


「褒めてないよ?」


「これはもう治らん病気だろ?」


「あれぇ?褒めてよぉ」


なんだか悲しいですわ。私、泣いちゃいます。

ピーヒョロロ…。


「あ、そう言えばさっきマネージャーとすれ違って話したんですよ」


「そうなの?何か言ってた?」


「うん。何か大手の料理雑誌に此処が載ったらしいよ。高評価で」


「あ~。もしかして…忙しかったのはそれが原因?」


「かもね」


そっか~。良いのやら辛いのやら…。


「まぁ、良いんじゃねぇか?」


「まぁね。皆働き者だから良いよね」


「そういえばそうだね~。昔の職場みたいにギスギスしてないから楽」


「マキちゃん、前は何してたの?」


「チェーン店の料理番。バイトがうるさいのよ…、喋ってばっかで動かないし」


「そんな奴らぶん殴れば良いだろ?」


「今はパワハラですよ。直ぐに辞めさせられます」


「嫌な時代じゃのう。昔はもっとマシでしたじゃ」


「どんな言い方よ…。そういうミヤは何してたの?」


「え、水商売」


「え?」


「キャバ嬢ってやつ?あれあれ」


「えぇ?うっそだぁ」


「ホントホント。まぁ、すぐ辞めちゃった。お酒弱いし」


「…お酒強かったら続けてたの?ん?ミヤちゃん、いつから働いてた?」


「ないない。と言うか、正規のバイトにすら雇ってもらえてなかった」


「なんで?」


「ん?だって未成年者で年齢詐欺だし、中卒?だし、小さい娘も居たし。16の時だったかな?」


「…あれ?ミヤって何歳だっけ?」


「28歳ですぞ!」


「もう忘れちまったなぁ。ガキンチョは今いくつだったか?」


「4月生まれの14しゃい。中学2年生ですぞ!可愛いんだぁ~」


おいおい、お二人さん。どうしたんだね?

すんごい面白い顔しとるよ?ぷぷぷっ。飯うめぇ。

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