第7話 母のやらかし⑥

なでなで~めっちゃかわええ…。

え、なんで涙目なん?


「ちょ…お母さん!?」


え、瑞穂ちゃんも撫でたいやろ?ええんやで?

あ、先にうちな?早いもん順やさかい待っててな。


「あ、あの…」


「ええやん…」


「…え、え?」


「めっちゃかわええやん」


「お母さん!!」


「痛ぁ!?」


お尻逝った逝った!!いったぁ!!

あ~これ、痣になるでぇ…。どうしてくれんねん?

抓り過ぎ…涙出てきた…。


「シホのお母さん、本当にごめんなさい。家のお母さんちょっと変なので…」


「あ、いえ…大丈夫です…へ?」


「めっちゃ可愛いやん。飴ちゃん上げよか?」


「…これ以上変な事言わないでね?」


「うっす…」


瑞穂ちゃん怖いです。身の縮こまる思いになりまする…。

目を盗んでもう一回頭を撫でようとしたら…叩かれた。地味に痛い…。


「くすん、シホちゃんお助け…」


シホちゃんの後ろに回り込む。

ふふふ、肉盾ゲット。このまま行くぜぃ…。


「あ、あの…ミ、ミヤさん?」


「このまま前進しなさい(ボソッ)」


「え?いや…背中…」


「さぁ、行くのです(ボソッ)」


「え、え?」


シホちゃんの後ろに隠れているから、手は出し辛かろう…ぐふふ。

なんできょどり気味なのかは分からんが…親子仲が悪いのかな?

ええい。こんなきゃわわなママさんと仲違いなど許せませんぞ?


「し、し~ちゃん?」


シホちゃんママ、テンパっちゃってるぅ…メッチャ可愛いで、これ。

よっし、このまま親子ハグじゃい。ほっほっほ、ついでに私もぉ♪

おぉ!?


「ちょっ!?」


ホック外された!?何という事でしょう!!詰めるのめんどくさいのに…。


「お・か・あ・さ・ん。いい加減にしなさい!ご迷惑でしょ!」


「はい、すんません…」


あ~これはヤバいですわ。

テンション上がり過ぎて調子乗り過ぎました…。


「すんません…」


深々と謝罪しやす。

心の中ではすんませんしたー!!って大声出しとくわ。


「い、いえ…。その、お構いなく?」


「…す」


お、何だか君達嬉しそうじゃの。

ええことでもあったん?


「お母さん?(ぼそっ)」


吐息で耳がくすぐったいんじゃなくてさ、ゾワッてした。ビクってなった。

これ以上怒らせたら後に引くな…瑞穂ちゃん…根に持つタイプだし。


「お、おほん。先程は大変失礼いたしました。改めて、娘の瑞穂ちゃんがお世話になっております。母の都と申します」


ホック外れたままだから頭下げ辛いんですよね~。

揺れる揺れる…邪魔くせぇ…。


「え、あ。あの、本当に都さんですか?」


「はい。都本人で御座います」


どういうこっちゃね?あ、さっきのやり取りは流石にマズかった?


「…お姉さんとかで無く?」


「確かに姉はおりますが…都本人ですよ?」


もう何年も顔合わせとらんがな、会いたくもないし。

っていうか、なんで姉が出てくるんですかねぇ?知り合い?世の中狭いね。


「お母さんの考えてる事、多分違うと思うよ?」


「ほぇ?どういう事?」


「ミヤさん、若く見えるっすから、うちのママ…母さんが間違えてるんっすよ。」


「シホちゃん。遠慮せんでママって言ってもええんやで?ママは嬉しいもんやねんで?(揉み手)」


「…っ」


器用な表情作りますなぁ。耳まで真っ赤っかですぞ?


「お母さん。少し黙れる?」


「うっす…」


こわっ…黙っとこ。


「娘の瑞穂です。いつもシホと仲良くさせてもらってます」


「あ、此方こそ。詩帆ちゃんがお世話になっています」


あれぇ?なんで瑞穂ちゃんの時やと普通なん?

まぁ、その可愛さに免じて許してあげますわ(上から目線)。


「本当に家のお母さんがすいませんでした」


「い、いえ。大丈夫ですよ?」


あざといなぁ…。そのあざとさ、グッドです。へへっ、85点。


「ご迷惑をこれ以上お掛けする前にお暇致します。シホ、また明日ね。」


「お、おう…」


「お母さん、帰るよ」


「ええ?もう帰るん?」


「お母さん?」


すんません…。ホンマすんません。

って、このまま帰らなきゃいけないんですか?

ブラのホック外れたままなんですが…気持ち悪いんですけど?


「コンビニ寄ろっか。アイス食べたいな~」


「…仰せのままに」


トイレ借りて直そ…。

コンビニまで歩かなあかんのかぁ…腕で支えとこ…。

あれ?これあれやん。中々しっくりくるやん。しんどいけど…。


「厚着してて良かったね?」


「…うん」


それはそうだわ。薄着だったらヤバかったかもしれん。

流石に痴女にはなりとうないわぁ…。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「…母さん、ごめん」


「え、どうしたの?」


無茶苦茶恥ずかしかった…。

ミヤさん…本気で変だ。

でも、久しぶりにママにくっ付いた気がする。

ママに…何か…今まで嫌だったのが嘘みたいだ。


「し~ちゃん、お夕飯…美味しかった?」


「…うん。あの、すぐ近くのお店あるだろ…あそこで料理人してるんだって」


「そうなんだね。…また今度行こっか?」


「うん…」


なんか…気恥ずかしいな…。


「お風呂先に入る?」


「…はいる」


なんでママが、もじもじしてるんだよ…。


「い、一緒に入る?久しぶりに…」


「…いい。一人で入る」


流石に一緒に入れるかよ!もう中2だぞ!?

誰も親と一緒に入ってる奴なんかいねぇだろ!!


「…勉強する。テスト近いし…」


「うん。お風呂出来たら呼ぶね♪」


子供ガキっぽく笑うママが…妙に懐かしく感じる。つか、テンション高ぇし…。

そういえば、最近話もあんまりしなかったっけ…。

…ミヤさんのおかげ?っていうか…。


「滅茶苦茶デカかった…」


背中に残ってる感触がヤバかった…。

ミズホもあれくらいデカくなるんかなぁ…。少し羨ましい。

ママは小さいからなぁ…。おれの成長はあんまり期待出来ねぇな…。

って…何考えてんだ…おれ。


「勉強だ勉強。ミズホのおかげで大体理解できたし…後は復習だ」


ミズホと友達になってから成績が嘘のように上がった。

分かり易いし、教え方が上手い。それに、真面目で良い奴だ…。

ユリはお調子者で馬鹿だけど、あいつも良い奴だ。


「し~ちゃん、ママって呼んでくれて嬉しいよ♪」


「…ふん」


何が嬉しいんだよ…くそっ、調子狂う…。

そういえば…子供ガキっぽいママが何で嫌いになったんだっけ?

いつからギスギスしちゃったんだっけか…?

まぁ…忘れるって事はどうでもいいんだろ。


「ふんふ~ん。ふふっ」


鼻歌歌いながら歩いてるママに目を向けてしまう。

ちょっとだけ、本当にちょっとだけだけど…ミヤさんとミズホの関係が羨ましいと感じてた。

今日は…ちょっとだけ、昔に戻った気がする。

…とりあえず、勉強しよ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「だぁ~れぇも帰って無いしぃ!?お父さんもお母さんもどこ行ったの!?」

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