第6話 母のやらかし⑤
焼け♪ひたすら焼け焼け♪ハンバーグぅ。
蒸せ♪ひたすら蒸せ蒸せ♪焼き餃子ぁ。
あ、肉じゃが残ってたっけ?チンしよっと。
炒めろ…もっと炒めるのじゃ…野菜マシマシ肉炒め。
肉は良いぞぉ…米も食べろぉ!?
「うまっ!?」
「美味し~」
「美味しいよ、お母さん」
照れるぜ…へへ。御代わりもあるでよ?たぁんと食いねぇ!
「お代わり!」
「あたしも~」
「あ、おれも…」
「お任せあれ!」
今の私は炊飯器前に立つお代わり代理職人。
いや~、美味しく食べてもらって良かった良かった。
食卓は肉肉しかったけどね…。
一応野菜品も出したけど、やっぱり肉でしょう。
うん、美味い。
「美味しかった~。ミヤちゃんありがと」
「美味かったっす」
お客さんも喜んでもらえましたぞ。私、大勝利。
「お茶飲む人いる?」
「「は~い」」
空になったお皿を持って行ってくれて、更にお茶を淹れてくれるなんて…。
瑞穂ちゃん最高!!お母さん感激しちゃいます…超うれぴー。
「勉強はどう?」
「みっちゃんに教えてもらったから、大丈V」
「おれも助かって…ます」
おっさん菌はユリちゃんにまで感染していたか…。
ピースサインまでばっちりしちゃって、良き良き。
「そう言えば…シホちゃんと話した事少なかったよね?」
「うっす。今日は色々あざまっす」
「良いって事よ。その代わり…少し協力してもらうわ」
「協力?何するんすか?」
「簡単簡単。瑞穂ちゃんの学校生活を聞くだけだよ。ヘイ、プリン交換しようぜ」
「ミズホの?別にいいっすけど、浮いた話は聞かないっすよ?あ、これっす」
「ちぃ…こっちもか…」
「どういう事?」
「ミヤちゃん、みっちゃんの恋愛話を聞きたいんだよ」
「残念だけど、瑞穂ちゃんだけじゃないよ?皆の聞きたい。こういうのに飢えてるんです」
「変でしょ?」
「あ~…うん」
仕方ないじゃん?
女子中学生へと成長していく過程に生まれる恋愛話って…聞きたくなるじゃん?
私はどっちもアレだったし…。
こういうのって憧れちゃうんだよね~。
「熱っ!?」
「お母さん、お茶だよ?」
ほっぺ…頬っぺたがぁ!!
「みっちゃん、サンキュー」
「やり過ぎじゃね?」
「良いの良いの。お母さんの悪い癖が出る前に処理しないと」
「うぅ…瑞穂ちゃんが冷たい…」
あ、熱いお茶は美味しいれす。
ふぅ…極楽。
「ミヤちゃん可哀そ~」
ユリちゃん…同情してもらってあれなんだけど…ユリちゃんも実は可哀想なんやで?
ユリちゃんママさんとパパさんが今頃励んでいるのは内緒ですな。
「別にいいでしょ?私のお母さんは変だし」
変を強調されるのも…何だかなぁ。
でもその表情は満点あげちゃう。
「ちょっと着替えてくるね」
おや?瑞穂ちゃんも見送りについてくるのかな?
「ミヤちゃん愛されてるね~」
「嬉しいわぁ~」
「え?今の流れで?」
ツンデレですぞ?ツンツンが少ないデレデレですぞ?
嬉しいでしょうが!!
「そういえば…三者面談があるみたいだけど?」
「あ、そうなんだよね。早いけど進路希望とかそんなんだよ?」
「めんどくせぇよな」
「ほえ~。この辺ってどんな感じなん?」
「口調安定しないね~。普通じゃない?」
「普通ってなんなん?」
「ぷっ…みやちゃん、不意打ち止めて」
「どげんしたと?」
「ぷっ」
「ユリちゃ~ん。シホちゃ~ん」
「「ぷふっ」」
この前の映画放映であった声マネを披露したが…好感触。
ぬしらも観ておったか…感動しちゃったよね、あの映画。
「何やってんの…お母さん」
「みっちゃ~ん」
ぺチンと叩かれるが痛くも痒くもありませんな。母を舐めるなよ?
「もう、7時回りそうだよ?」
「ぷふふっ…」
「…ふふっ」
ユリちゃんとシホちゃんにはウケてるけど…瑞穂ちゃんには今一で候。
う~ん、年頃の子は難しいなぁ…。
「ユリ、シホ。早く支度しなさいよ」
そう言えばユリちゃんはスカートを改造してるんかい?短い様な気もするけど?
最近は自由になりつつありますな。シホちゃん、パーカーなんて羽織って良いの?
それとも両者校則違反かのぅ?
「ふふ…分かったってば」
「…っ、おう」
「みっちゃ~ん、飯はまだかいのう?」
「「ぷっ!!」」
「さっき食べたでしょう…お・か・あ・さ・ん?」
いたたたた。抓るのは宜しくない。
これが反抗期って奴ですかい!?
「痛いわぁ…瑞穂ちゃん」
なんで頬っぺたばっかり狙うんですかねぇ?
「収集つかなくなるから。ほら、立った立った」
勇ましいのぅ…我が娘よ。
なんちゃってギャルとなんちゃってヤンキーをものともせんとは…。
化粧は落としてないし、エプロン外して…このままでいっか。
さて、シホちゃんママを見に行きますか。
「お母さん鍵持った?」
「持ってるよ」
「「お邪魔しました」」
薄暗くなっちゃたけど、まだ明るいから大丈夫かな?
「ユリの家から行って、そのままシホの家に行こっか」
「おれんち遠いぜ?」
「シホちゃんの家はどのあたり?」
「学校から西の方っす。20分くらい歩いたマンションっす」
「あ~、あのへんね。オッケー」
職場の近くやん。
もしかしてシホちゃん来たことあるのかな?
「[醍食堂]ってお店知ってる?」
「知ってるっす。あそこの飯美味いっすけど…もしかしてミヤちゃんさんの働いてる所っすか?」
「ミヤちゃんさんってなにさ?」
ミヤちゃんさんというフレーズに私は素で突っ込んでしまった。
「ミヤちゃんで良くない?」
恥じらうなんちゃってヤンキー…なかなかええやん。
「ミヤちゃんでも良いよ。まぁ、呼びやすい感じでね」
これはフォロー出来ませんわぁ、めんごめんご。
「それじゃ、また明日ね~」
ユリちゃんハウス…ここがあのおん…やめとこ。
元気娘は帰っていく。両親がいないお家へね…へへっ。
変な意味じゃ無いよ?
恥じらいヤンキーを慰めながら徒歩10分。
ここがあのおんなの…ちゃうって。
結構いい感じのマンション、お値段高そう…。
おお、入口がボタン式ですぞ?
「うち2階だけど…エレベータにしときます?」
おっと?さっきまでの強気はどこへ行ったん?
「階段で良いんじゃ無いかな?」
「うっす」
「シホのお母さんってどんな感じ?」
「どんなって…まぁ、見た方が早いんじゃね?」
お、その調子その調子。
キャラ立ってて良きですぞ。
「ただいま…」
あんまり大きい声じゃ無いのはマイナスポインツ。
そこは帰ったぞ!!とか言わないと。
「あ、し~ちゃん。おかえり」
奥からぽてぽてと愛らしいスリッパを履いた小柄な女の子?がやってくる。
なんなんこの可愛い生物…え?まじで?
「その呼び方やめろって!ま…母さん」
「え?あ…ご、ごめんね」
え?なに?お母さんなん?可愛すぎひん?
ちっちゃ可愛い。しょぼくれ方もきゃわわ…ええな~。
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