第4話 母のやらかし③

日差しと気温で火照った身体はアイスの力で冷却完了。


「うわ~、これえっぐぅ…」


「え、ユリ…それ着るの?」


「マジかよ…」


「いやいや、着ないってば。あ、でもミヤちゃんなら似合うんじゃない?」


姦しい女子中学生3人がの下着を持ち寄りながらはしゃいでいる。

うんもう、再燃焼しちゃうわぁ…あっつ。

ていうか、なにソレ…ほぼ紐じゃん?

おいおい、こんなもん此処に置いてていいんかい?

下着専門だから良いんですぅ。


「みっちゃん、これなんてどぉ?」


ちょっぴり背伸びした感じで黒を推すユリちゃん。

可愛さでは無くお色気を狙うのは、良いセンスだ。

バリエーションも豊富だから妄想も捗りますな…ぐふふっ。

でも…紐はちょっと早いんじゃないかな?


「ユリはそれにしたら?」


直接NOとは言わず遠回しな拒否。

これなんですよね~、気難しい女心…。


「普通のにしろよ…」


赤らまっちゃったシホちゃんに癒されるわ~。

そんなシホちゃんには是非ともな下着を付けてもらいたい。

あ、これ良いんじゃね?

高っか!?


「え~、つまんないもん。シホとかコレ興味あるんじゃない?」


「ねぇよ!」


「赤くなってるのがあらかさま過ぎない?」


キャピキャピ(死語)してるわ~、あ~良いっすね~。

一生眺めていたいわ~。

お、瑞穂ちゃんが好きそうな柄物ですな。

でも小さめか…大きくなっちゃうと可愛いのが減っちゃうからね。

あ、この熊さんパンツとか懐かしいな~。


「お母さん、それ子供用…」


「あれ?」


いつの間にかお子様コーナーに手を伸ばしてしまっていた。

ロリコンでは無かとよ?反省反省。


「あ、でも瑞穂ちゃんこういうの好きでしょう?」


「…止めてね?」


何を思い出してるんですかね~?気になるな~?

赤くなった瑞穂ちゃんをにまにま見ていると、背中を叩かれる。


「ミヤちゃん、こっちで何してるの?」


「子供用っすよ?」


お子様熊さんパンツを広げる私は変態ですか?

いいえ、一応これでもお母さんなんですよ。

子供は中学生なんですがね…。


「いや~、つい懐かしくなっちゃってね~」


「みっちゃん小さい時に履いてたよね。」


「そうそう、小熊組で熊さん欲しいっておねだりがもう…可愛くてね~。」


「ちょっと!お母さん、ユリも!」


「へ~」


「ちょ…もう!お母さん…」


「すいませ~ん。計測お願いしたいんですけど~」


可愛いなぁ…もうって仕草がツボに入ったわぁ。

これ以上何か言われる前に店員さんを呼び出さそう。

母の方が一枚も二枚も有利に進める、これ鉄則。


「失礼いたします。お客様でしょうか?」


「いいえ、この子をお願いします」


「畏まりました。妹さんですか?仲良しで羨ましいですね」


「いいえ。娘です」


「え?」


これがまぁ…うん。こういう反応は見慣れた。

毎回思うんだけど…若作りしてらっしゃいますね~って思われてるんだろうか?

少し気になるけど…まま、ええわ。


「ほら、瑞穂ちゃん。計測してもらわないとサイズも分からないでしょう?」


「…むぅ、ズルい」


っ可愛い。

なに?その上目遣い…めっちゃ可愛いんですけど?家の娘メチャカワなんですけど?


「あ、も、申し訳ございません。で、ではご案内します。」


きょどってしまった店員さん、プロ根性見せなされ。

メジャー落としてすいませんって…そんなに吃驚するもんかい?

ユリちゃんを見なさい。笑われちゃってるよ?


「ぷぷ、姉妹に見られてるんだ」


あ、そっちにツボったか…。


「まぁ…フツーに見えるっすからね」


「え~?母力が足りないか…」


「母力ってなに…。ミヤちゃん、そこは嬉しがろうよ…」


「いやいや、私は母ですぞ?」


「ですぞって…」


私の語尾がツボって笑いだすユリちゃん。笑い上戸だね。

いや、地味に顔逸らしてるシホちゃんもツボったようだ。

親父っぽさとかオタクっぽさとか…ナウなヤングにウケるのかな?


「ミヤちゃん、昔っからなんか変だよね~」


ギクッ…


「そうなんか?」


「そうそう。男っぽいような~オタクっぽいような~でも、綺麗な優しいママさんなんだよね~。そこが面白いんだけど。」


「へ~」


好評価、あざま~す。


「そうかな~?普通のお母さんを目指してるんだけど?」


「普通のお母さん?」


え?ツボるとこあった?私、何か可笑しい事言った?


「家で…ぷぷっ、お母さんと寛いでるシーン見たけど…おっさんぽかったじゃん…」


「あ~」


おこたにもたれ掛かってて…手土産に持って行ったミカンをユリちゃんママに剥いてもらってた話?

年明けの話じゃん、それ。


「何の話?」


「この前さ、うちのお母さんに耳かきしてもらってたのをこっそり見ちゃったんだよね。その時の声がもう…おっさんぽかったんだよ~。あ~って野太い声でさ」


おっとぉ?それ見られちゃってたか~。

あれ?その日は瑞穂ちゃんの耳かきをした記憶が…。

見られちゃってたんかい…。

ユリちゃんママはまじママさんだから…ついつい甘えてしまう。

しょうがないね。


「え、マジで?そう見えねぇんだけど?」


「ミヤちゃんって、こう見えて中身おっさんだよ?」


そうなんですよ~。バレちゃったか~。へへへ。


「お母さん、何デレデレしてるの?」


「ほえ?」


瑞穂ちゃん帰ってきたんだね。

そのまま試着室に居たら良かったのに…。


「みっちゃん、成長してた?」


「うん、まぁ…。お母さんも一緒に探してよ」


おっとっと、手を引っ張りなさるな。

ちゃんと選んであげるさ。黒をな。

いや、それとも純白…いや薄いピンクの方が…。


「…変な想像しないでね?」


先手を取られちまったか…ちぃ…。

だが、私は母ぞ?実質的な最終権限を持っている。

財布からドロー、クレジットカード召喚。暗証番号は〇〇〇〇。

瑞穂ちゃんの誕生日であるぞ!!


「みっちゃん、これなんてどう?」


「無難にコレ」


「私はこれが良いな~」


「…こういう時って、シホが一番頼りになるわ」


私の選んだピンクピンクのフリフリと、ユリちゃんの選んだ黒の布面積小は却下された。

解せぬ…。

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