第3話 母のやらかし②
ごめ~ん、待ったぁ?
そんなラブコメ展開は家には有りません。
が、まぁ近い事は言うかもしれぬ。
「ごめんね、瑞穂ちゃん。遅れちゃったかな?」
サッと化粧してサッと着替えて来ました。
まだ5月に入ったばかりなのに…中々日差しが熱いっす。
「すこ~し遅かったかも?」
小悪魔的に微笑んでる今日の気分はご主人様。
多分そうなってしまったと思う…。
「こんにちわ、ミヤちゃん。今日も綺麗だよね~」
私を愛称で呼ぶ軽い口調のユリちゃん。
彼女は情報源…ごほん、瑞穂ちゃんの小学校からの友人。
普段の瑞穂ちゃんの勇姿…おほん、日常の…んん、交友関係…うぉっほん。
まぁ、私とも仲良くしてくれる可愛らしい子だ。
小さい頃はおどおどとした内気な子だったけど、いつの間にか明るい性格へと成長していた。
おばちゃん嬉しい…嬉しい。
「ちわっす」
少し不愛想な挨拶の彼女はシホちゃん。
違う小学校出身で中学校に入ってからの瑞穂ちゃんの友人。
髪色も金に染めちゃってるイケイケヤンキー(死語)
性格は良く分からんが、良い子なのは何とな~く分かる。
きっとお婆ちゃんっ子なんだろうと勝手に決めつけているのは、ほんとごめん。
「こんにちわ、ユリちゃん、シホちゃん。さて、遅くなった分は挽回しましょう。先ずはアイスなぞ如何ですか?」
「賛成!!流石ミヤちゃん」
「私も賛成。シホもそれで良い?」
「ああ、良いぜ。でもなぁ…」
「安心しなさい。此処にクーポン券が御座います」
取り出したるは会員限定クーポン(スマホ)。
何を隠そう、私達家族は甘党に目覚めてしまったのだ。
仕方ないね。
「おぉ…2人以上お買い上げで100円引き」
「3人以上で200円引きよ。さ、行くわよ」
下校中の中学生を連れまわしてる時点でヤバいのでは?
保護者失格なのでは?
そんな私は元不良…何でも来いや!!
でも、警察だけは簡便な!!
「リオンってここから近くて便利だよね」
「ショッピングモールだしな。なんか買うもんあんの?」
「文房具をちょっと…ねぇ、お母さん?」
「どうしたの?」
「ちょっと…」
「あぁ、なるほどねぇ。成長中だもんねぇ~」
ニマニマと良い笑顔で勘付いたユリちゃん。
あ、そういう事ね。
「…マジ?って、別に驚くことも無いか…」
「だよね~」
女子中学生3人の目線が一つに絞られる。
何を隠そう…別に隠しても無いけど…。
「はいはい、好きで大きくなったんじゃありませんよ」
「うんうん。みっちゃんはお母さん似だよね~」
「だろうなぁ…。ドンだけデカくなんの?」
「知らないよ…」
他愛無い猥談を聞きながら…猥談って…。
まぁ、中学校から10分ほど歩いたらショッピングモールに到着する。
平日ながらも、買い物客で賑わっている。
一階テナント群の一つにあるアイス専門店が行きつけの店である。
ここの練乳チョコミックスがホントすこ…。
「メロンシャーベットかぁ…」
「限定系に弱い日本人にはすぐ手が出ちゃうよね」
「ん~。今日はどうしようかなぁ…」
悩むが良い青春を行く若人よ…。
あ、私はいつものでお願いします。
「ん~。今日はカップタイプで、ストロベリーとバニラとメロンで」
「え?三つ良いの?じゃあ、私はバニラとチョコと抹茶をカップで」
「え、良いんすか?」
「いいよ。好きなの選んでね」
甘いものに好きに貴賤なし。
支払いはお任せあれ。
「じゃ、じゃあ…ストロベリーと、チョコチップと…大納言小豆で…」
「コーンにしますか?カップにしますか?」
「あ、カップで…」
イケイケヤンキー(死語)に見えて…存外大人しい性格のようだ。
私の予想は当たっているかも…。
「いつもので宜しいですか?」
「もち」
常連さんたる私はこんな感じ。
親指グーでお答えしましょう。
女子中学生には受けたようで何より。
あれ?店員さんも笑っちゃってるけど?
思ったより恥ずかしいな…コレ。
「お母さんそればっかり頼むよね?」
「だって美味しいもん…」
先に注文を受け取ったユリちゃんとシホちゃんで席を確保してもらう。
そんなに混んでないから慌てなくていいんだぞ?
一番最後にやって来るコーンの乗った練乳チョコミックス。
これよコレ。
「お支払いは現金ですか?カードですか?」
「カードで。あ、クーポンもあります」
「畏まりました」
ふっふん…必殺、カード決済一括払い(スマホ)。
安くは無いんですけどね~、でも美味しいからいいんです~。
私の代わりに受け取ってくれた瑞穂ちゃんからアイスを受け取る。
あ~美味しそ。
「こっちこっち」
ユリちゃんが大手を振ってるけど…近いから。
元気っ子になったね~。
「ミヤちゃんありがと~。いただきま~す」
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして。溶けない内に食べちゃいましょ。あ、もし飲み物欲しかったら言ってね。ここのコーヒーも美味しいから」
「というか…元々コーヒーの方が専門だったよね」
「そうなん?」
そうなのです。
ホットコーヒーにアイスを放り込んだ奇妙な組み合わせが一時流行ったんだけど…それとは別でコーヒーのみで細々と営業していたお店だった。
それが突然アイス全振りに変わってしまった為、私たちは仕方なく…本当に仕方なく甘党にならざるを得なかったのだ。
しょうがないね。
うまうま。
「ミヤちゃんって何食べてても絵になる?」
「…うん」
え?絵になるとは何ぞや?
…ふと…太っては無いからね?
「はいはい、私の残念なお母さんだからね」
うん。うん?
「え、瑞穂ちゃん…今、残念って言わなかった?」
「言ってないよ。聞き間違いじゃ無い?」
「え?そう…なの?」
聞こえた様な?あれ、どうだっけ?
「美味し~。ミヤちゃん、その練乳部分をちょっと交換しない?」
「バニラをちょっとで手を打ちましょう」
「はい、あ~ん」
あ~ん、うん。バニラも美味し。
練乳を贈呈しよう…って、ちょいちょい取り過ぎウケル。
「…お母さん、私もちょっと欲しいな」
「ふむ、メロン…いえ、ストロベリーで手を打ちましょう」
「うん。お母さん、あ~ん」
あ~ん、おほほ。瑞穂ちゃんにあ~んしてもらっちゃった。
ストロベリーも美味し。
今度イチゴが安かったらイチゴ牛乳練乳添えを作りましょうか…。
「…それ、美味い?」
「美味しいよ。此処の練乳って市販の物を使ってないんだよね」
「そうそう。市販の奴よりしつこく無い甘さで美味しいんだよ」
「へ~」
「お母さん、シホにも分けてあげて?」
可愛い100点。
「はい、シホちゃんも食べてみて」
「た、食べ…うっす」
小さなスプーンで…すわっと掬われる練乳様。
行き過ぎですゾ!?
がっつり行っちゃいましたぞ?
「あ、す…すんませんっす」
「良いから良いから。美味しいのは分かち合うものよ。とりあえず食べてみて」
「う、うっす」
シホちゃんの小さなお口に練乳様はどう映えるだろうか…。
綻びました。むっつり顔が綻びました。
勝訴勝訴!!
「美味しいでしょ?」
「…。」
小さく首を縦に振る。
気に入って貰えたようで何より。
うん…気に入ってくれたから…良いんだゾ。
「あ、あの…コレ」
スプーンで掬った大納言小豆?かな…食べて良いの?
「あ~ん」
口を開いて入れてもらう。
美味い、何これ美味い!
「美味しい…」
「よ、よかったっす…」
これは浮気してしまうかもしれない…。
大納言小豆…恐ろしい子を知ってしまった…。
「ミヤちゃん、顔、顔」
え?変な顔してた?
めんごめんご。
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