第2話 母のやらかし①

掃除も洗濯も終わってしまった…。

おおふぅ…暇じゃ…。

お昼のテレビなんか元々見てないし…テレビすら見てなかったし…。

パソコンなんか買うお金も無い…というか必要性すら感じなくなった。

この身体になって早10年くらいか…時間が経つのは早いな~。


「…はぁ…暇じゃあ…」


つい声に出してしまった…。

かくなる上は飯でも作るか。

思い立ったらすぐ行動。

時間は11時前、冷蔵庫の中身は…まぁ、色々作れるけど…残り物あるし…。

いやいや、こういう時こそ普段のストレス発散をせねば…。


「よし、刻むか」


吊るした玉ねぎと、段ボールに眠るニンジンを持ち洗いへポイ。

ベーコンの残りと…ピーマンも残ってたな。

後は…米有り、お麩もあるし…ふふ、これもある…。

お隣さんからいただいたしじみ汁。

栄養豊富ですぞ♪


フライパンセット、片手鍋には水を張って鰹節ドーン。

刻むぜ~、無心で刻むぜ~。

おっと、卵は…あ、オッケオッケ。

よし、行くぜ!!


「…まぁ、分かってたんだけどさ…」


12時前、お昼時には出来上がりました。

炒飯とお吸い物。

普通に美味く作れた。

普通に美味かった。

残った具材はタッパーへ入れて冷蔵庫へポイ。

片付けて洗って、はい終わり。


「暇じゃ…」


テレビで昼ドラを見つつ、不倫は無いわ~と口ずさむ。

趣味と言う趣味は無いから…余計に暇を持て余す。

スマホを見ても授業中には連絡できない。

休み時間やお昼休み中は瑞穂ちゃんからいっぱい連絡が来たけど…。

どれもこれも要約するならば…今朝の事は誰にも内緒って事。


『嫌です。愛でるに垣根は無い』


そう送ると、返ってくるのは…


『見せたら今日は一緒に寝ないからね!!』


と返ってくる。

誰かさんがごねちゃうから…お布団一組しかないんですよ?

中学生になっても未だに一緒に寝てるんですよ?

最近…依存し過ぎでは?と思ってしまう。

甘やかしすぎたか…反抗期はどこ?もうすぐにでもやって来る?

今後の事を考えねばと思いに耽っていると、やって来るは瑞穂ちゃんプリン。

まだ授業中では?


『お母さん、今日はリオン行こ』


リオンか…スーパーも併設してるし良き良き。


『授業中にプリンはボッシュートになります。良き』


了解の返信を送っておく。

スマホ没収になっても助けんぞい。


「さて、お風呂洗って洗濯物取り込むか。また下着晒しは良くないからね」


前のおんぼろアパートに比べると治安は良いんだけど…ねぇ?

女性だけの暮らしに外で下着は干せんよ…。


「とぅっとぅる~るる~う…?」


ピロンと、プリンの着信音が鳴る。

待たれよ、いま清掃中じゃ…。

手を拭いてスマホを見ると…瑞穂ちゃんぇ…。


『大丈V』


おっさんか?私か?私のせいか?

怖いわぁ…返さんとこ。

清掃再開するも、数分後にはまた着信音。

んおぅ…今洗い流し中ですねん…。

誰じゃい?


『返事ないのは寂しぃ』


瑞穂ちゃんじゃい。

寂しがっとるんじゃい。


『ごめんちゃい。今日は好きな物作ってあげるよ』


仕方なかろう…寂しいのは辛いねん。

でも、洗い流しは続行ですぞ。

洗面器に溜めてバーンのほうが良かろうか?

ピロン。

おほぅい…授業に集中しなさい。


『小っちゃいハンバーク♡』


任せんしゃい!いっぱい作っちゃるけぇ、そがないごいごせんと勉強せんね。


『お任せあれご主人様♡』


あれ?ミスって繋げちゃったわ…まま、ええやろ。

ハートも追加しとこ。

ほれほれ、綺麗さっぱり。

今日は良いお湯を張れるでしょうて。

洗濯物も畳んじゃえ~。


「さ、時間は~まだ14時か。あと一時間何しよっかな~。」


再度暇を持て余す。

ふむ…もう行くか?

いやいや…それでキモーいとか言われちゃったらもう無理。

耐えられる気がしない…。

ピロン。


『好き♡』


うん、私も好っきやで♪


『私は愛してるよ♡』


ハート付けてもうた…。

まま、ええやろ。

ピロン。


『今日も一緒に寝よ♡』


『いいよ♡』


此処だけ見たらマジヤバいやん。

しょっ引かれるで…ホンマぁ。

こちとらもう30前やで?

相手、女子中学生やで?

犯罪やん。

ピロン。

もう…これ以上何も言えへんで?


『お休み中申し訳ありません。明日は朝からお願いします。』


何を?

朝から何をお願いするん?

ん?


『エッチ♡』


「ちゃうやん!!これ明日の仕事やん!!」


やっば…送ってもうた…。

勘違いされる前に電話しよ!!


「繋がって…早く繋がって…」


「はい…その…すいません」


「ちゃうねん、聞いて欲しいねん」


「あ~いや…プライベート中にね…本当に…その…」


「違うんです。後生ですから聞いてください。娘と語らってただけなんです!」


「え?瑞樹ちゃんと…?」


「そうなんです。いや、ちょっと語弊があるんですけどね?」


「あ、はい。分かりました」


「分かってもらえました?良かった~」


「あ、はい。あの、明日は朝からいけますか?」


「大丈夫です。6時前ですか?」


「あ、はい。その時間でお願いします」


「わかりました。本当にすいませんでした」


「いえいえ…では…」


店長ぉ…タイミングぅ…。

あ~、やっちまったか…。

んおぅ?


『お風呂も一緒だからね?お・か・あ・さ・ん♡』


やっば…娘がご主人様ムーブしてきた。

どうしよう…。


『…お手柔らかに♡』


…まぁ…うん。

ここまできたらもうノリで押し切ろう。

ん~結構さっきの響いてますねぇ…。

今年何度目かの黒歴史入りです。

うあ~やっちまったよ~。

ピロン。


『そろそろ迎えに来てね♡』


「行くぅ」


パパッと着替えていざ中学校へ。

徒歩5分。

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