第14話


 放課後。自転車を押しながら、ヤヤ子と並んで歩く。

 会話はない。だけど、気を許し合えてるから、別に気まずくない。

 というわけではない。

 何だかメロンみたいに瑞々しくてネバついた甘さ。そんな甘い空気感がある。

 それもこれも、昼休みから妙に大人しいヤヤ子のせいだった。

 少し前を歩くヤヤ子のうなじが目に入る。白くて綺麗で、色っぽくて。空気も相待って甘い色香が漂ってくる。


「ねえ、千尋。この先のコンビニ、寄ってもらっていい?」


 一緒に帰ろう、と誘われた時以来の声だった。


「いいよ」

「ありがと」


 また会話がなくなる。

 気まずいわけじゃないけど、会話がないのも、と思って口を開く。


「今日は友達と帰らなくてよかったの?」

「うん」

「へえ。また、男子と遊びにいくとか?」


 ヤヤ子は首を振った。


「今日は千尋と帰りたくて」


 夕日に照らされていてもわかるほど、ヤヤ子の顔は赤かった。

 ドキッとさせられてしまう。胸に甘いむず痒さが訪れる。

 朝、ヤヤ子は友達がどうとか言ってたけど、友達ではないよな、確実に。

 なんて思いながら、ヤヤ子を見る。そわそわうずうず、そんな感情が見える早歩き。何を急いているのだろう、と思いながら合わせて歩く。


「あ、コンビニ見えた」


 国道沿いのコンビニが目に入った。すると、ヤヤ子は口を開く。


「ちょっとした買い物だけだからさ、千尋は待ってて」

「そうなの? わかった」


 少し歩いてコンビニにたどり着く。ヤヤ子が入っていくのを見届けると、空を見上げた。


 水色と茜色の空は明るい。けれど夕陽はビルに隠れていて、駐車場は夜に先駆けて伸びた影で薄暗い。


 扉が開いて目を向ける。ヤヤ子が出てきて、俺に近づき、目の前で止まった。


「あれ? 買い物は?」


 レジ袋を下げてないのでそう言うと、ヤヤ子は俺に顔を向けた。


 紅潮した頬。胸が苦しくなるほど愛しい上目遣い。興奮が煮詰まった表情。


 そして、まるでラブレターを差し出すみたいに、片手に収まっていたもの、ゴムの箱を渡してきた。


「今日は上、やっていい?」


 その日のヤヤ子は激しくて、カラカラになるまで絞り取られた。


————————————————————————————————————いつもお読みくださりありがとうございます。

ストックが切れたので、続きを書くモチベーションに、コメント、星、フォローをどうかよろしくお願いいたします🙇‍♂️

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