第27話 ランドセル事件 Part2

息子

小学2年生

まさに鉄砲玉

「ただいまー」

 と同時に

ランドセル放り投げ

「行って来まーす」

とお出かけ遊ばされる


その日も

「ただいまー」

と声が聞こえたと思ったら

姿も見せず

疾風の如く

出かけて行った


まぁ何時もの事なので

別段気にもならない


電話が鳴った

相手は

息子が通う小学校から

電話の声は

担任の先生ではなかった


「桶星さんのお宅ですか?」

「はい、桶星です」

「〇〇小学校ですが」

「はぁ」

「息子さんは帰って来ましたか?」

「はい。もう、帰りましたけど」

「ああ、よかったぁ!」


  ???

何が良かった?

もしかして

下校途中

事故に巻き込まれた子がいたの⁉

でも声の主は担任の先生では無い

新手の詐欺か?


などと頭の中が

目まぐるしく右往左往

だが次の言葉で合点がいった


「ランドセルが校庭に置かれているのに

 本人が居ないので職員総出で

 校内を探したんです」


えっ⁉えっ⁉

「プールの中もさらって探したんですよ」

えぇーーー!

慌てて家の中を見ても

無い・・・

ランドセル無い・・・

「すみません。すみません。

 本当に申し訳ありません。

 直ぐに取りに行かせます」


なんてこったぁ!

よりにもよって

ランドセルを

学校へ置き去りー⁉


なんてこったぁ!

職員総出で探させただぁー!

桶星は怒り心頭である!


息子の行き先に見当はついている

株式会社桶星であり

桶星の実家に違いない

軍鶏しゃもを見に行ったのだ


なぜ桶星実家に軍鶏が居るのかと言うと

ある日、工場に軍鶏が迷い込んで来たのだ

(一階が工場で二・三階が居住)


迷い犬や迷い猫なら聞いた事があるが

迷い軍鶏なんて

それ以前もそれ以後も

古今東西聞いた事が無い


どこの飼い軍鶏かは知らないが

飼い主が心配しているだろうと

工場で保護をした

桶星の父マツオさんが

余り物のスチール網で

大きな軍鶏小屋を制作し

業務中は小屋を

人通りが多い工場前に出し

飼い主の迎えを待っていた


動物好きな息子は軍鶏に夢中で

毎日足繫く通っていた

チャリをかっ飛ばし

実家へ行くと

軍鶏小屋の前にかがみこみ

軍鶏と戯れる息子

何と微笑ましい光景


じゃ無ーい!

「息子!ランドセルはどうした!」

息子は「はぁ?」顔

桶星の怒りは膨らむ


「ランドセルを学校に忘れていると

 電話がきた!」

息子?顔で考え込む


考えてんじゃあねえよ

忘れたのは事実なんだよ!


「早く取りに行きなさい」

なんと息子は

「嫌だ」

と拒否りやがった

もー怒りMax

「行け!」

「嫌だ」

「行け!」

「嫌だ」

不毛な押し問答


見かねた父マツオさんが

「爺ちゃんが車で連れていってやるから」

孫に甘々なマツオさんである

息子は渋々と

マツオさんの運転する車に乗り

ランドセルを無事引き取りに向かった


学校に着くと

校長先生が

息子のランドセルを抱え

玄関で

待っていて下さったそうで

息子に一言

「だめでしょ!

 ランドセルを置いて帰ったら!」

とお𠮟りの言葉を・・・


改めて

その節は教職員の皆様

本当に申し訳ございませんでした


ランドセルを忘れて学校へ行く

ランドセルを忘れて帰宅する

いったい誰に似たのやら・・・


そう言えば軍鶏だが

3ヶ月経っても

飼い主は現れなかった

不思議だ

軍鶏の飼い主なんて

直ぐに見つかりそうなもんなのに


ある日

実家に行くと

軍鶏が消えていた

やっと飼い主が引取りに来たかと

安堵していたら

マツオさんが

「通り掛りのオジさんが

 『此れは雌ですね

 家に雄がいて

 一羽で寂しそうなので

 譲ってくれませんか』

 と言うから譲ってやった」


いやいやいや

それは不味いでしょ

噓に決まってるでしょ

食べられちゃうでしょ

と妻と娘達から

責められたマツオさん

「俺もそう思う

 オジさん家は

 今夜しゃも鍋だろうなぁ」

ってみ言ってるし


なんで譲る前に

その考えに及ばないのよ

マツオさん!


息子には

「軍鶏子は飼い主に返した」

と噓をつきました

悪しからず

 
















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