第24話 正月早々、生死を彷徨う

あれは十数年前

正月早々に

家族(二人目の夫&息子)で

回転寿司を訪れた


目出度いじゃあないですかぁ

平和じゃあないですかぁ

正月に家族揃っての

回転寿司


回ってたってぇ

寿司は寿司

気分上げ上げ

回転寿司


寿司ねたは

何がお好きでしょう?

桶星は

穴子・中落・雲丹・イクラ

海老に鰯

締めには決まりの納豆巻き

そして烏賊・・・


烏賊が好き

好きだった・・・

そう・・・

あの日まではねっ


今でも鮮明に憶えている

あの正月・・・


桶星は

好物の烏賊の握りを喰った

シャリの上に君臨する烏賊は厚手だった

正月だからって

サービスカットだったの?


桶星は

好物の烏賊握りを

頬張った


嚙み切れない!

桶星

若くして殆ど奥歯が・・・無い!

(虫歯ではありません

原因は・・・歯軋り

途轍もなく激しい歯軋り

が原因お恥ずかしい)


さてさて

嚙み切らずに烏賊を飲み込むと

どうなるでしょうか?

『喉に詰まる』

はい、そこの貴方正解です!


烏賊は胃へと落ちる事なく

見事に喉にとどまる


えっ!

と焦る桶星

あれ?あれれれ?

息が出来ないー!


これは年貢の納め時

この世とお別れ

と覚悟した

マジです


だが次の瞬間

「年寄りが正月に

餅を喉に詰まらせ死んでも

いつも通りのニュースだけど

この若さで正月早々

烏賊を詰まらせ死んだら

全国ニュースになる

実名晒される

世界中の笑い者になるー」

と死後の光景が頭をぎる


こんな所で

烏賊を喉に留めたまま

死ねないーー!

恥ずかし過ぎるーー!


口に指を入れようか

と考えたが

指は烏賊に届きそうも無い


一か八か

薄れゆく意識の中

目の前の湯吞みを持ち

お茶を口の中へ・・・


喉に留まっていた烏賊は

見事するりと胃の中へ

お行き遊ばした


「ダッハア。ハァッハァッハァッ」

息が・・・

息ができるって素晴らしい

と実感する桶星

隣りの夫は

何一つ異変に気付かない

ムカつく!

(これが離婚の

 原因ではありません)


以来

烏賊握りも

イカ刺身も

食べていない

淋しい人生だ(笑)


















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