第27話 トラブル ※フェリクス視点

 ペトラに任せて、何度かパーティーを開いてみた。だが、どれも上手くいかない。回を重ねるごとに、参加者も徐々に減ってきている。そして周りからの評判も悪い。それでも、いつかは良くなるはずだと信じてきた。


 そんな状況の中で、大きなトラブルが発生してしまった。


「なぜ、ナブリュック家とシュタート家に招待状を送ったのだ!?」

「だって、私は知らなかったんですもの。両家の仲が悪かったなんて!」


 ナブリュック家とシュタート家の関係は非常に険悪だった。領民や領地など様々な問題で揉めていた。


 彼らはハルトマイヤー公爵家と関係がある家なので、両家の関係を改善するために仲を取り持とうと、父上が色々と手回ししている途中だった。


 それを邪魔してしまったのだ。


 ペトラが勝手に両家へ招待状を送っていた。しかも何度も繰り返し、同時に両家へ送っていたらしい。俺は知らなかった。今回の件で、発覚したこと。知っていたら、止めていたはず。


 今まで両家は、パーティーの参加を断っていた。それでも何度断っても、しつこく招待状を送り続けていたので、これ以上は断り続けるのも失礼に値するだろうと彼らは考えた。だから今回、仕方なく参加したようだ。


 タイミング悪く、両家が同じパーティーに参加した。会場で顔を合わせてしまい、口論になった。そして、どちらの参加者も激怒して帰っていった。これが事の顛末。貴族にとってパーティーとは親交を深めるための大事な場だ。それなのに、全く逆のことをしてしまった。この出来事が原因で、両家の関係は更に悪化。


 関係の修復は不可能だと判断され、両家が和解する道は完全に閉ざされてしまったのだ。しかも、こうなってしまった原因であるハルトマイヤー公爵家も敵視するようになってしまった。俺達のせいで、とんでもない問題を引き起こしてしまったのだ。


 もう、慣れとか経験とかは関係ない。ペトラには、パーティーを取り仕切る能力がない。もっと早く気付くべきだった。


「ごめんなさい、フェリクス様……」

「……くっ」


 ペトラが泣きながら謝っている。そんな彼女の表情を見て、俺は唇を噛み締めた。そして、反省する。ペトラに責任を押し付けすぎたのかもしれない。彼女は、か弱い令嬢だった。守ってあげなければいけない存在なのだ。


 だから、彼女だけの責任ではない。もっと早く俺が気付いて、ちゃんと注意をしておけば良かった。後悔しても、もう遅いが……。


 とにかく次は失敗しないように、俺が中心となってパーティーを取り仕切ることにしよう。彼女だけに責任を押し付けない。面倒だけど、俺も協力しなければならないだろう。


 彼女だけに任せていたらダメだった。余計な仕事が増えてしまい、溜め息が出る。だけど、やるしかない。

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