第26話 お金が必要 ※フェリクス視点

 この前の婚約披露パーティーは失敗だった。参加者が少なく、パーティーの途中で帰る者も居たぐらい。その後の評判も良くなかった。色々な不満が殺到している。


 だけど、仕方なかった。ペトラに初めて準備を任せたパーティーだったから。まだ慣れていないから、失敗も多い。だが、そこで見限ったらダメだ。彼女は、俺の婚約相手なんだから。これから一緒に頑張っていくパートナー。彼女を信じないと。


 失敗を糧にして、もう一度パーティーを開く。そのための準備を、ペトラに任せていた。そして今日、準備に必要な予算について話し合っている。


「こんなに金が必要になるのか?」

「当然ですわ、フェリクス様。これが普通なのです」


 ペトラが算出したパーティーを開くために必要な金額の高さに、俺は愕然とした。資料を何度も確認する。以前と比べて、高すぎる。数倍から数十倍という金額だ。


 婚約披露パーティーの時も思ったが、こんなに支払う必要があるのか。これだけの金を用意するのに、どれだけの労力と時間が必要になると思っているんだ。しかも、もっと金額が高くなる可能性もあるとペトラは言う。


「ベリンダが仕切っていた時は、これほど高くなかったが」


 ベリンダに任せていた時は、もっと低かったはずだろう。なぜ、こんなに高いのか納得できない。俺がそう言うとペトラは、ため息をつく。


「あのですね、お姉様を基準に考えない方がいいと思いますよ。あの人はズルをして低く見せていただけなのですから」

「そうなのか……?」


 周りに負担させて、無理やり金額を低くしていた。人件費や配置するインテリアの質を落として費用を削り、評価してもらうことに注力していた。


「ですが、フェリクス様はハルトマイヤー公爵家の次期当主なのでしょう? そんな貴方が、ケチケチしたお金使いをしていたら困りますわ」

「う、ううむ……」

「それに、これは必要経費ですよ。これから先も、こういう機会が増えるのですから慣れてくださいませ」

「……そうだな」


 パーティーに関しては、ペトラに全てを任せている。だから俺は、余計な口出しをしないようにと思っていた。


 金額の件も、彼女がそう言うのなら仕方ないかな。今までが間違っていた。だから認識を改めないと。パーティーを開催するために、これだけの金額が必要になる。


 俺は、両親を説得してお金を用意する。自分の役目を果たさないと。


 今は、ペトラも慣れていないだけ。これからどんどんパーティーを開いて、経験を積んでいく。そうすれば、徐々にパーティーのやり方についても学んでいくはずだ。腕を上げて、周りの評価も上がっていくと思う。そこまでの我慢が必要。


 彼女の新しいアイデアが効果を発揮するようになれば、以前のようなパーティーの賑わいを取り戻せるはず。だから今は焦らず、ペトラが成長するのを静かに待とう。

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