第4話・降臨! 陰世紀巨神【ヘカトンケイル】

 惑星Zー2の地上にマクロ・クィーンから、陰世紀巨神【ヘカトンケイル】を保有するシン組織『ギガース』が、コンテナごと投下された。

 湖の畔に着水したギガース本部の、動きが活発になる。

 コンテナの前方には、未知の巨大生物か有機物か判別できない敵がいた。

 ギガースの雛壇ひなだん状の司令塔第ニ発令所で、巨大スクリーンに映し出されている敵を見てオペレーターの女性が言った。

「前方の未知の敵を『御使い第三号』と命名……これより、御使い排除作戦を結構します……凡庸ぼんよう巨神【ヘカトンケイル】発進!」

 コンテナの上部の射出口から、十四歳の少年が乗ったヘカトンケイルが、勢いよく射出された。


 御使い三号の前に、巨神へカトンケイルが水飛沫をあげて着水した。

 搭乗者の繊細な少年が、ヘカトンケイルの機体の中で呟く。

「戦っちゃダメだ……戦っちゃダメだ……戦っちゃダメだ……敵とも話し合わないとダメだ」


 少年は未知の敵に向かって話しかける。

「こ、こんにちは、いい天気ですね……何しているの?」

 一瞬、首を傾げた御使い三号は。幅広のムチのような腕をヘカトンケイルに巻きつけ、高電圧の電流でヘカトンケイルを攻撃する。

「うわぁぁぁ! ボクは君と友だちになりたいだけなのにぃ、痺れるうぅ! しびびびびっ」


 司令塔第ニ発令所で巨大モニターを通しと見ていたオペレーター女性が、呆れた口調で上段に立って眺めているヒゲの男性に向かって呟く。

「総司令のご息子は、学習能力が無い残念なアポのようです……毎回、敵と会話を試みて攻撃されています……さっさと腰のサバイバルナイフを引き抜いて敵をメッタ刺しすればいいのに」 

 総司令の男性が、吐き捨てるように言った。

「脳に直接刺激を与えてパイロットを〝ケダモノ暴走モード〟に変える……薬物を息子の、頭頂から直接脳内に注入」


 注射針が少年の頭頂に突き刺さり、薬物が注入される。

「うっ!? あががががっ」

 全身を痙攣させて、グルッと白目を剥いた少年の目が、グルグル三重丸の異常な目つきに変わった。

 ドクンッ……ドクンッ……ドクンッ。


 理性が消えた少年の奇声がコックピットに響く。

「あひひひひひゃはぁ」

 ヘカトンケイルのサバイバルナイフが、御使い三号の固い表皮の隙間に差し込まれ、剥がされた表皮の下から深紅の球体臓器が現れ、赤い体液が飛び散る。

「あがががががおぉぉ」

 咆哮したヘカトンケイルは、御使いの貪食を開始した。

 

 その、あまりにもエグすぎてモザイク処理がされた映像に、女性オペレーターは。

「これはエグい……御使い、排除完了……うぐっ」

 そう言い残して、口元をタオルで押さえた女性オペレーターは、トイレに駆け込んだ。


 酸味の吐瀉物としゃぶつ臭が漂いはじめた司令塔第ニ発令所で、総司令官の男性はマイクを握りしめてマクロ・クィーンにいるキャプテン・凱王との通信回線を開く。


《我々、ギガースは、この星が気に入った……定住して御使いと戦う……いずれは、星の人間を補完計…》

 フォン・ラーゼの手で通信が切られ、ラーゼが凱王に言った。

「また、逃げられちゃいましたね」

 キャプテン・凱王は何も答えず。ただ、右手の平と左手の平を打ち鳴らして、手と手の隙間を覗き込むばかりだった。


降臨! 陰世紀巨神【ヘカトンケイル】~おわり~

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