第3話
「私、ここで死ねば明人にあの世で逢えるかな?」
俺を嫌っていたはずの茜がなぜか死んで俺に会いたいなんて言っている事に俺は少し戸惑った。
「えっ、まさか茜は俺が恨んで化けて出て来ると思ってる? 俺、虐められていたけど恨む程じゃないから心配する事なんか無いのにな。」
けど茜は何か薬みたいなモノを手のひらにのせると一度に飲み込もうとした。
さすがに今まで虐められていたとはいえ、眼の前でクスリを飲まれるのは気持ちいいものじゃない!
なんとか成らないか俺はジタバタ動かない身体を動かしてやめさせようとしてみる。
だが、俺の身体はピクリともしなかった。
眼の前で人が死ぬかもしれないのに自分の無力さを痛感する。
茜が薬を口元まで持っていった時に俺と隣りの何冊かの本がなぜか本棚から落下した。
俺の想いが神様に伝わったのだろうか?
バタンという大きな音に茜はピクッとしてこちらを見た。
「あっ、図書館から借りてきた本が・・・ これ返しておかないと他の人に迷惑かけちゃうね。」
茜は飲み込もうとしていた薬を瓶に戻し、落ちた本を拾った。
茜って変なところで真面目さが出るんだよな・・・
茜がアカネの日記を拾い上げたところで俺と目が合ったがそんな事は茜には分かるまい。
だか、暫く茜は俺の事をいやアカネの日記をジッと見ている。
「なんだか私の日記が金色に輝いてるみたいだけど・・・」
俺も自分自身がいやアカネの日記が輝いている様に見えてハッとする。
「何? 私の日記どうなっちゃたの? 」
茜は日記のページをめくり始めた。
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6月12日
明人からジュース奢ってもらった。
でも明人はなんだか嫌な顔しているみたいに見える。
こんなにカワイイ女の子に好かれているのだからこれくらい当然だよね?
私が明人の事を好きなんだからもっと喜びなさいよ。
あぁ〜~ 明人から私に告白してくれないかな?
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まさか茜が俺の事が好きだったなんて・・・
予想もしなかったアカネの日記の内容に俺は戸惑ったが・・・
俺を虐めていた茜に少しイタズラしてやりたくなった。
茜が空白のページを広げた時、俺は文字を浮かび上がらせた。
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ヘェ~
茜さんは明人くんが大好きなんだね。
僕はこの本の妖精マーシャだよ。
茜さんの願いを叶えてあげようか?
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「えっ何? 本の妖精って・・・? 」
茜は空白のページに勝手に文字が浮かび上がったのを見て息が止まりそうになった。
そしてなぜかポロポロと涙をながしはじめた。
「私の願いは明人と恋人になる事。でも、もう明人はこの世に居ないのよ! 私が『死ねばいいのに』なんて言ったから・・・ どうやったら死んだ明人が戻って来るのよ?」
俺は茜の涙を見て女の子を泣かしてしまった事を深く後悔した。
そして茜が俺の事をこんなにも好きだったんだと感じられて、驚きと感動で胸が張り裂けそうな気分になった。
そして・・・
昔、バァちゃんに本の妖精の話しを聞いた事を思い出した。
内容は確か本の妖精がいつも一緒に居てくれる女の子を好きになって、妖精が人間に成る為に旅をする話しだった。
そして最後は妖精が人間に成って女の子と結ばれる場面で終っていたな。
その妖精が人間に成る場所は・・・?
『彩の国の幻想的な本棚』
だったと思う。
俺はそれがすぐ身近に実在する事を思い出した。
ん、それって・・・
まさか武蔵野ミュージアムの幻想的な本棚の事?
そこへアカネの日記を納めれば俺は元の身体に戻れるって事なのか?
元の身体に戻れるならば・・・
やってみるしかないな!
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