第14話 風間由

 約束の日曜日。ハルは颯斗くんのお見舞いに行くと言っていたので、私は本岡くんと二人で例のカフェにいた。今さらながら恥ずかしい。


 「今日は、まあ宜しく」私が言うと本岡くんは頷いた。


 「いや、俺も今日は颯斗の見舞いにいこうと思ったんだけど、お前は風間とカフェへ行けと何故か怒られてさ。どんだけ金町さんと二人きりになりたいんだよって突っ込んでしまった」


 しゃあしゃあとそんなことをいう。こいつマジか。結構匂わせておいたのにまだ今日の状況を把握できないでいるのか……。


 「あのさあ、本岡くんってバカだよね」


 「え!なんか俺失言でもした?」驚いたようにいう。全部が失言だよと思いながら、冷静になろうと一回息を吸った。


 「本岡くんってさ。前のコミケいったしょ?」


 「うん。いったけどなんで知ってるの?」本岡くんは不思議そうな顔をする。やはりあの時、私に気がついていなかったんだ。


 「その時、コスプレイヤーがさ、おっさんに胸揉まれてたじゃん。本岡くん。その時コスプレイヤーを助けたよね」


 「そうだけども、いやまじでなんで知ってるの?」


 「なんで知ってるのって?馬鹿!あのコスプレイヤーは私だったの!」


 「アノコスプレイヤーワワタシダッタノ?」本岡くんはキョトンとした顔をしていた。それから一度、手元のコーヒーを啜ると、「マジで?」と驚いたように訊ねてきた。


 「マジだよ!あれから私さ。ずっと本岡くんのことをみてた。そしたらクラスメイトにこんな格好いい奴がいたんだって。ずっと憧れになってた。それがいつの間にか、恋心に変わっていた」


 「恋心?」やはりいまいちピンと来てなさそうだ。馬鹿!馬鹿!心のなかで叫ぶ。鈍感!


 私は少し身体を震わせる。もう、らちが開かない。ズバッと言うんだ。私は両手を、本岡くんの手に載せた。


 「本岡くん。いや、祐樹くん。好きです。付き合って下さい!」


 すると本岡くんはようやくなんのことかが分かったようだ。突然顔を赤くする。そして、ゆっくりと頷いた。


 「好きなんて言葉。俺には縁の無いものだと思ってた」そう言って、少し涙目になっていた。


 「何言ってるのさ」


 「その言葉。大切に受けとるよ。好きになってくれてありがとう。こっちからもお願いするよ。付き合って下さい!」


 本岡くんは、私の手を握り返した。


 「お願いします!」私も強く頷いた。

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