第12話 金町春
全て私が悪い。
あの時、私が颯斗を襲わなければ。
あの時、私が家に颯斗を呼ばなければ。
今日私は学校を休んだ。もともと休みたい気分ではいたが、取り調べという休まざるを得ない理由もできたのだ。
昼過ぎの近くの警察署の小さな部屋で、前田公一と名乗る男の警察官がゆっくりとした口調で言った。
「高橋のスマートフォンの中をみて、まず間違いなくあの男は君のストーカーをしていたということが分かった。そして、君が北村くんと付き合っていたことに逆上したと言うことも判明している。そして、近所の人の証言から、高橋がいきなり北村くんを刺して、もみ合いになったのち北村が高橋を刺してしまったというのも分かった。安心して欲しいのは北村くんが罪に問われることはほぼないってことだ。まあ、北村くんの発言次第では過剰防衛になるかもしれないけれども」
「でも、北村くんは刺してしまったという事実に苦しむかもしれない」私はふと呟いた。
「そこは……もう君がフォローしてあげるべきなんじゃないのか?いや、君がフォローするのが彼にとっても一番の筈だよ」
「でも、全て私のせいで!私があの時」
すると警官は言葉を制する。
「だが結局、君は好きを彼と共有できたんだ。どうし無ければよかったなんて、今としてはどうでも良いことだ。今は北村くんを信じるしかないだろ。それに、高橋なんて要因、予測する方が無理だ」
「そ、そうですよね」私は下を向く。
「ああ、あとつい一時間ほど前なんだが、北村くんが目をさました」
「ほ、本当ですか!」私は思い切り立ち上がった。
「あ、まあ落ち着いてください。今は取り敢えず安静にしてもらっているということだ。意識もぼうっとしているようだしね。それに、回復を待ってから色々と颯斗くんには訊くことがあるからね」
「そ、そうですか……。怪我の具合はどれくらいなんですか?というかいつ頃面会できそうなんですか?」
「まあ、退院までは1ヶ月程ということらしいね。面会は今週末には出来るだろう」
「よかった」私は息を吐く。
「まあ君もかなり傷ついている筈だし、それにもうほぼ高橋の動機も明らかになってしまっているから、暫くはこっちからの連絡はしないよ。今日は取り敢えず帰って休みなさい」
「あ、ありがとうございます」私は礼をした。警察官は当たりが強いイメージだったがこの人は結構優しい対応だった。人間とは千差万別。昨日の今日でつくづくそう思った。
そうこうしていると、スマホが着信を告げた。私は良いですか?と前田さんに訊ねた。前田さんは頷いた。
スマホを開く。颯斗くんからの連絡だった。私は大急ぎで通話ボタンをタップした。
「颯斗くん!」
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