第3話 北村颯斗

 「オタク街っていっても、色々あるんだね。アニメショップ、コスプレショップとかはまあ予測できたけどカメラショップとか、古レコード店なんかもあるんだ」金町さんは思った以上に楽しそうに歩いていた。隣で女子が歩くというイベント自体初めてでキョドり気味だったが、楽しそうな金町さんを見て少し安心した。


 「まあね。オタクってアニオタばっかじゃないからね。それに、僕だってアニメは見ない訳じゃ無いけど、どちらかというと音楽オタク……兼ボカロオタクって感じだからさ。レコードプレーヤーで昔の曲を聴いたり、YouTubeやニコニコ動画をあさって良いボカロ曲を探したりするためにバイトをしてるんだよ」


 「へえ、そうなんだ。ボカロ曲かあ。少ししか知らないけど、以外にどれも好き」


 「沼にはまったら抜けなくなるよ」


 「へえ、じゃ今度適当に聴いてみよう。というか颯斗くん、バイトやってたんだ」


 「うん、まあね。駅前の牛丼屋で」


 「こんどふらっと寄るね」そう言うと金町はニコッと笑った。今日一日で金町と僕の関係は急激に変わった。元々僕は彼女に襲われた。それに僕は反撃したが、結果として良かった。正直に言うと、金町がこんなに素直な人だとは知らなかった。やはり人間は交流しないと相手の事がわからない。その点、誰かと仲良くなろうっていう気概の薄い僕らは、裏を返せば相手のことを知ろうとしないということでもある。だから、きっかけはどうであれ金町と触れあうことができたのはとてつもなくプラスだ。


 僕もふっと笑みを溢した。いいなあ、この空気感。素直に思った。


 「あれ、あのカフェはなに?」アニメの装飾をされたカフェを指差して金町が言った。


 「ああ、あれはコンセプトカフェだよ。ひとつのアニメをコンセプトにしてオリジナル料理やグッズなんかを出すんだよ。時期によってコンセプトがコロコロ変わるけどね」


 「へえ、面白そう。入ってみたいな、ちょっと疲れたし」


 僕はそのコンセプトカフェを見た『夏を駆ける』という美少女が学園のミステリーを解決という、ある意味昔ながらのアニメをコンセプトにしていた。あまり自分も詳しくはないが、金町が興味深々だったので入ることにした。


 「そうだね。じゃあ一旦休憩しよう」

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