第2話 金町春
「だけど素直に好きだって言ってくれれば、とても嬉しかった」
颯斗くんがそう言って私はハッとした。素直な告白を私は怖がっていた。そのせいで私は颯斗くんを怖がらせてしまった。馬鹿みたいだ。私は唇を噛む。
「今さら遅いよね。颯斗くん、もう先生に言っちゃってよ。金町が襲ってきたって。私も素直に肯定するから」
すると、颯斗くんは少し考える素振りを見せてから言う。
「あのさ、失礼な質問なんだけどさ。今、金町さんがつるんでる友達って、一緒にいて楽しいの?」
「楽しいの、か。楽しいのかな?ただ、嫌われたくはない」
「ってことはさ。本当に金町さんが僕を好きだとしてもさ、嫌われたくはないから告白できなかったんじゃないの。ほら、僕なんて典型的な童貞だし、金町さんたちのグループとよくつるんでる高橋なんかも、僕を毛嫌いしてるみたいだし」
本心を突かれる言葉に息が詰まる。その通りだったから言葉がでない。
「そんなの、息苦しくないのかなって。僕の友達は、別に誰と誰が仲良くしてようとどうも思ってない奴らばっかだからさ。その分、誰かと仲良くなろうっていう気概も薄いんだけどね。だからまあ、嫌われる理由も分かる」
「息苦しいよ」私はふと、そう発した。無意識だった。そして思わず泣いてしまっていた。
「そんなに息苦しいならさ、もういっそのこと嫌われるの覚悟で僕と付き合ってみない」颯斗くんは私から目線を反らしてそういった。
「むしろ、颯斗くんはいいの?私襲おうとしたんだよ」
すると颯斗くんは照れたように言った。
「でも、女子に好かれるって初めてだったから、やっぱり僕も嬉しいんだよ」
颯斗くんがそう言うなら、もう嫌われるなんてそんな考えはどうでもよくなった。無意識に私は颯斗くんに抱きついた。
「うお」颯斗くんがそう声をあげたので私はハッとした。
「ご、ごめん。嬉しくて」
「いや、別にいいよ。もう襲うってことはないでしょ」颯斗くんはそう言って横を見た。すると、私の視界に颯斗くんの股間が盛り上がっている様子が入ってきた。いけないものを見てしまった気持ちと少し嬉しい気持ちを振り払い、必死に見てない振りをして、私は言う。
「でもいきなりクラスでカップルの状態でいるのは怖いな。まずは二人でどっかに行こうよ」
「むしろハードルが高くなったような気がするけど」颯斗くんはそう苦笑いしつつ「なら、クラスメイトにできるだけ会わないような場所がいいよね」と言った。
「そうだね。ごめんね、わがまま言って」
「いいよ。それなら、そうだなあ。金町さんの友達があんまり来なさそうなところがいいよね。それなら、オタク街とかはどうかな」
「オタク街?」私はそれがどこにあるのかも知らないけど、取り敢えず颯斗くんと一緒に出掛けられるのならどこでも良いと思った。
「行こうよ。すぐに」私はセーラー服の身だしなみを整えて、そう言った。
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