第十四話
翌日背中に穴が開いた服を着てマントで隠す。
久しぶりに本性を現すためだ。
洞窟にたどり着くと全員本性を現す。
勇者はこの時初めて吸血鬼というのは夜や闇でも目が利くことが分かった。本性を現せば夜でも全く自由に動くことが出来る。しかも空を飛べる。
「吸血鬼は夜や闇中でも自由に移動できるからね」
翼を存分に鳴らすカラ。
「さすがに蝙蝠みたいに逆さにぶら下がることは出来ないけど」
本当に我慢してたんだなあ。
「実はこの洞窟、吸血族の活動拠点。だから」
なんと洞窟を進むとドアがあった。
ドアを開けると簡易な休憩室があった。
「まあここはモンスターの住処になっちゃうから定期的に駆除しないといけないんだけど」
(え? じゃあこの辺の治安を守ってたのは吸血族!?)
「寝こみを襲われたら僕もやられるし!」
なるほど、セータ。
「だけど昼間なら十分活動拠点になるんだ」
シータ。そうか。お前が特にここの治安を守ってたんだな。
「もっとも時の流れが分からんから長期の滞在はいけないんですけどね」
(え? サータ……時計持って来ればいいじゃん)
「人間に本当に聞かれたくない話や獲物を狩った時は、ここで思う存分吸血するの」
(ソータ……うれしそうだな。常習犯だな、こいつ)
はぁ……知らなかった。ここは雑魚モンスターしか居ない洞窟だと思ったからだ。
「本性現したくなったら、たいていこの辺の営業マンは、ここに来る」
シータが勇者を睨みつける。
「勇者、分かってると思うけど人間にばらしたら……重罰だよ」
(カラ、怖いよ)
「分かってる」
「それに万が一人間や竜族、獣人族に襲われた時も、ここに立てこもって戦う。だから、休憩室にもちゃんと保存期間内の医薬品を置かないとダメなんだ。それとな、期限切れの医薬品は副作用が強くなったり毒になってるかもしれないんで処分するんだ」
そう言ってシータは新しい医薬品を置く。古い医薬品は回収だ。
「これでここに来る同士も安心だ」
シータは安堵の笑みを浮かべた。出来る男は違うねぇ。
「さてお茶にしましょう」
カラは竈に小さな炎魔法をさく裂させ、火を通す。水筒に持って来たお水を沸騰させ紅茶を入れる。
「あと三日か……。前日は休みとしてあと二日どうする?」
シータってこのパーティーのリーダー格なのかな? 表向きはカラがリーダーなんだが。
「どうすることも出来ないわ。冒険者ギルドでは勇者の顔が知れ渡っているし」
ソータ。そうだよね。俺の存在。
「あ、じゃあ営業マンの僕が依頼を見て来るってのはどう?」
セータ、ギルドに薬でも売り込むのか?
「冒険者でも依頼者でもないのに来たら怪しいわよ」
さすがベテランの薬師。そうだよね、サータ。
「いや、医薬品の広告ポスター貼りたいと言えば怪しまれないだろう」
シータってやっぱすげえな。やっぱ俺達勇者は負けるべくして負けたのか。
「かしこいね~」
素で勇者は褒めた。
「それほどでも」
照れてるな。
「ちょっと静かに!」
カラが気が付いた。
――声が聞こえない?
カラの声が小さくなった。
――人間の声だ!
――おい、翼をしまえ
――まさか冒険者ギルド所属の冒険者?
――明かりを消せ。竈の炎もだ!
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