第十一話

 クローフィー城下町にある蔵に見せかけた工場の中……その工場に検査センターがある。 


「間違いないね」


 画面をプロジェクターにも映す。


 「これA型ウイルス。インフルエンザ。全員そうだ」


 魔法顕微鏡を見ながら医者が言う。


 「養鶏工場から卵持ってきて。もう抗インフル薬作ってあるから」


 「先生、こちらです」


 研究員が持ってきた者。それは錠剤だった。


 「もちろんあとから抗体出来てるかチェックします。あと俺たちの飲む血液分も」


 溜息を突く医師。


 「出張診察か。しかも、人間のねえ。仕方ない。行って来るか」


 「気を付けて」


 「たんまり人間の血をもらえるチャンスですよ」


 研究員はやっぱり血しか興味ないようだ。


◆◆◆◆


 翌日医師のセプタがやってきた。


「間違いない、インフルエンザだ。錠剤配るぞ」


「「はい」」


こうして錠剤を配った。


「一日一回朝に飲んでね。なるべく食後ね」


「じゃ、私はまた来るから。一週間後ね」


 そう言って村の外に出て森に隠れ……蝙蝠の翼を広げるとセプタは飛び立って行った。


「一週間も足止めかよ」


「しょうがないね。人間に信用されるにはこうするしかない」


「というか昔はチャンスとばかりに襲ったもんだよこういう村を」


「もちろん、本性を現してね。人間の悲鳴はいいおかずだったぜ」


「そうやって吸血族の領土を増やしていったんだしな。吸血族自体もな」


(だから、おれが勇者として討伐しに行ったんだよな)


「領土拡大しないと獣人族にやられちまう」


「ちょっと待って? 魔族って一丸となって人間と敵対してるんじゃないの?」


「まさか」


「団結できたら、この世界の人間なんてとっくに絶滅してるよ」


「というか俺たちの食料を絶滅しようとしたから獣人族や竜族と敵対したんだ」


「ということは人間と吸血族が仲良くなっても……」


「そうなの、勇者。たとえあなたが仮に吸血族を討伐したらむしろ状況は悪化してたわ」


カラ、そうなのか。


「それどころか戦でけっこう吸血族が死んだことあったの」


「今でこそ停戦してるがな」


「むしろ人間界の絶滅を防いでいたのは私たち吸血族のおかげよ」


 ――衝撃だった


「餌が無くなったら俺たち発狂して死んでしまう」

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