第六話

 出陣式の日がやってきた。霧雨は止んでいた。青空が広がっていた。


 謁見室にてユーリルには吸魔の剣と吸魔の鎧を与えられた。吸魔の鎧にはちゃんと背中に二つの穴が付いている。


 「お前の武器と防具はもうボロボロで使い物にならなかった。そこで吸血族の標準装備を与えよう。人間時代のお前の武具は大事に保管してある。大願を成し遂げたときに返却しよう」


 それは闇夜のような色をした鎧だった。従者が持ってきた。


 吸魔の剣は呪文を唱えれば相手の体力を多少だが自分の物に出来る。吸魔の鎧は人間の血を吸収する。血だらけにならないという優れものだ。さっそくユーリルは装着して見る。


 「ありがとうございます」


 (あの隅にある宝箱は俺のための物ではないのか)


 「期待しておるぞ。次に同行する行商人を紹介する。セータ、シータ、ソータ、サータの4人だ」


 「セータと申します!」


 セータは新人の男子営業マンという感じだ。


 「シータと申します」


 シータはやり手の営業マンという感じだ。もうすぐ中年に差し掛かろうとしてる。どこにでもいる薬師に見える。


 「ソータでございます。勇者様よろしくお願いいたします」


 ソータはなんと女性の営業ウーマンだ。しかも若い。行商人にして薬師だなんて大変だろうに。


 「サータと言います。よろしく」


 サータはどうみてもおばちゃんという感じだ。でもこういうやつこそベテラン薬師って感じなんだよなあ。


 「それとカラ、お前少しだけ残れ」


 「勇者らよ……さがってよいぞ」


 「「はい」」


 こうしてゼーマ王と四天王とカラだけが残った。ゼーマはマントを外す。


 「勇者をこれほどまでに憎いと思っているのなら、ここに止まる権利を与えようぞ」


 翼を出し牙を剥く魔王ゼーマ……。


 「親の仇を討ちたいのではないかな?」


 「……はい」


 「だが今のユーリルは希望なのだ。まして五分の一の賭けに臨んで当たったものゆえ」


 「分かっています。だからこそユーリルを監視させてください」


 「もし再びユーリルが吸血族に仇をなすようであれば」


  そう言ってカラの背中から翼が飛び出した。


 「処分いたします」


 それを聞くと隅に置かれていたゼーマ王は宝箱を開けた。


 「これは……」


 「血魔の杖だ。看護師免許を持つ戦士に与える最高の魔法の杖」


 「私にはおそれ多く……」


 「万が一ユーリルが仇をなすようであればこの杖で殺せ。きっと父も喜ぶぞ」


 「ありがたく受け取ります」


 「それでいい」


 翼はカラの背中に戻りカラは謁見室から去って行った……。

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