第三話
新緑の季節が墓を輝かせる。背後にはこれまた白磁のような石造りの城。ただし屋根の瓦は朱色で血を意味する。芸術的な城だ。攻め込んだ時から思っていたのだが魔王城にはとても見えなかった。そよ風が二人を包む。ユーリルの肩に花びらが落ちた。墓は整備されており鮮やかな花が添えられていた。そしてお香のようなにおいが立ち込めていた。どこか安心感がするような気持ちのいいお香の匂いだ。
「ここがお墓よ」
何か申し訳なさそうだ。
「私も用事あるの」
と言ってお墓の前で献花した。そして祈りを捧げた。聞こえてくる声は呪詛そのものだ。ユーリルは少し具合が悪くなった。呪詛の声が止まった。ユーリルの具合は元に戻った。
真新しい。
逆rの形をした墓石には「四天王キーファ=ゼブルここに眠る」とある。そうか。この形は牙を意味するのか。
「君はまさか……」
「カラ=ゼブルよ。そう、ここに眠るのは私のお父さん」
「どうして僕なんかの看護を」
「職務だからよ」
「そんな事言ったって、君は憎い父の仇を看護したんだよ」
「仕方ないじゃない。王の命令なんだから」
「……」
「ほら、仲間に挨拶して」
そこには『勇者にして魔法使いサラ=マクドネルここに眠る』、『勇者にして僧侶ガレス=モールスここに眠る』、『勇者にして戦士モルドレッド=ウッズここに眠る』とあった。もちろん墓石は牙の形だ。
俺のせいだ。
「城下町で死んだモルドレッドさんも、ちゃんとここに眠っているからね」
「うん」
「線香を置いて。手を合わせて祈って」
ユーリルは見様見真似で祈った。
「祈りは済んだ?」
「はい」
「これが吸血族式の慰霊なの。覚えてね。彼らの遺品は城で管理してるから」
厳しい顔つきになるカラ。
「たとえ憎き敵であっても命を称える。それが吸血族の誇りであり責任よ。命を奪うという事は責任が伴うのよ」
(なんて誇らしい種族なのだ)
――だけどね。そんな私たちも神じゃないわ
(今、なんて言った?)
「それと……言いずらいけど……本来は食堂で食べるのだけど、ユーリルは食堂に行かないで」
(やはり)
「みんな……あなたの事恨んでるわ……とても食堂で一緒に食事できる状態じゃない。大丈夫。当面君の部屋で私と食事することになったから」
(それが……破壊神と同等の使命を持つ勇者の
「でもしょうがないよね? あなただって王の命令で『魔王を殺せ』と言われたんでしょ」
「……そうだ」
「そう、食事。吸血族にとって大事な血の管理をしている場所があるの。次はそこに行きましょう」
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