守ってくれる、あなたが好きです

松本琴音

第1話災害

『関東大災害から、今日で一年が経ちました。今でも、まだ復興活動が続いています——』

 適当につけたニュースに、屋根が崩れ、大量の泥が家の中に入った映像が映る。

 その映像を見た瞬間、胸が詰まって苦しくなり、テレビの電源を切った。

 脳裏に浮かぶ、家族の笑顔。声、優しさ。

 『美由歌(みゆか)』

 はにかみながらわたしの名を呼ぶ、友の声。

 一瞬で視界が滲み、慌てて目を擦った。

『要救助者を発見!直ちに避難させます!』

 ボロボロになったオレンジ色の服を着て助けに来てくれた彼。

 彼は、周りにいる倒れた家族を見、少し眉を顰めて、生き残りであるわたしを助けた。

 その瞬間——わたしは恋に落ちた。

 瓦礫に埋もれたわたしを、傷だらけになりながら助けてくれて。

 意識が朦朧としたわたしを担ぎ、安心できる場所へ連れて行ってくれて。

 霞んだ意識の中で、わたしは確かに恋をした。

 いつ死ぬかわからない状況で、恋なんてしてはいけないかもしれなかったけれど、恋をしてしまった。

 今でも鮮明に思い出せる、彼の顔。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

守ってくれる、あなたが好きです 松本琴音 @matsumotokotone

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ