第76話 緊急作戦会議
ダンテが喜びに声を弾ませる。
「おおおおおお! 【ゴールデンフロッグ】だァ! 噂は本当だったんだ!」
幼馴染の反応を目にして白髪青年はすぐにピンとくる。
「ダンテ! さては最初から狙いはこのネームドだったな?」
「イエス! 一攫千金の黄金のカエルさ! こいつを討伐できればレヴィンへの借金も故郷への援助金も余裕で賄える!」
栗毛の幼馴染が小さく首をすくめる。
「みんな黙っていて悪かった。だけど、確実な情報がなかったんだよ。ネームドを出現させるトリガーが不明だったんだ。変に期待させるのもどうかと思ってあえてなにも言わなかったのさ」
トリガー。いわゆるネームドモンスターを出現させる条件だ。
その内容はさまざまで祭壇や泉に特定のアイテムを捧げるとか、媒介となるアイテムで召喚するとか、特定の時間や天候の時のみ出現するとか、特定の魔物を一定数狩るとかなどだ。
「なるほど……カエル池のカエルを全滅させるのがトリガーだったか」
「おそらく1回じゃなくて3回ね。僕たちくらい火力のあるパーティーが複数いなきゃトリガーの発動は不可能だったろうね」
ダンテが真剣な表情で頭を下げてくる。
「そういうわけでみんな! すまいないが【ゴールデンフロッグ】を討伐するのに手を貸してくれないか?」
どうしようもない幼馴染だが、故郷の村を思う気持ちは本物だ。
「俺様からも頼む。力を貸してくれ。この8人ならやれないことはないはずだ」
頭こそ下げないが白髪青年の眼差しも真剣そのものだ。その貴重な姿に「……驚きましたわ」とアイーシャを含め皆が目を丸くしている。
泣きぼくろが特徴的な黒髪のイケメンが代表して一歩前に出る。
「オレたちは仲間じゃないか! 君たちの力になりたいんだよ! 喜んで協力させてもらう!」
有難いことに皆が力強く頷いてくれる。
「……レヴィン。僕たちいい仲間に恵まれたね」
「俺様の人徳だろうな。貴様はどうか知らんが」
「相変わらず素直じゃないな」
栗毛の青年がおかしげに喉を鳴らす。
「ところで? ダンテ? 【ゴールデンフロッグ】の攻略法は?」
「さあ?」
「は? さあ? ってなんだ?」
「いや、だって噂でしか語られないレアな魔物だよ? おそらく【冒険者ライブラリー】だって戦闘記録はない。まあ、やってみれば分かるっしょ」
まったく悪びれない幼馴染を無視して白髪青年は、
「よーし、ダンテ以外集合!」
仲間たちを集めて即席の作戦会議をする。
「見ての通り【ゴールデンフロッグ】はフロッグ系の上位個体だろう。おそらく攻撃パターンも同じ。長い舌や巨体を活かしたボディプレス。分泌液とそれらに付随する各種状態異常……それとエリアボスと同じようになにかしらの特殊魔法や特殊攻撃をしてくるだろうな」
「レヴィン! 僕だけ仲間外れにしないでよ!」
「黙れ。貴様は散歩でもしてろ。俺様が作戦を立てようが、貴様はどうせ好き勝手やるだけだろうが」
「さすがに聞く聞く! 他パーティーとの共闘なんだから指示に従う従う!」
栗毛の青年が強引に白髪青年の隣に身体をねじ込んでくる。
「【ゴールデンフロッグ】の特殊攻撃の内容が判明しないと迂闊に攻めれないな」
「その通りだジル。ノーマルのカエルとは違う。間違っても誰かさんのように一人で突っ走るんじゃないぞ?」
白髪青年がじろりと見やると栗毛の青年はバツが悪そうに目を逸らす。
「なら序盤は様子を見ながら慎重にイクのがイイネ」
「ですわね。まずは特殊攻撃を見極めるのが先決ですわ」
「なら定石通り開幕はボクの〈
「状態異常は私とロイスくんの〈
「はい。ぼくは状態異常耐性を高める〈レジスタ〉も使えるんでそれを事前に全員に配ります」
それぞれが積極的に意見を出し合う。ダンテ以外。
「他のネームドの例に漏れることなく【ゴールデンフロッグ】の生命力もかなり多いはずだ。長期戦を覚悟しておけ」
再び全員の視線が白髪青年に注がれる。
「ロイス! メル! 回復は自分のパーティーメンバー以外にする必要はないからな。仮にダンテが瀕死でも無視しろ」
「僕の幼馴染が鬼畜なんですけどー!」
「え? いいんですかレヴィンさん?」
「ああ。回復が被りは
「なるほど!」
「それと特殊攻撃が判明するまでは二人とも距離を取って様子見だぞ? 不用意に近づいて被弾なんてしたら許さんぞ?」
「言われなくても、分かってるよぉーレヴィくーん」
「だが、特殊攻撃が判明して『今ならイケる』と判断したなら攻めても構わんぞ? まあ、無理なら仕方がないが……貴様らにできるか?」
「できます! ぼくの成長した姿をレヴィンさんに見せてあげますよ!」
「意気込むのは結構だが、自信がないなら大人しく回復だけしていろ。貴様ら
「むー! そこまで言われたら意地でも攻撃もするよぉー! ロイスくん! 私たちがやれるってところレヴィくんに証明しよぉー!」
「はい! メルルさん! 頑張りましょう!」
そう赤髪犬耳少年と兎耳の大柄娘ががっちりと握手をする。
「それとハオとミカエル!
「誰に言ってるアル? でかいカエルごときウチらの魅力で釘付けにしてやるネ!」
「ボクたちを舐めないで欲しいな! どんな攻撃にだって耐えてみせるさ!」
「その意気だ! ダンテのバカだけには間違ってもタゲを取らせるなよ!」
さらに発破をかけると、負けん気の強い金髪眼帯エルフと猫耳娘は気合いのこもった表情で頷き合う。
「アイーシャ!
「わたくしが!?」
褐色の魔導士が目を丸くする。驚くのも無理はない。
「
「誰が
もちろん、挑発も忘れない。
「どうだ? できそうか? 攻撃魔法をぶっ放すしか能がない貴様には難しいか? やはり俺様が代わりに――――」
「オーホッホッホー! この天才アイーシャ・アイマールを見くびらないで頂戴! わたくしにとって造作もないことですわ!」
褐色の魔導士がマントを派手に翻す。
「皆さん! 安心して戦ってくださいまし! このわたくしが必ず特殊攻撃を見極めてみせますわ!」
相変わらず仰々しい奴だが、やる気になってくれたのなら大いに結構だ。
「レヴィン! オレはどうすればいい!」
黒髪イケメン
「貴様に言うことはない」
「え? なぜ……?」
途端に黒髪イケメン
「勘違いするなジル! いつも通り全力で戦えってことだ! それがエースアタッカーである貴様の果たすべき役目だ!」
「レヴィン……すごく嬉しいよ! オレのことを信頼してくれてるんだな! 絶対に期待に応えてみせる!」
ジルの瞳が燃えている。
「レヴィン! 僕にもなにか指示をくれよ!」
栗毛の幼馴染が期待に目を輝かせている。だから白髪青年は投げやりに応える。
「貴様に指示なんてあるか。好きにしろ」
「さすが親友! 僕のことを信頼してくれてるってことだね!」
「いや、指示を出しても無駄だと諦めてるだけだが?」
「よーし! みんな! 頑張ろう!」
聞いちゃいない。
「レヴィン・レヴィアント! 偉そうに指示を出してますが、そういうアナタの役割はなんですの?」
「くだらないことを質問をするなアイーシャ! 俺様を誰だと思ってる?」
白髪青年が傲岸不遜な笑みを口元に浮かべる。
「貴様らを勝利に導くのが俺様の役割だ!」
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