第66話 キングトレント戦
「貴様らも知っての通り森林エリアのエリアボスは【キングトレント】だ!」
ボスエリアに繋がる転移陣の前で恒例のブリーフィングが始まる。
本日、レヴィンたちは森林エリアを越えんとしていた。
「【キングトレント】は馬鹿でかい樹木の魔物だ。その巨大さゆえに腕のような枝を左右に振るだけで範囲攻撃になる。近接戦闘は要注意だ」
「ならぼくは今回、殴りには参加しないほうがいいですね。余裕がある時にでも〈フラッシュターミネイト〉を撃っておきます」
「【キングトレント】は体力が多く長期戦になることが予想される。しかも攻撃がかなり痛い。並の
白髪青年は黒髪イケメン青年と金髪眼帯エルフに視線を向ける。
「そこで今回はダブル
「うん。任せて。火力面でも貢献してみせるよ」
「ミカエルの状況を見てジルが【キングトレント】の
「ああ! 全力で躱してみせるさ!」
「それとミカエルとジルは【キングトレント】の特殊アビリティ〈眠りの吐息〉にも注意しろ。
「大丈夫です。ぼくの〈レジスタ〉と〈リミッション〉で対応します」
「俺様が近くいる場合は〈トランスファー〉で叩き起こすしてやる。以上だ」
最後にリーダーの黒髪イケメン青年が力強く宣言する。
「今回のエリアボスとのバトルはオレたちがここ最近ずっと取り組んできたことの集大成だ! 成果をレヴィンに見せつけてやろう!」
「うん!」
「はい!」
イケメンたちが充実した表情を浮かべていた。
◆◇◆◇◆
「〈マッシブガード〉!」
金髪眼帯エルフが幅広の大剣を盾にして【キングトレント】の〈リーフストーム〉―—刃のような鋭い葉っぱの連続攻撃を耐え凌ぐ。
「〈ヘビィスタンプ〉!!」
さらに隙を見て対象の動きを鈍くする攻撃アビリティを叩き込む。
白髪青年が目を丸くする。
「火力が片手剣とは段違いだな」
巨大な魔物の体力が目に見えて削れてゆく。
武器の性能うんぬん以上に、両手剣をメイン武器にしたことでミカエルの『攻撃意識が高まった』ことがなによりの収穫だ。
当然、以前よりもミカエルの被弾は増えた。しかし、トータルで見れば魔物を早く倒したほうがメリットは大きいだろう。
「〈フラッシュターミネイト〉!」
赤髪犬耳少年も遠距離魔法攻撃を定期的に撃ち込んでいる。
ロイスにもミカエルと同様のことが言える。
「ジルくん! スイッチよろしく!」
「任せろ! ミカエル!」
「ジル! 俺様からのプレゼントを受け取れ!」
白髪青年はありったけの攻撃強化アビを黒髪イケメン青年に連続詠唱する。
「ありがとう! レヴィン!」
ジルはぐっと腰を落とすと、
「オレが相手だ! 〈
キングトレントの背後にスリップダメージ付きの連続斬りを叩き込む。
パーティー自慢の質実剛健な
ジルが
「ったくジルのヤツめ……回避に専念しろって言っただろうが」
白髪青年はやれやれと肩をすくめる。
なんとジルは回避しつつも攻撃の手をまったく緩めていない。よく見ると、口元には笑みが浮かんでいる。
「おいおい、コイツのポテンシャルはどうなってんだ……ソロで討伐しそうな勢いじゃないか」
『わたしがダンジョン最強のアタッカーだって証明してみせるから――』
白髪青年の脳裏にあの夜の彼女の言葉が鮮明に蘇る。
彼女の成長速度はレヴィンの想像を超えている。この先、彼女がどうなるのか。白髪青年にはもはや想像すら難しかった。
いや、ジルだけはない。ミカエルもロイスも素晴らしく優秀だ。
それぞれが秘密を抱えているという後ろめたさがあるからだろう。
ここ以外、自分の居場所はないという強い覚悟を持っているからだろう。
それゆえに三人ともエゴがなく、努力を惜しまない。だから、白髪青年の提案にも真摯に耳を傾ける。
そんな素直な三人は元々のポテンシャルもあって見る見る成長してゆく。
当然、自らの成長を嬉しく思わないわけがない。ますますイケメンどもは白髪青年の提案に前向きになり、ますます成長してゆく。
期せずしてこのパーティーには恐ろしほどの好循環が生まれていた。
(リンダが才能を惜しむわけだ……こりゃ俺もうかうかしてられんな……)
結局、ジルたちは白髪青年の想定していた半分の時間でボスを討伐してしまった。
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