第56話

「研究引き継ぎ資料を作って、まぁ2週間くらいで」


「え、そうなの?」


「というわけで、何日かに分けて面接するから。みんなに伝えておいてよね」


「面接?」


「会社の不満など聞き出しちゃう」


「予定組んだほうがいいよね…」


「いる人からでいい。みどりは今やってる仕事、やればいいからね」


「守、忙しくて体壊さないでよ?」


「なら、俺の体調は面倒見てよ」


「え、うん。もちろん」


「俺が、疲れてそうなら癒してよ。みどりの体調いいときね」


「…もちろんいいよ?」


「はー、しゃべりすぎた。仕事の話終わり。食べる」


守は、ちびちび食べてる。かわいい…さっきまでの何?偉そうな俺様。母に戦いを挑んでいた。守はなんて自信があるんだ!


「ねぇ、お店の人はどこに移動させたんだろ。人払いしたって言ってたけど」


「たぶん、ドア開けたらいるんじゃない?」


「さっきの話聞かれてたかもよ?大丈夫かな」


「大丈夫だよ。もし聞かれてたならば、俺がなんとかします」


すーっと立ち上がり、守は表へ出て行く。なんとかするって暴力なんて無理だし。


「このフロアには誰もいない。ドアに置き手紙があった」


紙がドアに貼ってあったらしい。


「…責任者を下の事務所に置いているから、会計はその人へ…って」


徹底的な人払いだ。母親は何考えてんだか。

それからゆっくり食事して、責任者の人へ迷惑をかけて申し訳ないと謝罪すると、とんでもございません。ご利用ありがとうございました、と答えたのだった。


「みどりの母は、ここをよく利用してるみたい」


「食べもしないくせにね」


「本当だよ。あー疲れた」


「守社長、母とこれからもよろしくお願いしますね?」


「めんどくせー母親だなー」


「でも、守のこともめんどくせーって思われたかも」


「ふん、思わせたんですけど」


守はドヤ顔である。

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