第54話

「梅田さんは、昔の下津さんみたいに有名になりたくて、デザイナーのオーディションを受けたんだって」


「え?個人事務所だよ?たしか」


「昔だよ。昔有名だったスタイリストの木戸雅きどみやびがオーディションをやってたんだって。その人のスキャンダルがあって、梅田さんはオーディションで優勝したのに、企画すら却下されたそうだよ?」


「え、ひどい」


「それで、なぜか梅田さんはどこへ行ってもみんなから白い目で見られてたんだと」


「なにもしてないのに」


「そ。で、自分でなんとかデザイナーになって事務所を立ち上げたわけだ!それより、どうして、メイクさんにしたのか知ってる?」


「たしか、メイクさんが辞めたから…求人出したら梅田さんが受けにきたとか」


「へぇ…。それはよくわからないな。たまたま道端で、スキャンダルで干された木戸と会ったんだって。そしたらそいつ元気にヤクザやってたらしい。で、腹立って報復したんだと」


「どんな?」


「木戸と一緒にブランドを立ち上げるフリをしたんだって。それで、モデルは木戸の養子にした娘にして、写真とか撮ってたんだと。梅田さんは、その子を使ったわいせつなサイトからDVDを買えちゃうけど、届かないよーというのをね、勝手に作ったんだって。それで、それのデザイナーの木戸と一緒に逮捕なわけ」


「…養子?」


「それはわからないけど。きっと、不幸になって欲しかったんじゃないかって。傍聴した人は言ってた。またあるから、その人らと連絡先交換したよ」


「…いや、守の素性どうしたわけ」


「普通に、傍聴に最近興味持ったとか言って、抽選で外れたやつ見たかったって言ったんだよ」


「巧妙」

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