社長

第52話

「アポの取り方、慣れていらっしゃるのね?あなたが準也に言うように指示したんでしょ?」


「私が報告しただけです」


「お会いできて光栄です。お母様」


守と私と母が、貸し切りのレストランで会っている。守の策略によるものだ。まず、私が連絡をよく取るモデルの準也さんを使うことにした。彼は社長とアメリカで会うことがあるから。ただ、娘が結婚したということを伝えてもらった。母は私のメールなんて全然読んでなかったため、電話で質問責めだった。どこのどいつだとかね。で、今に至る。


「あなたは、うちの病院で心臓の移植手術を受けてますよね。それで?うちの娘使っても手術費の借金はチャラにはなりませんよ?」


「もちろんです。その件につきましては、存じ上げていませんでした。ですが、借金は全て私が働いて返すということで、病院と取り決めました。それは、執刀医の先生に確認されても構いません」


「…確認までは、してないけど。あなたはなんの目的でみどりと結婚を?職を斡旋してほしいと?」


「いいえ。彼女はもともと私もいた獣医学部の教師です。論文も読んでいましたし、尊敬していました。その彼女が、私を必要として下さいました。それだけのことです」


「それで?このまま獣医を続けるわけ?」

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