(二)-2

 声の主は部屋の端にいた。それは白髪交じりボブカットのメガネをかけた吊り目の女性で、この縫製工場の社長の妻のヒメノさんだった。作業の監督もしており、少女たちの実務上の上司に当たる。

 ヒメノさんが、細長い作業場の出入り口の脇にある、学校の教壇のような台が置かれているところにマイクを持って立って、少女たちに残業を指示したのであった。

 ヒメノさんの声の音波の波紋は、少女たち八人の落胆のため息と文句の発音によって打ち消された。


(続く)

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