俺の黒歴史とアルバム持って来る幼馴染 3年生秋

秋。昼ご飯も食べ終わり、俺はいつも通りベッドに寝転がりながら病院の窓越しに見える景色を楽しんでいる。


俺は生まれた時から重い心臓病を患っていて、この病院で入退院を繰り返している。病院のベッドでやることは何もなく暇なので、ボーッとしながら匂いを嗅ぎ、今日の夜ご飯はサンマかなと考える。本当につまらない。だけど、


「ヤッホー!りっくん!可愛い幼馴染のゆーちゃんがやってきたよー!」


この時間だけは特別な時間になるのだ。


「よお。」


「今日はねー、こんなものを持ってきたよ!」


と麻友が言うと、背負ってるカバンから分厚い本を取り出した。


「ん?それは?」


「小さい頃のアルバムだよー。」


「あぁ!懐かしいな!」


確かに俺の家にあったアルバムもこんな感じだったはず。最近見てないけど。


麻友はアルバムのページをパラパラめくっていくと、やがて手を止めた。


「あっ!このりっくん、かわいい!」


「お!俺がちっちゃい頃の写真か。」


「いやぁー。りっくんにもこんなかわいい時期もあったんだねぇー。」


「おい。どういう意味だ?」


「そのまんまの意味だよ〜。」


「あのなぁ!」


「あ、あのぉ〜、すみませぇ〜ん。あの〜患者さんが寝てるのでぇ〜もう少し静かにしてくださぁ〜い。」


「「すいませんでした。」」


若い看護師さんに怒られてしまった。


「麻友のせいで怒られたじゃん。」


「りっくんのせいだよぉ。お!これ覚えてる?」


「ったく。話続けるのかよ。」


麻友は再び、俺に1つのページを見せてきた。


「これは?あぁ!小学校の運動会の時?」


「4年生ね。この時の全員リレー覚えてる?」


あっ、嫌な思い出が…


「…覚えてない。」


「ふふふ。覚えてないかぁ。そっかぁ。覚えてないなら、思い出させるしかないなぁ。」


「………。」


「あれはぁ〜、確かぁ〜、りっくんが走ってる時にぃ〜、トラックのカーブのところでぇ〜、「あああああぁぁぁーーーーー!!!バカバカバカバカ!やめろやめろ!お願いします!やめろください!頼むから!やめて!」


黒歴史を他人の口から改めて言われるとめちゃくちゃ恥ずかしい。


「思い出した?」


イタズラが成功したかのような意地悪な顔で見る優菜。顔をそらしやけくそ気味に


「あぁ!俺がトラックのカーブのところで曲がるところで盛大にコケたこともその後大泣きした事も全部覚えてるよ!」


だが、追撃は止まらない。ニヤリと笑って俺の顔を覗き込み、


「まだ思い出せないところがあるみたいだね!その後に先生たちが来た時、膝から血がドバドバ出て明らかにやばいのに大丈夫って言って走り続けようとするんだもん!あの時の大丈夫って応援団長より声大きかったんじゃない?」


「ぬぁーー!!!!」


あれから一時期俺のあだ名が「泣き虫メガホン」になった。なんかめっちゃ嫌だった。


「りっくんってこの話するとほんとに過剰に反応するよね!当時は笑い話じゃなかったけど、今この反応を見ると笑えちゃうよね!」


「おい!麻友!ふざけんな!」


「あははは!」


「うるさぁぁぁい!!!寝てる患者もいるのよ!!!」


この後おば…お姉さん看護師に滅茶苦茶怒られた。




「ったく。酷い目にあった。」


「そうだねぇ。ちょっと調子に乗りすぎちゃったかな?」


「元はと言えば麻友のせいだぞ。」


「そうだね。ごめん。ごめん。だけど転んだ時はほんとに心配したんだよ!」


「それは別に疑ってない。」


その後俺らはアルバムを見て過去に浸っていた。昔に帰ったような気がして楽しかった。



麻友が帰ったあと、一人呟く。


「失いたくねぇーな。この心地良さ。」


吐き出すようにつぶやいた言葉は間違いなく僕の本心だった。

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