気に入る俺と冷静な幼馴染 3年春
春。夜ご飯も食べ終わり、俺はいつも通りベッドに寝転がりながら病院の窓越しに見える景色を楽しんでいる。
俺は生まれた時から重い心臓病を患っていて、この病院で入退院を繰り返している。病院のベッドでやることは何もなく暇なので、ピンク色の花びらをした春の名物を特に何も考えずにボーッとしながら見ている。本当につまらない。だけど、
幼馴染の麻友が来るときだけは特別な時間になるのだ。
なるのだけど、
「なんか遅くね?」
いつも来る予定の時間を遥かにオーバーしていて、疑問を持つ。
「暇だし、許可も出てるし病院内を少しぶらつこうかな。」
珍しく自分の部屋から出て、病院マップを見ながら
「どこいこっかな。」
とつぶやく。
「おっ?」
しばらく見てると一つの場所が目に留まった
「屋上?」
この病院棟唯一の屋外。少し外にも行ってみたいし、と思ったら自然と俺の足は屋上に向かっていた。
「おー!いい景色だな!」
カギは元々かかってなくすんなり入れた。窓の外からしか見えなかった桜の木もより近く、より大きく見られる。そんな屋上に思わず夢中になっていると、
「あっ!ここにいた!ヤッホー!りっくん!可愛い幼馴染のゆーちゃんがやってきたよー!病室にいないから心配しちゃったよー。」
「あぁ。すまんすまん。つい夢中になっちゃって、探した?」
聞くと優菜は首を横に振り、
「んー。案外探してないよ。病院のマップ見てここかな?って思ってきた。」
「すげー。俺のことわかってらっしゃる。」
「…えへへー。」
優菜が照れ笑いした。
「なんか、りっくんにそういわれると照れるなー。」
「なんだよ。それ。」
ん-。ちょっと恥ずかしがった顔も...って何考えてんだ。
なんかこっちまで照れてきた。
「にしても、ここ結構いい場所だね。」
「そうだな。ここが気に入ったから病室にいなかったらここにいると思っといて。」
「オッケー。」
と麻友が相槌を打った瞬間、クスクス笑いだした。
「どうしたんだ?」
「ふふっ。素直なりっくん見て、なんか嬉しかったからかな。」
「なんだよ、それ。」
でも、俺のあまのじゃくが彼女を心配させていた原因でもあるってこと?なんか申し訳ねぇ。
「そういえば、あの時思い悩んでいたのってなんでなの?」
「あぁ。まだ言ってなかったっけ。実は…」
と医者に言われたことをそのまま麻友に伝える。俺が死んでしまうかもしれないと言う報せにどれだけ悲しんでくれるかなと思ったが、
「あぁ。そういう事ね。」
麻友の反応は意外に淡白であった。
なぜ、反応しない?狼狽えていると
「私、あまり悲しそうじゃないでしょ。
私ね。根拠の無い自信でりっくんなら大丈夫って思っちゃうんだよね。」
俺の心を読んだかのような返答に再び、
「俺の事良くわかってらっしゃる。」
と思わず声を漏らしてしまった。
「んで?りっくんは怖いの?」
「そりゃ怖いさ。…でも大丈夫。俺も根拠の無い自信は持ってる。麻友に負けないくらいのね。」
安心させようとそう言ってやると、麻友は「はぁ。」とため息をつき呆れた顔で
「癖はそうそう治るもんじゃないのかな?」
とぼそっと吐いた。気になった俺は
「なんの事だ?」
と疑問をぶつけるが、麻友はいつもの笑顔に戻り、
「ん?なんの事?」
ととぼけた。はぁっとため息をつき、仕方がなく引き下がった。
「こうなった麻友は、これ以上食い下がっても無駄だから。この件は忘れよう。」
「私の事良くわかってらっしゃる。」
と麻友にニヤニヤとしながら言われた。
「いいから病室戻るぞ。プリントとかまだ貰ってないからな。」
「はぁい。」
と会話したあと、俺らは屋上をあとにした。
作者です!
1月8日まで1話ずつ投稿で完結予定!
コメント、♡等待ってます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます