第15話 秘密の契約

文明の質問に亮が答えた。


・・・2週間前・・・

生死を彷徨っていた亮が目を覚ました。

「先生、團さんが目を覚ました」

看護師のマリエがスミス医師を呼びに言った。


マーク・フレイザーが医師の連絡を受けて病室に入り

枕元に立っていた。

「亮、大丈夫か?」

「ああ、フレイザー警視」

「おいおい、もう警視じゃないFBIの特別捜査官だ。マークで良い」


「はい、マーク僕はどれくらい寝ていましたか?」

「2週間だ」

「うっ」

亮が足を抑えた。

「痛いだろう、凄い怪我だったぞ」

「痛いより動かないんです」


亮は歩けなくなる事を不安思って呆然としていた。

「安心しろ!足は2本しっかりついているぞ。

後で医師と相談するといい」

亮がめったに見せない不安な様子を察してフレイザーは

亮の足を叩いた。


「こんな時に申し訳ないが、お前に聞きたい事がある」

「何でしょう?」

「ハイジャック犯のジェイクが何か言っていなかったか?」

「何故ですか?」

2週間意識が無かった亮は突然ハイジャックの時を思い出すのは

容易ではなかった。


「奴らはハイジャックのシーンをネットで

 有料で流していたその金が振り込まれた

 口座のパスワードはジェイクしか知らないんだ」

「では、パスワードが分からなければ」

「ああ、永遠に・・・」


「それでいくら位」

「20億ドルだ」

「日本円で2000億円ですね」

亮がため息をつくとフレイザーは亮はパスワードを知らないと

判断し別な話しをした。

「実は捜査本部ではジェイクの後ろに誰か黒幕が

いたのでは無いかと思っているんだ」


「黒幕ってもしかしたら」

「そうだ。ジャック・モーガンだ。

それで不自由な体で申し分けないんだが

協力を頼みたいんだか」

「20億ドルをネタにジャック・モーガンをおびき出すんですね」


「そうだ、亮君がジェイクのパスワードを

知っていると言う我々が噂を流す

 そこに接近してきた奴がジャック・モーガンの仲間だ」

「分かりました、では僕の方からお願いがあります」

「なんだ?」

「ジェイクがどうしてハイジャックをしたか知りたいんですけど」


「それは調べてある。ジェイクは自分の国に大学を作るために

 NPO組織を作っていた」

亮はジェイクがコックピットから落ちていく姿を思い出した。

「大学を作るなんていい人じゃないですか」


「ああ、おそらくジャック・モーガンに大学設立の資金を出すとか

言われてそそのかされたのではないかと思う」

「気の毒に・・・」

ジェイクが亮にパスワードを残していったのは

亮に大学設立の夢を託して行ったのではないかと思った。


「亮、犯罪人に同情はするな。命取りになるぞ」

「分かっています」

「早速だが我々が明日から君はFBIの監視下に入る、

この病室には盗聴器を仕掛けるが問題ないな」

「はい、それで家族やみんなに連絡を取りたいんですが」

「ダメだ。表向きには男亮はまだ意識が無い事にして

 裏組織には意識が戻ったと言う情報を流す」

「分かりました」


~~~~~

亮は文明とマギーにFBIとの取引の話しを説明した。

「亮、気になる事が1つあるわ。ジャック・モーガンの

 手先って一人だけ?」

マギーがこのままパスワードが不明のままだったら

亮の元にはもっと危険に会うのではないかと思った。


「いや、もっといると思います」

「どうするの?とても危険よ」

「FBIがカニエラの自供を取ったら

 例の資金は当局が凍結したと発表する事になっています」

「ああ、それなら安心ね」

マギーがニコニコと笑っていると文明が亮の耳元で囁いた。


「おい、亮。お前どう言う取引をしたんだ」

「パスワードを教える代わりに20億ドルの50%

10億ドルを無利子で10年間借り受ける事になりました」

「何!そんなにか?」

文明は20億ドルの大金の半分と聞いて驚いていた。


「それで10億ドルをうちの

会社プラネット証券で運用して資金を

増やし基金を作ってジェイクの

夢をかなえる事にしたんです」


「それで、亮の取り分は?」

「運用しだいですね。3%になるか10%になるか」

亮は簡単に文明に答えた。

「まったく、アメリア相手にそんな交渉をするなんて

お前は良い奴か悪い奴か分からん」

流石の文明も計算高い亮に舌を巻いた。


「飛行機のフロントガラスが割れた緊急事態に

 聞いた12桁の数字を記憶できるなんて僕しかいません」

「そりゃそうだ」

文明は笑いながら亮の肩を叩いた。


~~~~~

フレイザーに連れられ警察署に入ったカニエラは

翌日弁護士が来るまで黙秘を決め込んでいて

留置場に入り込んだ。

「亮、マークだ。カニエラは弁護士が来るまで話さないそうだ、

 明日の朝亮の聴取があるから警察のほうへ来てくれ」

フレイザーから亮に電話があった。


「了解です」

亮はそう返事をしながらカニエラの事が気になっていた。

「まさかな・・・」

亮は電話を切った後呟いた。

~~~~~

亮たちがユニオンリゾートハワイアンに

着き亮が車椅子をマギーに押されながら

最上階のペントハウス到着すると

絵里子が絢香が手を繋いで待っていた。

「亮、小妹たちが私達を守ってくれたの」


「ありがとう、小妹、蓮華、桃華」

「ううん、私達が倉庫の方へ助けに行けなくてごめんね」

逆に小妹が首を横に振った。

「いいや」

部屋の隅にマリエがすまなそうな顔をして亮を見つめていた。

「マリエ、お兄さんは?」

亮はマリエを見つけて駆け寄った。


「警察に連れて行かれたわ」

「君のお兄さんとはドライブに行っただけと言ったのに・・・

マリエ、お兄さんを迎えに行きましょう。何かの間違いです」

亮はマリエの兄ケアカを使ってカニエラをおびき出した

責任を感じていた。


亮は直ぐにフレイザーに電話をかけ

ケアカ警察に連れて行かれた話しをした。

「私はそんな命令はしていないぞ。とりあえずは

 カニエラの自供を取るのが先だ」


「ちょっと待ってください」

亮はフレイザーの電話を待たせてマリエに聞いた。

「マリエ、連れて行った警察は制服ですか?」

「ええ、制服だったわ」


「おかしい・・・」

亮は今回の件はFBIの人間しか動いていないのを知っていた。

「マーク、カニエラが危ない!」

亮はフレイザーにそう叫ぶと電話を切った。


「ロビン、ケアカの行き先は分かるか?」

「いや、電話が切れている」

亮に指示されたロビンは直ぐにケアカの

居場所をGPSで調べて答えた。

「とにかく、マリエ。ケアカの居場所を探しましょう」


「は、はい」

「小妹、蓮華、桃華は警察へ向かってくれ」

「了解」

久々に亮の強い命令口調に小妹は痺れるような快感が

走った。


「ロビンは続けてケアカを居場所を探してくれ」

「了解」

「兄さん、丈夫そうな車を貸してください」

「ああ、地下駐車場にHUMMERが止めてある」

文明がキーを放り投げた。


「マギー行くぞ!」

亮はそう言って車椅子から立ち上がった。

「キャー、立っている」

悲鳴が上がった。

「後で説明する」

「亮、私も行くわ」

マリエが亮に付いて行った。

亮とマギーとマリエ、小妹たちがエレベーターに飛び乗った。


「私も行く」

祐希は亮に抱きついた

「危ないぞ」

「これでも空手2段だよ」

男だった高校時代の祐希は

水泳以外のスポーツ万能だたった。

「迷惑かけないから」

亮は絵里子の顔を見て眉毛を下げた。


~~~~~

「小妹、車は?」

亮はエレベーターの中で小妹に聞いた。

「あるよ。それより歩けたんだ」

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