第14話 リハビリ

劉文明が立ち上がった。

「文明さんも行くんですか?」

絵里子はユニオンチャイナグループの次期総帥の

文明が危険な場所に出向く事に驚いた。

「ああ、絵里子さんの娘、絢香を狙ってここに来た

ネズミ2匹を返さなくちゃならないからな」


「ありがとうございます。文明さん」

絵里子は深く頭を下げた。


文明がサングラスを掛け部屋から出ると黒服の

ボディガード四人が文明の前と両脇と後ろを歩いた。


~~~~~

「歩けない男をいたぶってもしょうがない、

一歩引いてジェイクが何か数字を言っていなかったか?」

カニエラが椅子と共に横になっている

亮にピストルを向けたまま亮に聞いた。


「言っていましたよ、12桁の番号」

亮が言うとカニエラが大きな体で屈んだ。

「本当か?」

「はい」

亮がうなずくと男が亮を椅子に座らせた。


「さて、パスワード言ってもらおうか」

「その前に聞きたいことがあります」

「何だ?」

「あなたに指示をしている人間は誰ですか?」


「そんな事は言えるわけ無いだろう」

カニエラは顔色を変えて首を横に振った。

「ジャック・モーガン」

「うるさい!」

亮がボソッと言うとカニエラは椅子に座っている亮の

腹を蹴飛ばした。


亮の座っていた椅子の足が折れ

亮は背中から仰向けに倒れた。

「もう許さん!お前を殺す!お前の言う通り

 銀行員を誘拐して自白させる」

カニエラはピストルを構えて亮に近づいた。


「やはり、ジャック・モーガンか」

「うるさい!」


そしてカニエラの右手の人差し指がトリガーに

かかりそれを引いた。

「バーン」

9mm弾は亮の座っていた椅子の背中に当たった。


「ピューン」

軽い音がするとカニエラの右目に痛みが走った。

「何だ」

カニエラは右目を抑えると周りを見渡した。


数秒前とっさに左に回って避けた亮は右手でCDを

カニエラの目をめがけて投げていた。


亮は続けて二人の男にもCDを投げた。

亮は二人が怯んだ隙に体を転がし

木箱に後ろに隠れCDを色々な方向に投げつけると

ブーメランのように方向をかけ、カニエラに確実に当たっていった。


「何なんだ!やつを殺せ!」

カニエラは大声で子分たちを呼んだ。


子分たちの撃ったピストルの弾は亮が隠れた木箱に当たっていた。

「何やっている。奴が持っているのはただのCDだぞ!」

カニエラは子分たちを叱咤した。


そう言っているカニエラの首筋にまたCDが当たった。

「クッソ!」

「ボス!」

カニエラは興奮して子分たちの制止も聞かず

木箱の裏に入った。


子分たちが意を決して木箱の裏に入ってピストルを向けると

カニエラが気を失って倒れたていた。

「ボス!」

「奴はいないぞ!」


「歩けないんだ、消えるわけ無いぞ。入り口を押さえろ」

子分達は亮を探しまくった。


「いたぞ!」

亮は腕を引かれ倉庫の真ん中に引っ張り出され、

それを子分たちが亮にピストルを向けて取り囲んだ。


「ロビン、GO!」

亮が大声を挙げると突然倉庫の中のライトが消えた。

「バッシッ、バッシッ」

暗闇の中で激しく争う音がし

その後、銃声が聞こえた。



倉庫内にライトが点くと入り口から激しい物音が聞こえ

四人の男達がピストルを構えて入って来た。

「パーン、パーン」

四人はピストルを持っている

男達の腕を狙って落としていった。


「亮、亮は何処だ?」

文明は大声を上げ、亮を探した。

「兄さん、ここです」


亮は暗くなると同時に敵を倒しマギーが垂らしたロープで

天井の鉄骨に上がっていてマギーと一緒に手を振った。

「おお無事だったか、降りて来い」

「はい」

亮は返事をすると亮は手と足にロープを掛けて降りてきた。


「亮。足、大丈夫なのか?」

が亮に聞くと亮は軽くジャンプをして見せた。

「はい、ずいぶん回復していたんですが

 ずっと監視されていたものですから、今日はリハビリで」

「なるほどな・・・それでここのボスは誰だ?」

亮がカニエラを指差すと文明はカニエラの胸座を掴んで

睨みつけた。


「おい、お前。絵里子の娘を誘拐しようとしたな」

「お、お前は誰だ?」

カニエラは文明の迫力に押されながら名前を聞いた。

「今度、團亮と家族に手を出したらお前の親、

お前とお前の兄弟、その子供一族皆殺しになる」

「ふ、ふん」

カニエラは文明の言う事を信じず顔を背けた。

すると、文明はカニエラの頭にピストルを突きつけた。

「信じていないようだな、團亮という人間の怖さを」


「兄さん、そろそろここを出ないと。マギー行くぞ」

亮が上に向かって手を振るとマギーがロープで降りてきた。

「上からマギーパンツが

見える」

亮がマギーを見て笑った。


「何喜んでいるんだ」

「い、いいえ何でもちょっと溜まっているかも」

亮は慌てて答えた。


「私、亮にすっかりだまされていたわ。足が治っていたなんて」

上から降りてきたマギーは亮の尻を蹴飛ばした。

「ごめん、さあ帰りましょう。みんなが心配しています」

亮に言われ、マギーと文明と四人のボディガードは

裏口から出て行った。


~~~~~

そこには十数人の武装したFBIがM-4カービン銃を構えて入って来た

「FBIだ!」

FBIの隊員はカニエラと子分たちに銃を向けた。

「なんだ、全員が倒れているぞ」

先頭にいたマーク・フレイザーFBI特別捜査官が

首を傾げ亮を探した。


「おい、團亮を探せ」

フレイザーは部下に指示をした。


「おい、カニエラ、お前を逮捕する」

「な、なんの罪だ」

「團亮誘拐の罪だ、すでにレストランで七人、

ホテルで二人捕まえている」

フレイザーは亮の誘拐の容疑でカニエラを捕まえ

ジャック・モーガンとの関係を聞こうとしていた。


カニエラは自分の部下が自白して

自分の罪を立証される事を恐れていた。

「たかが日本人男の事で何故だ?あの男は何者だ?」

「少なくとも私の友人なのは事実だ」

倉庫の大きな扉が開くとサーチライトがカニエラを照らした。


その後ろに何台ものパトカーが

倉庫を取り囲み海岸には海兵隊のボート

空にはヘリコプターが旋回していた。

「カニエラ、相手が悪かったな」

フレイザーはあまりにも大量の軍隊や警察の数に

呆然としているカニエラの肩を叩いた。

「何なんだあの男はー」


~~~~~

そんな状況まったく知らない亮は

車の中で話しをしていた。

「ロビン、GOって言ってその通りになると思っているんだから亮は」

亮の声で倉庫の電源を切った、マギーは亮の腕に抱きついた。

「あはは、すみません。ところでみんなは?」


「みんな陰ながら亮を守っていた、病院へ戻るのか?」

「はい、外泊許可は取っていないので」

文明は本気とも冗談とも取れる亮の返事に笑った。


「その前にみんなに会って行けよ、マリエも持っているはずだ」

亮とマギーと文明が乗っている車はユニオンハワイアンリゾート

に向かっていた。

「ところでどうなっているんだ?」

「はい、実は・・・」

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