第3話 車イス

亮はそう言ってマリエの方を笑ってみた。

「あはは、男はみんな女好きですよ」

スミスはそう言って亮のカルテを見た。

「ところで、僕の下半身が動かないんですけど」


「ええ、爆発の時の破片が脊髄に刺さって

 それが影響しているのかと思います」

「治りますか?」

「はい、傷が治ってリハビリで何とか歩けるようになると思います。」

スミスは亮が歩けるようになる事を伝えた。


「じゃあ、あそこは?」

亮が股間を指差すとスミスは笑いながら答えた。

「あそこは微妙なところだからね、気に病むことは無いです

リハビリは難しいが何かの拍子に元気になるかも知れない

せいぜい良い女を見ているといい」


「分かりました」

亮が返事をするとマリエは舌なめずりをして微笑んだ。


~~~~~

「ねえ、メグ。ダンさんに誘われたら

あなたならどうする?」

マリエは休憩室で同僚のメグと話をしていた。

「日本人はキスが下手だから嫌かな」

「もし上手かったら?」


「大歓迎よ、入院中毎晩上に乗っちゃうかも。

でも彼不能なんでしょ」

「ええ、まだ下半身は動かない」


~~~~~~~

マリエが着替えて病院から出ると車が止まっており

マリエはその後部座席に乗った。

「マリエ、今日の團亮の様子はどうだった?」

中年のアロハシャツを着た人相の悪い白髪の男が聞いた。


「ご存知の通り、彼の奥さんが面会に来てその後は

 誰とも会っていないわ」

「二人はどんな話をしていた?」

「知らないわ、二人は離れたから私が

車椅子に付けた盗聴器で聞いていたんでしょう」


男はマリエの言葉に返事をしなかった。

「彼は1週間意識不明で、意識を取り戻した

時記憶を喪失していたわ、

 事件の時の記憶なんか無いはずよ。

もし知っていたとしても私じゃなくFBIの方に

 とっくに話しをしているはずよ」


「それはお前には関係ない。とにかく、体を張ってでもFBIより

先に手がかりを探り出すんだ、黙って協力をすれば

お前の兄さんの借金を棒引きにしてやる」

「分かったわ、約束よ。カニエラ」

マリエは車を降りてドアを強く閉めた。


~~~~~

出掛けに飲んだ媚薬の効果で

アラモアナショッピングセンターを

歩く絵里子に次々に男が声をかけてきた。

「はあ、声をかけて来るのは白人ばかりか、

勇気ある日本人はいないの?」


絵里子は遠くから物欲しそうな顔を

している日本人を睨みつけた。

「すみません、日本人の方ですか?」

「はい」

絵里子は日本語で声をかけられてニッコリと笑って

振り返った。


「ダイビングツアーが激安価格ですがいかがですか?」

「いいえ、いりません」

「他にもいっぱいありますよ。射撃ツアーとか」

男は絵里子の腕を掴んだ。


「分かったわ、射撃ツアーに参加するからあなたを撃って良い?

 その白いTシャツに日の丸を付けて上げる」

「はあ」

強気の話しをする絵里子に男は呆然としていた。

絵里子は怖い顔をして4階のマイタイバーに入った。


日本人の新婚さんだけではなく男同士で

飲みに来ている日本人を見つけ

絵里子はカウンター席に座りスカートの

スリットの間から長い足を出した。


「こんばんは、お一人ですか?」

それを見た絵里子のところに白人の

男が日本語で話しかけてきた。

「私は日本人オンリーのエスコートガールです」

「チッ、ビッチめ」

白人の男は舌打ちをして戻って行った。


「何言っているの!どうせ馬鹿な日本人女と

タダマンしようとしたくせに」

銀座で働く女のプライドは

そんなに安くない。

絵里子は立ちあがり

日本人男性を探してそのテーブルの前に立った。


「すみません、日本人の方ですか?」

「は、はい」

突然、セクシーで魅力的な女性が目の前に立ち

男が戸惑っていた。

「すみません、スマートフォンを貸していただけますか?」


「えっ、でも・・・」

オドオドしている男たちに絵里子はイライラしていた。

「通話料は払います」

絵里子は我慢して笑顔でやさしく言うと

目の前にスマートフォンを差し出す男がいた。


「僕のでよかったらどうぞお使い下さい」

絵里子は男の英語iPhone見て手を出さなかった。

「どうしたの?僕は通話料を払えなんてけちな事言わないよ」

「ううん、いいわ。ハワイは長いんですか?」


「こう見えてもプロのサーファーなんだ、君は一人?」

絵里子に声をかけてきた男は色黒で

いかにもハワイ慣れをしているようだった。


「ええ、友達とハワイで待ち合わせをしていて

 今夜は一人なの」

「へえ、じゃあ僕の部屋で飲み直そう」

男は絵里子に下心を持って自分の部屋に誘った


「あっ、ごめんなさい」

絵里子は男がiPhoneだったので

ボックスに座っている二人の

中年男性を見つけて席を立った。

「こんばんは、日本の方ですね」


「はいそうですが・・・」

いきなり絵里子に声をかけられた二人は怪訝な顔をした。

「すみません、私あの男にナンパされて

困っているので助けていただけませんか」


「分かりました、ここに座ってください」

「はい、ありがとうございます

絵里子は男が引いた椅子に座って話しを始めた。

「今日はゴルフですか?」

絵里子が二人の真っ白な手を指差した。


「あはは、分かりますよね」

中年男性は銀座のホステスの雰囲気をかもし出している

絵里子に好意を持っていた。

「はい、私は日本から来た黒崎絵里子と申します」


「ほう、日本人か私は真壁伸太郎、

横浜で不動産会社を経営している」

めがねを掛けた落ち着いた男がまず自分の話しをした。

「私は金融関係の仕事をしている栗田と言います」

次にちょっと若い感じの男が答えた。


絵里子が二人と話しを始めたのでプロサーファーの男は

絵里子を睨みつけていた。

「あの男はハワイに遊びに来ている日本人女性をナンパして

 遊んでいる男か」

「きっとそうですね」


「黒崎さんは一人?」

真壁は周りを見渡した。

「一緒に来た子は時差の関係でもう寝てしまって」

絵里子は一緒に来た子絢香の事を思い出して笑いながら答えた。

「なるほど、せっかくのハワイの夜にもったいないな」


「まあそうですね」

「君の仕事は?」

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