第2話 ミッション

「それだけじゃない、教育者も育成をしなければならない」

「そうか、人か・・・」

「ロボットでも教育は出来ます。でも人の教育は

教育者へのリスペクトが有るから生徒、学生が

集中できるのです」


「良くわかるわ」

亮が倒れてから祐希が信じられないほど

勉強をしているのは

亮が居るからだと絵里子は感じていた。


「ところで、私以外には誰も連絡が

行っていないのかしら?」

絵里子が言うと亮はマリエの方を見て言った。

「マリエしばらく絵里子さんと散歩がしたい、

僕の娘を預かっていてくれないか?」


「はい」

マリエは絢香の手を引いた。

絵里子が車椅子を押して海が見える芝広場上に芝の方へ

歩くと亮は後ろを向いた。

「すみません。実は僕が絵里子さんを指名

してお願いしたんです」


「どうして?」

「色々考えて一番信用が出来て僕の周りの

 人たちと面識があるからです」

「そうか、ありがとう」

亮に頼られた絵里子は嬉しかった。


亮は絵里子の顔に手を伸ばして耳元で囁いた。

「実は当局は僕がハイジャック犯のお金の

有りかを僕が知っていると思っていて

意識が戻ってから何度かFBIに質問を受けています」


亮はマリエの前で言った、

死から蘇った話しを否定して

監視の目から話しをしていないように

見せるために絵里子とキスをした。


「ひょっとしたらこの車椅子に盗聴器が

付いているかも知れません」

亮は続けて絵里子の髪を掻き揚げ耳元で囁いた。


FBIはハイジャック犯のジェイクが

飛行機の中の映像配信のアクセス料の

20億ドルに関する何かのメッセージを

亮に残して行ったのではないかと疑っていた。


~~~~~

2週間前JOL7007便の中で亮とジャイクが戦い

フロントガラスが割れた。

「た、助けてくれ!」

シートベルトをしていなかったジャイクの

体がコックピット内で体が

何度かバウンドするとフロントガラス

から半分体を外に出し

亮は手を伸ばしジャイクの手を掴んだ。


「助けてくれるのか?こんな俺でも?」

「当然だ、助けを求める者には手を差し伸べる」

亮は思い切りジャイクの手を引いた。

「ありがとうよ、有料映像サイトでかなりの

売り上げがある。

その金を貧しい国の教育に使ってくれ」


「わかった」

ジャイクは口座番号とアクセス番号を

言って亮の手から滑って

機外に放り出され10000メートルの高さから

真っ暗な太平洋に落ちていった。


~~~~~

亮はその時のジェイクが言った

アクセスナンバーを忘れてはいなかった。

ただ、ジェイクのお金を当局が

勝手に凍結していいか疑問を持ち亮は

FBIには答えていなかった。


「なんかやばそうね」

絵里子の目には何人かの黒服の男達が映っていた。

「ええ、僕は四六時中こうやって監視されています。

 絢香をマリエに預けたのは二人きりになるためです。

 まさか自分の娘を預けたまま逃げ出す事は無いですからね」


亮と絵里子は監視の男達の目の前で抱き合いながら

小声で会話を続けた。

「亮、あなたは本当に金の在り処知らないの?」

「もちろん、あんなの緊急の時にどうやって

犯人から金の在り処を聞き出すことが

出来ると思いますか?FBIはいずれ諦めると思いますよ」


亮は絵里子に嘘をついた。

「そうね・・・」

絵里子は亮の言い分を最もだと思った。


「みんなは元気ですか?」

亮は普通の会話に戻した。

「ええ、お父様は亮の仕事の代行をしていてくれたわ、

それにタクシー会社を買収したそうよ。

お姉様たちもスタジオDニューヨークの

オープンで奔走しているし


 マッスルカーブは無事にオープンしてブルーノが挨拶したわ」

「そうですか。タクシー会社か・・・」

亮は前から父親と考えていた。

ボディガードとタクシーの機能を合わせ

持ったセキュリティタクシーにして、

企業VIPや芸能人の送迎に

将来日本にいる暗鬼のメンバーの

職場と考えていた。


その後、絵里子は亮のいない1ヶ月間の色々な話をした。

「さて、これからリハビリの時間です」

「わかった、しばらくハワイにいて

明日の午前中にまた来るわ」

「そうですね。せっかく来たんだから

ゆっくりしていくといいですよ」

「そうね、そうするわ」


絵里子は車椅子を押してマリエのところへ

行き絢香を連れて病院から帰っていった。


~~~~~

「絵里子さんは亮の奥さん?」

絵里子に嫉妬したマリエが亮に聞いた。

「いいえ、絢香は僕の娘ですが

絵里子さんは僕とは結婚しません」

「彼女が拒否しているの?」


「まぁ、色々な事情があって・・・」

マリエは自分が好意を寄せている亮と

籍を入れない絵里子が不思議で呟いた。

「信じられない。きっと他にも男がいるのね」


「何か言いましたか?」

「い、いいえ」

マリエは自分の小さな呟きに反応した亮に

驚いて声が詰まった。


~~~~~

絵里子は病院近くのコンドミニアムの

部屋に入るとバッグから小さく折りたたんだ

紙を見つけた。


「絵里子さん、病院ではいたるところで

盗聴されている可能性があります。

 至急ロビンに連絡を取ってください。

スマートフォンもホテルの部屋も盗聴されているかも

 知れませんので、日本観光客から5Gディバイス

を借りて使ってください」


それは亮の絵里子に対する手紙だった。

「何よ!面倒ね。5Gは日本人しか持っていないのかしら?」

絵里子は文句を言いながら大きく割れた

スリットの入ったワンピースに着替えた。


「さて、ハワイは新婚旅行が多いから

男性から借りるのは難しいかな」

絵里子は絢香をホテルのベビーシッターに預けると

タクシーに乗りアラモアナショッピングセンター

に向かった。


~~~~~

「ねえ、マリエ。あなたダンさんの介護担当でうらやましいわ」

亮の病室から出てきたマリエに同僚のメグが声をかけた。

「えっ、どうして?」


「だってあんなに素敵な男性の介護やりがいあるでしょう。

 私彼の寝顔を見たことがあるけど、あそこがウズウズしてきたもの」

「寝顔を見ただけで?」

マリエは聞き返した。


「うん、あなたはならないの?」

メグに聞かれたマリエは笑っただけで答えなかった。


~~~~~

亮が目覚めた2日後

ベッドに横たわった亮がマリエに言った。

「看護師さん、僕は誰なんでしょう?」

「まだ、記憶が戻らないんですね。

あなたの名前は團亮さんです。

 ハイジャック犯と戦って乗客を飛行場と

基地と護ったヒーローですよ」


マリエは優しく亮の耳元で囁いた。

「そうですか、僕は夢の中でひたすら鬼と戦っていました」

※Devil Hunter亮 地獄タクシーⅢ


「そう、その間あなたは何度も心臓が止まっていたわ」

「すみません、お世話になりました」

「ううん、助かってよかった・・・」


「あなたって綺麗ですね」

「ありがとう亮」

亮はマリエの首に手を伸ばした。


「トン・トン・トン」

その時病室のドアがノックされた。

マリエが慌てて胸のボタンを締めると

スミス医師が入って来た。

「ダンさん、少しは記憶が戻りましたか?」

「はい、僕は相当女好きだったようです」

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