柳沢秀
「いやぁ、楽しかったなぁ。」
僕はそう呟く。今日は仲の良い全員で遊びに行こうとしたが、有栖以外は予定があって、有栖とだけ遊んだのだが、思ってた以上に楽しくて、時間の流れをとても早く感じた。
「秀先輩は叫びすぎですよ〜。」
僕たちは色々な場所に行っていた。ゲーセンだったりカフェだったり。叫びすぎと言うのは、ゲーセンで金を面白いように溶かしてしまい、財布が軽くなったのが原因だ。
「仕方がないだろ。財布が思ってた以上に軽くなっちまったんだから。今日からしばらく金欠だぞ。」
「先輩らしいですけど、使い方を少しは自重したらどうなんですか?」
有栖から説教を受ける。後輩に説教を受ける先輩ってダサくね?と思った。
横断歩道に差し掛かり、信号が青になったのを確認して、僕たちは歩き出す。瞬間、右からありえない速度でトラックが接近しているのを確認した。
普通は絶句したりする人が多いのだろう。だが、僕の場合は咄嗟に体が動いていた。2人で同時に逃げるのは不可能。そう察した僕は、有栖を本気で突き飛ばした。
「危ないっ!」
そうして有栖は歩道に戻り、僕は車道にいた。そして、そして、
人生で聞いたこともないような轟音が炸裂し、僕はありえないほど遠くまで吹っ飛ばされた。
トラックはそのまま左にずれて、建物を巻き込みながら川に落ちていった。
一瞬、辺りは静寂に包まれた。が、思い出したかのように悲鳴が迸る。身体中から血が抜けていく感覚がして、急激に死を感じた。
「先輩!秀先輩!」
近くで有栖が叫んでいる声がして、でも僕は反応する力は残っていなくて、そのまま意識を失った。
「なんだよ…これ…」
その様子を僕は見ていた。そこに映し出されていた映像は、僕が交通事故にあった直後。病院に緊急搬送され、手術を受けて、脳死判定を喰らっていた。そして、医師は言っていた。あと1ヶ月で体が限界だと。それは、僕が言われた腫瘍の余命と全く一緒だった。その後、有栖が病室で呆然としていて、音羽と父さんがやってきて、真夏と汐恩がやってきていた。そして、真夏の一言により、場の空気は一触即発。修羅場と呼ばれるものになった。
瞬間、頭の靄が消えたような気がした。だが、少しだけ残っている。これは、僕の記憶なのだろうか。
わからない。だから僕はもう少しこの夢を見ることにした。
しばらく音羽たちの様子を見ていると、衝撃の言葉を父さんは発した。
「夢を……見せる機会?」
その瞬間、全てを思い出した。思い出したと言うよりかは、矛盾に気が付いたと言う感じだ。
「僕が体験してたのは、夢の世界の話なのか?」
そう考え、僕は脱力感に襲われた。
「今までの生活は…なんの意味もなかったのかよ…」
全てが無駄だった。そう考えると、もうどうしようもできないほどに辛くなった。だから僕は決意した。この夢が覚めたのなら、僕の友達が全員、僕の死を受け入れられないのなら、僕は………………
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