クリスマスデート! 2
楽しくて、なぜか幸せだった時間は瞬く間に過ぎていき、気がつけば日が暮れていた。
「楽しかったですね!先輩!」
電車に乗っている帰り道、有栖がそんなことを言ってくるので、相槌を打つ。
「そうだな。楽しかったぞ。」
実際かなり楽しかったので、否定せず本心を伝える。最近では外で遊ぶと言ったら真夏の家でゲームをすることくらいしかなかったから楽しかった。と言うのもあるが、有栖とデートできたから、と言うのも大きかった気がする。
「………ん?」
僕はあることを疑問に思い、思わず声を上げた。
「どうしたんですか?先輩。」
「い、いや、なんでもないから。」
慌てて僕は否定する。だって、僕が疑問に思ったこと。それは、有栖のことを、なぜかかなり大きな大切な存在として認識するようになっていたこと。今までは友達という認識だった。だが、今ではそれ以上の様な気がする。それに、有栖のことを考えたり見たりすると心臓が跳ねる様にドキドキ言い出す。この気持ちは本当になんなのだろうか。
「先輩。」
名を呼ばれ、僕は右を向く。相変わらず心臓はうるさかった。
「帰りは寝ないんですか?」
そんなことを聞きながら膝をポンポンと叩く有栖。
「ば、馬鹿言え。寝るわけないだろ…」
寝れるわけがないしこの心境で頼める気がしなかった。
「寝るわけないとか言ってたのに行きは寝ましたよね?」
「そ、そうだけど…」
痛いところをついてくるな。でも仕方がなくない?昨日は寝れなかったんだから。行きは眠くて仕方なかったし。それに半分強引だし。
そんなことを考えていた刹那、肩にコツンとした感覚がした。
「え?」
変な声を発しながらも、僕は肩の方を見る。するとそこには有栖が頭を僕の肩に乗っけて目を瞑っている姿が目に映った。
「……っ!」
キュン死しそうだ。そう思った。あまりにも可愛すぎた。流石にまだ寝ていないと思っていたが、予想とは反して、寝息が聞こえてきた。いや寝るの早すぎない!?
「…………ほっぺ触りたい…」
不意にそう言った欲に襲われた。絶対ぷにぷにだろこれ。突きたい。だが抑えろ柳沢秀。ここで欲望を解放してしまったらのちにどうなるかわからない。まぁ、ここは電車なのでやばくはならないだろうが、それでもここでは耐えるべきだ。
地獄の時間は1時間くらい続いた。有栖は僕の方で寝ていて、僕はほっぺ触りたい欲に駆られて悶々としていた。電車が最寄駅で止まった時は感謝が止まらなかった。
「もう終わりなんですね。」
寂しそうに有栖が呟いた。
「……そうだな。」
名残惜しさを感じた。まだ一緒にいたいと思った。だから僕はある提案をした。
「なぁ、プレゼント交換しないか?」
今日はクリスマスイブ。サンタさんが今日の夜に枕元にプレゼントを置く日。だからこそ、まだ一緒にいる口実にそう提案した。
「良いですね!やりましょうっ!」
有栖は快く承諾してくれた。それを僕は嬉しく感じながらも、クリスマスの雰囲気に包まれたいつもの繁華街に向けて歩き出した。
「ここにするかぁ。」
有栖とは別れ、一旦プレゼントを渡すために別行動をすることになった。何を買ったら喜んでくれるだろうか。そう考えるとなんだかウキウキした。
「これは…」
僕はあるものを見つけて立ち止まる。それは、ホワイトコーラルの埋め込まれたネックレスだった。綺麗だと思った。これが一目惚れというやつかもしれない。
直感的にそれを手に取り、僕はレジに向かった。少し高かったが、なぜかそれを有栖に渡したかった。
思ったよりも早く選ぶのが終わり、僕は待ち合わせ時間よりも早くに待ち合わせ場所に着いた。だが、既に有栖はそこにいた。
「早いな。」
「秀先輩も早いですよ。」
お互い笑い合った。そして、
「じゃあ渡そうか。」
そうして僕たちは互いに特別に包装されたものを渡す。
「ハッピークリスマスです!先輩!」
その元気の良さに僕は苦笑しつつも包装されたそれを開ける。
「………え?」
驚愕する。だって、それは僕が選んだものと全く一緒だったから。
「えぇ!?先輩もこれ選んだんですか!?」
僕のを開けた有栖も驚いていた。それもそうだろう。普通ならネックレスのプレゼントなんて被らない。しかもホワイトコーラルという石まで被ったのだ。
「すごい奇跡だな。偶然だとは思えないな。」
僕は笑いながら言う。久しぶりの奇跡を体感した瞬間だった。
「本当ですよ。こんな偶然普通は経験しませんから。」
そして、僕たちは笑ってからそのネックレスをつけた。
「似合ってますよ!先輩!」
「お前もな。」
そうして僕たちはプレゼント交換を終え、帰路に着いた。
「っと、ここだな。」
有栖の家の前で僕たちは止まる。
「わざわざ送ってもらっちゃってすみません。ありがとうございます先輩。」
「いや、女の子一人でこの時間に歩かせるのは危険だからな。」
「ふふ。秀先輩ならそう言うと思いましたよ。」
それから少しだけ僕たちは雑談をした。これからのことやまたデートに行こうだとか。そして、何十分が経過して、このままだと話に終わりが見えないので僕は帰ろうとした。
「ま、時間も時間だし帰ることにするよ。また今度な。」
そう言い僕が踵を返した瞬間だった。
「先輩!」
有栖の声が聞こえた。僕は思わず振り返る。すると、肌と肌が触れ合いそうなほどの距離まで有栖は近づいてきていて、
「………え?」
右頬に柔らかな感触がした。
「また今度デートしましょ!先輩!」
そう言い残し、有栖は家に入って行った。その場に取り残された僕は呆然としながら、その右頬に指を添えた。
冬の夜で寒いと言うのにも関わらず、僕の暑くなった体が冷えるのはかなり時間がかかったのだった。
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