逃げてしまいたい私

 二人の結婚式のブーケを頼まれた。参列者の人たちが座るテーブルの花も。


 きっと私がこんな奴だなんて、疑ってもいないんだろうな。花を選ぶたびに気持ちが沈んでいく。


 こんなよこしまな気持ちを隠していることが辛い。何でも話せていた親友である彼女に。

 いっそ全て吐き出してしまえば、なんて自己中心的な考えが頭をよぎることが辛い。誰も幸せにならない逃げ道だって分かってるのに。

 私はこんなにも汚い人間だったのか、と思い知らされる。


 そんな私が選んだ紫色のデンファレ、ピンク色のスターチス、白色のかすみそうで作られたブーケ。主張は激しすぎず、でも人の目を引くようにしている。

 素直に口にできなかった、二人への祝福をたくさん込めて。私が出来るお祝いは、これが限界だった。


 結婚式当日。私が作ったブーケを持って入場してきた彼女。そんな彼女を幸せそうに見つめる彼。

 みんなの祝福を受けるのに相応しいと、純粋に思った。


 「ねぇ! このブーケ、本当に素敵ね。流石のセンス! 今日はたくさんの人に祝福されて、最高に幸せな日だった〜。これからも変わらずよろしくね!」

 それだけを私に伝えて、彼のもとに帰っていく彼女。


 今すぐにでも、ここから走って逃げてしまいたい。幸せそうに笑い合う二人を見て、涙が止まらなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋に成らない、あなたへの想い 千蘭 @sennrann

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ