大好きな親友

 長い付き合いの大親友から、大事な話があるとカフェに呼ばれた。ずっと連絡は取り合っていたが、お互い忙しかったから会うのは久しぶりだ。


 何の話かはおおよそ分かっている。数年前に彼氏が出来たって話してくれていたし、その後も順調そうな惚気を聞いていた。もう25歳だしそういう話があったっておかしくない。


 そう、結婚の報告があったっておかしくない。ちゃんと祝福しようと思っていた。大好きな親友の結婚だから。ただ、少し、相手が予想だにしない人だっただけ。


 彼女は親友であり幼馴染だ。幼稚園が一緒で、小学校・中学校も一緒だった。毎年同じクラスではなかったけど、家が向かいで登下校は二人。部活も相談したわけでもないのにたまたま一緒で、過ごす時間は学校中の誰よりも長かった。

 高校・大学は違ったけど、こうして連絡を取り合うくらいには仲が良い。でも、彼氏さんに会ったことはなかった。


 今日、初めて見たんだ。この子の彼氏さんを。だって、知っていたら、きっと。


 「じゃあ、紹介するね。私の彼氏でそろそろ結婚する人! いつも貰う花束、あなたの勤めてるお店のだよね? 知り合いだったりして〜。」


 息が苦しい。神様は、どうして、こんなにも残酷なことが出来るんだ。


 「そ、だね。知り合い、だったりするかもね。」

 私は今、ちゃんと笑えてる? 自然に喋れてる? 心臓が、うるさいくらい脈を打つ。クラクラして何も考えられない。


 彼女のことが大好き。

 嬉しいことも悲しいことも全部共有できていたくらい、仲が良かった。趣味も同じことが多くて、感性も似ていて、本当に何でも話せた大親友だ。


 彼のことも大好き。

 お客さんと店員の距離だったとしても、毎月姿を見るだけで本当に幸せだった。


 大好きな二人の、幸せな門出だから。


 だからこれは、絶対に知られてはいけない私だけの気持ち。

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