第7話 時空の魔物の正体

「ウル...また敵が現れたらどうしよう..」


私は、急足で家に向かっていた。

敵が現れても、変身して戦うことができないからとても不安だ。


「敵が、現れたら...その時は...走れ!!」

「ウルは、、安全だからいいよねー!!」


そんな会話をしているうちに家に着いた。

ウルがバリアを張ってくれてたおかげで、私の家は、周りの建物みたいに廃棄にならなくて済んだ。


「これからどうするの....?」

「長い戦いになるかもしれないから、少し休もう。」


ウルがポシェットから出てきた。


「もう、魔力回復したの?!」

「まだ完全じゃないが、、」


ウルは、少し悲しい目をしていた。


「どうしたの...ウル?」

「....すまない!!俺の魔力が足りないせいで...!!」

「ウルのせいじゃないよ!!」


「あの程度の戦いで魔力が足りなくなるなんて...ブルースピネルの力があれば...!!」


「ブルースピネルのエレメントストーンはどうしちゃったんだっけ...??」


「この世界に来るには、時空の鏡を使って来るんだが、、時空の魔物に見つかってしまってブルースピネルの魔力を封印されてしまったんだ。エレメントストーンは、魔物に取られてしまって、さらに呪いがかけられてカラスの姿にされてしまったんだ。」


「その魔物を倒せば、エレメントストーンを取り戻せるのね!!そしたら、ウルの魔力は元通りになって、ダークアビスを倒せる!」


「時空の魔物を倒すなんて無理だ。

今の状態で倒すなんて、まゆらまで呪いがかけられてしまう。」


「時空の鏡ってどこにあるの...?」


「この世界では時空の鏡がどこにあるかは分からない。」


「そっか....。」

(今のままじゃダークアビスを倒すなんて無理だよ...ウルの魔力が戻れば...)


落ちこんでいると、声が聞こえてきた。


(まゆら...月志摩..まゆら...)


「えっ...?!」

「どうした、まゆら?!」

「ウルには聞こえないの...?」

「何がだ?!何も聞こえないが」


その声は私にしか聞こえなかった。

よく耳を澄ましてみると、その声の主は私にこう言った。


(まゆら、この家の地下の部屋に時空の鏡があるわ、、、あなたなら魔物をなんとかできるから頑張って...ワタシはアナタの味方よ)


「まゆら!!大丈夫かっ?!」


「へっ?!あっ、、うん!!」


私は、ボー然としていた。だってこの家の地下の部屋ってパパの書斎だった場所だから

驚いた。


「あの、、ウル!!この家の地下に時空の鏡があるみたい...」


「はっ?」


「謎の声の主が、そう言ってて私なら、なんとかできるって!!」


「魔力がないお前に、魔物が倒せるわけないだろ!!」


「だって、、そう言われたんだもん、、」


「謎の声って俺には聞こえなかったぞ、」


「嘘じゃないもん!!本当だもん!!」


「まぁ、、じゃぁ、本当に時空の鏡があるのか地下に降りて確認してみよう」


ウルは、あんまり信じていない様子だ。

地下に行くのはだいぶ久しぶりだった。

地下に続く階段はホコリが、びっしりで

電球も切れていた。


「すごいホコリだな、、使われていない部屋なのか?」

「地下の部屋はパパの書斎だった部屋なの、

パパが事故で亡くなった日から、ずっとそのままで、、、」


書斎の鍵は開いていた。


「あれ、、?なんで、、鍵開いてるの?!」


部屋に入ってみると所々、蜘蛛の巣があった


「部屋の中って、、鏡なんてないんだけど、、、ウル?時空の鏡ってどんなの?」


「まゆら、この本棚を動かせ。」


「えっ?!これを!?無理だよ!!」


ウルに動かすように言われ、一応動かしてみようとしたら、なんとスライド式で、横に動いた。

「わっ!!動いた!」

すると、本棚の奥に隠し扉があった。


「ウル....もしかしてこの扉の奥に鏡が...?」


「あぁ、、多分な」

(まゆらにしか聞こえない謎の声....一体なんなんだ。魔力もないのに魔物を倒せるわけ..)


「ウル!!扉開けるよ!」


「ま、、待て!!慎重に開けるんだ」


扉を開けると、真っ暗闇だった。


「ウル...何これ真っ暗...鏡なんてないよ?」


ウルの返事はなく、振り返っても真っ暗で何も見えない。


「えっ、、ウル!!いないの?!どうしよう....」


どうやら、私だけ鏡の中に入り込んでしまったらしい。

私は、真っ暗闇を進むことにした。

何にもぶつからないし、誰もいない。


「ウルは、いないけど変身するだけでもした方がいいかな...でも、戦えないし....」


考えていても、何も起きないし変身したら何か分かる気がしたので、とりあえず変身することにした。


「遙か古の女神よ、深紅の輝きとその力を我に与えたまえ リベラジュエルスピネルラヴルージュ!!」


変身すると、少し目が慣れてきた。


「時空の魔物さーん...??出てきてもらえますかぁ..」


すると暗闇の奥が何か光っていた。

その光る何かはこちらに向かってきた。


「えっ、、な、何ー?!」


光にびっくりして、目を閉じてしまったが、ゆっくり目を開けると大きな目玉がこちらを見ていた。


「目、、、アナタが、、魔物なの、、?」


一つ目の魔物は私に話しかけてきた。


「お前は誰だ?何しにきた?」


「私は、月志摩まゆらよ!!ウルのブルースピネルのエレメントストーンを返してもらいに来たの!!

お願い...!!返してくれる?」


「私を倒せれば返してやろう。」


「倒すって....」

(ウルがいなきゃ攻撃できないよ....)


魔物は攻撃してきた。

私は、思いっきり吹き飛ばされてしまった。


「キャァァァァァー!!」

(このままじゃ...どーしよ)


「なんだ?弱いヤツか.....そんなんで倒せるわけないだろ」


「あなたを倒すしか方法はないの?!

私は魔法は使えないの!!だけど、ブルースピネルを返してもらわないとダメなの....」


その時、持っていたレッドスピネルの欠片が突然光った。


「おまえ....何者だ...なんでレッドスピネルの欠片を持っている....それは女王様の...」


「えっ.....女王様?」


「おまえは一体何者だ...」


魔物は攻撃するのをやめた。


「私は、ダークアビスを倒すためにレッドスピネルの欠片をウルと集めているの。

だけど、ウルのブルースピネルのエレメントストーンをあなたに奪われてしまったから

ウルは、本来の力を出せないでいるの!!

このままじゃ、ダークアビスを倒せないのよよ..レイディリア王国も、私のいる世界もダークアビスに支配されてしまうの!!

私はまだ魔力がないから全然実感ないんだけど、私マリーシャさんの生まれ変わりなんだって!レッドスピネルの魔力を持っているんだって!

女王様ってマリーシャさんの事でしょ?!」


突然魔物は、大人しくなった。

そして、その大きな目玉から涙を流しはじめた。

「エリーシャ女王がダークアビスを封印したはずなのに...なぜだ....」


「エリーシャ女王??」


魔物は私をじっと見つめていた。


「マリーシャ様の生まれ変わり...そうか....時はこんなに経ってしまったのか」


レッドスピネルの欠片がさらに強力な光を放ちはじめた。暗闇は一気に明るくなった。

私は、驚いた。

だって、魔物の正体が巨大な猫みたいな耳をした生き物だったからだ。

だけど、顔は大きな目玉一つだけ。



「化ネコっ!?、、、」


私がびっくりして腰を抜かしていると魔物は静かに話しはじめた。


「私は、エリーシャ女王様に仕えていたんだ。エリーシャ女王様はレイディリア王国を守っていた。

エリーシャ女王様の1人娘がマリーシャ様だ。

マリーシャ様が生まれて間もなくしてダークアビスはレイディリア王国を狙ってきた。

女王様はダークアビスを封印することに成功したんだ。

しかしその後、女王様はダークアビスの仕掛けた毒で...消滅してしまった。

ダークアビスは封印される前に毒を仕掛けていたんだ。さらに、毒を仕掛けたのは私だと王国のみんなが思うように仕向けていた。

そのせいで時空の鏡に閉じ込められ

長い間、時空の魔物とされてきたんだ。

また、ダークアビスの封印が解かれただなんて....」


私はなんて言ってあげればいいのかわからなかった。

だけど、この魔物はずっとこの鏡の中でひとりぼっちで寂しかったんだと感じた。


「あの、、魔物さん、、ずっと1人で寂しかったよね?

私と一緒に、ここから出ようよ!

女王様の変わりにはなれないけど、私とお友達になってよ。

ウルと3人でダークアビスを倒そう!

女王様と、マリーシャさんのためにも!!」


私は巨大な魔物を優しく抱きしめた。

すると魔物は、だんだん小さくなっていって完璧に猫サイズになった。



「ねぇ、あなたの名前はなんていうの?」


「私の名前はルビィと申します。まゆら様」


魔物はさっきまでとは別人格のように丁寧に自己紹介した。


「まゆら様って、まゆらでいいよ?」


「いいえ、女王様の後継者のになりうるお方にそんなご無礼はできません!」


「まぁいっか。さぁ、ここからでよう!ルビィ!」


その時、また謎の声が聞こえてきた。

同時に太陽よりも眩しい光に照らされた。

その光の中に、女の人の姿があった。


「ルビィ、、長い間、時空の魔物として辛い思いをさせてしまってごめんなさい。」


「その声は、女王様!!」


「えっ?!女王様?!この人が、、、」


「月志摩まゆら、、ありがとう。あなたの優しさがルビィの心に届いてルビィは元の姿に戻ることができたわ。」


「えっ、、私は何も、してないです、、」


女王様はクスッと笑った。


「月志摩まゆら、ルビィを頼むわね。必ずあなたの力になってくれるわ。」


女王様はそう言うと、私の手を握った。

手のひらを見ると、レッドスピネルの欠片が5つあった。


「これって、、レッドスピネルの欠片、、どうして??」


「ルビィはダークアビスの呪いにかけられていたせいで、時空の魔者になっていたのよ。

本人は気づいていなかったけれどね、、

あなたの優しさの魔法がルビィの心に届いたのよ。

ルビィ...これからのあなたの使命は、月志摩まゆらとレイディリア王国のプリンスを守ること、頼むわね。」


そう言うと、女王様は消えていってしまい、その場所に扉が現れた。

私は、ルビィを連れて、その扉から時空の鏡を抜けることに成功し、ウルの元へ戻った。

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