第4話 平穏な日常

「よし、準備はできたか?」


「準備OKだよ、、、本当に玲のところに行くの?」


「心配ないさ。時間を止める魔法が使えるだろ?」


「あっ!なるほど!!」


「ダークスピネルのオーラがあるか調べるだけだ」


私は、ウルと一緒に玲を調べることになった。

「どこにいるかわかるか?」


「うーん、、、家ならわかるけど、、」


「よし、案内しろ」


「わかった....」


「.........」


「どうした?」


「この格好で外行くの?!」


「何か問題か?」


「さすがに、この格好でカラス連れてたら近所で変な噂になっちゃうよ!!」


「さっきのポシェットの中に入ってればいいか?」


「うん、それなら大丈夫」


私は、元の姿に戻りポシェットを肩から掛けた。

ウルは、ポシェットの中の異次元空間に入っていった。

ポシェットの中に入っても、声だけは聞こえるから会話のやりとりは出来るらしい。


「ウル、、家まで行っちゃっていいの??」


「いや、近くになったら、どこか変身できる場所で変身して、近づこう。」


「わかった。」

(なんか胃が痛いな、少し遠回りして行こ)


私は、遠回りしながら行くことにした。

路地裏を通ると、最近できたカフェがあった

少し気になり覗いてみると、玲たち3人組がいた。


「あっ、、!!ウル、、、」


「どうした?」


「このカフェに、玲がいる」


「よし、変身して近づくぞ!」


カフェの隣りは、公園になっている。

大きな木の後ろに隠れて変身した。


「遙か古の女神よ深紅の輝きとその力を我に与えたまえ

リベラ ジュエル スピネルラヴルージュ」


「とりあえず、、もう少し近づいて時間を止めるんだ。魔法は、3分しかないからな。」


「うん!!!」


私は、カフェの屋根より高い場所まで飛んだ。


「レッド ジュエル ダリアーテ!」


「さっきも言った通り、時間を止めてから3分しかない、アイツの前に行って手をかざすんだ。」


「3分、、、よし、頑張ってみる!!

スピリタイムラヴティア!!」


私と、ウル以外の時間が止まっている。

私は、玲の座っている目の前にきた。


「ウル、、手をかざすだけでいいの?

本当に止まってるのかな...?」


「大丈夫だ!時間が無くなるぞ。」


私は、ウルに言われた通り玲に手をかざした。


「............」


「どぉ?」


「ダークスピネルのオーラは感じないな...

コイツが怪しいと思ったんだがな...」


「そっか...玲は操られてたんじゃなくて本心で私を...」


「まゆら!!あと、30秒しかないぞ!」


「えっ?!早っ!!」


「勢いよく高く飛ぶぞ!!」


なんとか、時間内にカフェから出れた。

玲は、本心で私に酷いことをしてきたのかと色々考えてボーっとしてしまっていた。


「まゆら、どこまで行く気だ?」


「えっ、、、うっっわぁぁぁぁあー!!

ウルぅー!!どうやって降りるのぉぉー!?」


「はぁ....世話がやける奴だな。」


ウルに助けてもらって、なんとか家まで戻ることができた。


「はぁ〜なんか疲れたな、、、」


すっかり夜になってしまった。

14歳になった途端に1日で、色々な事が起こり過ぎて正直、夢を見ているんじゃないかってボーっと考えていた。


「でも、、夢じゃないんだよなー。」


「まゆら、どうかしたのか?」


「へっ!?、、な、、なんでもない!!」


ウルは、ポシェットから何かを咥えて私の前に置いた。


「何?この箱?」


「今日は誕生日なんだろ?大した物ではないが、プレゼントだ。」


「えー!!ありがとう!!!」


箱を開けると、香水瓶のようなガラスのボトルペンダントが入っていた。


「わぁぁ〜!!素敵!!!」


「その中に、これから集める、レッドスピネルの欠片を入れるんだ。

欠片が3つ集まったら、変身しなくても簡単な魔法が使えるようになる。」


「へぇ〜!!楽しみだなぁ〜!欠片って全部で何個あるの?」


「全部で12個だ、

まゆらなら、全部集めることができると俺は信じているから頼んだぞ。」


ウルは、何か呪文を唱えた。

すると、目の前にケーキや、たくさんのごちそうがでてきた。


「誕生日と、魔法少女になったお祝いだ。

これから大変だと思うが改めて、宜しくな!」


「ウル、、、ありがとう!!!

なんかまだ、よくわかってないけど頑張るね!」


ウルと一緒に誕生日のお祝いをして、いつのまにか寝てしまっていた。

久しぶりに誕生日のお祝いをしてもらえて嬉しくて、最悪だと思っていた日から、ちょっとだけ最高の誕生日になった。



「まゆらー!!朝だ!!起きろ!!」


「い、、いったぁぁぁぁっっーい!!」


ウルが口ばしで、おでこを突いてきて目が覚めた。


「何するのよぉぉー!!」


「いつまでも寝てるからだ。」


「口ばしで、突かなくても.....」


「朝食はできてるぞ。」


「えっ?!!すっっごーい!!」


リビングには、朝食が用意されていた。


「ウル、昨日もごちそう用意してくれたり、ありがとね。」


「これから頑張ってもらわなきゃいけないから、これくらいは当たり前だ。」


ウルは、少し照れたような表情をしていた。


「さっさと食べて、出かけるぞ」


「どこに??」


「ダークアビスの調査だ。」


「え〜、、、少しはゆっくり遊びに行ったりしようよ、」


「遊んでいる暇はない!!

ダークアビスは、この街を標的に狙っている。早く、レッドスピネルの欠片を見つけなければならない。」


ウルに急かされて準備をし、ダークアビスの調査と、レッドスピネルの欠片を探しに出かけた。

ウルは、私の肩に乗っている。

空を飛ぶのは、2回目だが、あんまり怖いとは思わなかった。



「こんなに昼間から空飛んでて、誰かに見られないかな?」


「安心しろ。飛んでいる間は、見られないように今日は、魔法をかけておいた。」


「そんな事も、できるのね〜!!

ところで、調査ってどこに向かっているの?」


「...........。。。」


「まさか、ただ飛んでいるわけじゃないよね..??」


「..........。。。」


「ウルーー!!!」


「あ、、あれだ!!あそこの、賑わっている場所を調べるぞ、、、!!」


「海......??」


「とりあえず、、人がいない、岩場の影に降りるぞ!」


私の肩に乗って楽していたのに、いきなり飛び立って先に行ってしまった。


「まっ、、待ってよぉー!!」


調査って言っときながら、特に何を調べるかは考えていなかったらしい。

私は、海はしばらく来ていなかったから、少し興奮していた。


「わぁぁ〜!!海だぁぁ!!泳げないけど、少し遊びたいな〜

でも、せっかく海に来たのに、この格好じゃいやだな.....」


私は、ウルをチラッと見た。


「ん?なんだ?」


「ウル!!魔法で、水着に着替えさせて!!

お願い!!レッドスピネルの欠片ちゃんと集めるから!!せっかく海に来たのに、この格好じゃやだ!水着の方が、調査しやすいと思うし!!」


「遊びたいだけだろ?うーん。仕方ない....」


ウルは、少し面倒くさそうだったが、水着に変身させてくれた。


「わぁぁ〜!!可愛い水着っ!!」


リボンが付いた赤色の可愛い水着だった。


「まゆらには、少し派手だったな....」


「そんな事ないよ!!可愛いよこれ!」


「色気が足りんな。。。」


「........っ!!変態カラス!!」


「子供の裸には興味ない。」


「........っもぉぉー!!ど変態カラスー!!!ひっどぉーい!!子供だけどさ、、、」


ウルは、先に行ってしまった。


「まっ、、待ってよー!!」


「さっさと行くぞ。」


「自分だけ飛ぶなんてずるいーー!!」


ウルが先に行ってしまったので、完全に逸れてしまった。

夏休みということもあり、海はたくさんの人で賑わっている。


「もぉー!!どこ行っちゃったのよっ!変態カラスっ!!

カラスと逸れたなんて、、人に言えないしなー。自力で探すか、、、」


ウルを探していると、2人組の男たちに声をかけられた。


「君1人ー??よかったら俺たちと遊ばない〜?」


「あっ、、えっと友達とはぐれちゃって、、探してて、、!!」

(こーゆー人たち苦手なんだよな....)


「一緒に探してあげるから、その子も一緒に遊ぼうよ〜!」


強引に腕を引っ張られた。


「は、、、離して、、!!」


その時、誰かが私を抱き寄せた。


「悪いが、俺の連れだ。」


顔を見上げると、綺麗な藍色の髪をした長身の、まるで漫画に出てきそうな、王子様のようなイケメンがいた。


「なんだよっ!友達って男かよっ!」


舌打ちしながら、2人組は去っていった。


「あっ、、、あの、、ありがとうございます。もう、大丈夫です....。」


男の人と、こんな至近距離は初めてだから心臓がバクバクしていた。


「まったく....ボサっとして、さっさと来ないからだ。」


「えっ?」


よく見るとイケメンは、見たことあるペンダントをしていた。


「これ、、、ウルのペンダント、、?

えっ、、もしかして.....ウル?」


「気づくのが遅い。」


「いや、気づかないでしょ!!さっきまでカラスだったのに!!

元の姿に戻れるんだったら、最初っからその姿でいてよ〜!」


「魔法で一時的に変身できているだけだ。

1日しか持たないし、かなりの魔力を消費するしな。

今、ダークアビスが現れたら、戦う魔力は完全にないな。」


「えっー!!?

どうして、変身したのよっ!ダークアビスが現れたら、どうするの!!」


「まゆらが、危ない目に遭いそうだったから、助けようとしたんだ。こんな人ごみの中じゃ魔法は使えないだろ。」


ウルは、少しムッとした表情をした。


「あ、、そっかぁ、助けてくれて、ありがとう。」


「当たり前だ、守るって約束したからな。」


ウルの言葉に、またドキドキした。


「ダークアビスとの戦いになったら忙しいからな、、こうやってのんびりするのもいいだろう。」


ウルと海で遊んだり、海の家で焼きそば食べたり、なんだか恋人とデートしているみたいで楽しい1日になった。

ウルもなんだかんだ、楽しそうな表情だった。

(ウルって笑うんだ....気難しそうな話し方だったから、ちゃんと笑う人で安心した)


少し暗くなってきて帰ろうとした時に、打ち上げ花火があがった。

ウルは、花火を知らなかったみたいで、驚いていた。


「なんだ!!!爆発か?!」


「プッ、、、アハハハハハー!!」


「何が、おかしい!!」


「爆発じゃないよ〜!花火だよ?」


「は、、はなび??」


「ウルったら、こっちの世界に来る時に、コンビニは調べてきたのに、花火は知らなかったのねっ!」


「生活に必要が無い知識は、調べていないからな。」


「たしかに、生活するには必要ないけど、、

あっ!!すっごぉーい!!ハート型の花火だぁぁ!!」


ウルは、あんまり興味無さそうだった。


「空にお花が咲いたみたいで綺麗でしょ?」


「まぁまぁだな。」


花火を観終わって、残り少ない魔力でなんとか家に帰ることができた。

それから、1週間ウルと、街をあちこち調査したがダークアビスが、現れることはなかった。

私は、平和な日常がずっと続くと願っていた。

この時はまだ、これからこの街がダークアビスに支配されるなんて思ってもいなかった。

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