第106話 化け物の正体

「それで、アタシをどうするのミジュ?」


「あなたは雌なのですから、当然ヒモノさんと生殖活動でございます。さあ、生物としての本懐を遂げるのですでございます」


「えっ!?」


「セイカさん、洗浄しましょうか?」


「飛んでいますので、遠慮しますでございます」


「ヒモノ、本当に生殖活動をする気なのミジュ!?」


「あれは聞き流してくれ……」


「ヒモノさん、大陸が見えてきたでヤンス」


「本当だ。なら、話は上陸してからにしようか」



 俺たちはプーネゾム・ゾ大陸の砂浜に着地した。


 そして、ルメーセの水着を消してもらった。


「うっ、ヒモノから離れたら寒いわねミジュ。もっと抱き着いているわミジュ」


「そんな格好で水にぬれたのだから、寒くて当然だろ」


 イナミルは白い水着の上に、救命胴衣を着ているだけだ。


「なんでそんな格好をしているんだ?」


「用事を済ませたら、海で遊ぶ予定だったのよミジュ」


「着替えはないのか?」


「持っていたけど、なくなっているわねミジュ。ヒモノが持っていたりしないのミジュ?」


「いや、持ってないぞ」


「なら、海に落としてしまったのねミジュ」


「仕方ないッスね。イナミルも鳥類にしてあげるッス」


「えっ、どういうことミジュ!?」


「俺たちみたいな格好になるということだ」


「そういえば、あんたたち、なんでそんな格好をしているのミジュ?」


 イナミルに説明をした。


「そ、そうなのミジュ…… 変わった能力なのねミジュ」


「では、鳥類にしてあげるッス」


「待ってください。まずは海水にかった体を洗浄しましょう。さあ、服を脱いでください」


「その前に隠せ! マモリさん、頼むよ!」


「了解であります!」


 モザイクの衝立ついたてが現れた。


「その中でやれよ」


「そうですね。ヒモノさんが不潔な思考になってしまいますからね」


「うるさいっての!?」



「それでは、脱いでください」


「分かったわミジュ」


「ほう、なかなか良い体をしているでげすぜ。出るべきところが出まくっているでげすぜ」


「これならヒモノさんも生殖活動をしたくなりますねでございます」


 モザイクの中に、余計なヤツらが入っているぞ!?


「では、洗浄します。もちろん、セイカさんたちもです」


「「「ぎゃあああああああああああっ!!!」」」


 やれやれ。



 洗浄が終わり、イナミルは鳥類になった。


「これ暖かいわねミジュ」


「それは良かったな」


 さて、イナミルの事情を聞いてみようか。


「なぜイナミルは、あんな場所で気絶していたんだ?」


「陸上の動物をミックスジュースソルジャーに変えていたら、誰もいなくなったのよミジュ。だから、次は海の動物どもを変えてやろうと思ったのよミジュ」


 陸上の動物を、すべて変えたと言うのか!?


 とんでもない話だな!?


「そしたら、海の上であいつらに出会ったのよミジュ」


「あいつら?」


「アタシと似たようなことができる三人よミジュ」


 そいつらも海の動物を変えに来たのかな?


「そこで戦いになったのよミジュ。まずは互いのソルジャーたちを戦わせていたのミジュ」


「それでどうなったのッピ?」


「しばらくはソルジャー同士が互角に戦っていたのミジュ。ところが、突然海の中から化け物が現れたのよミジュ。そいつがソルジャーたちを、次々と体の中に入れていったわミジュ……」


 あの巨大なヤツのことかな?


「すると、そいつはどんどん巨大になっていったのミジュ。その時、アタシは特殊能力で空を飛んでいたんだけど、なぜか突然能力を使えなくなってしまったのミジュ。そして、海に落ちて気絶してしまったみたいねミジュ」


「能力が使えなくなった理由は?」


「まったく分からないわミジュ」


「他の三人は?」


「それもよく分からないわミジュ」


「ステータスウィンドウを確認してみたのニャ?」


「そういえば、していなかったわミジュ。ステータスオープンミジュ」


 イナミルの前に青白いプレートが現れた。


「な、ないミジュ!? 特殊能力がなくなっているミジュ!?」


「ステータスミックスジュースもないのか?」


「ないわミジュ……」


「いったい何が起こったんだ?」


「わたくしの電球が、あの巨大な化け物は、海に沈んだソルジャーたちが合わさったものだと言っているのです」


「ブレンドティーやミックスジュースだから、海水に溶けて交じり合ってしまったということか?」


「そのようなのです」


「では、イナミルの能力が消えたのはなぜだ?」


「おそらくあの化け物に奪われたのです」


「なら、あの化け物はイナミルたちが使える能力を、すべて使えるのか!?」


「その可能性もあるのです」


 あの巨体で、さまざまな能力が使えるのか!?


 戦いたくないなぁ。



「それで、あの化け物はどうしよう? やはりマモリさんに倒してもらおうか?」


「あの化け物は、生物の集合体なのです。光線で消し飛ばしてしまったら、すべて死んでしまうのです」


「その中に人も入っているんだよな?」


「人ミジュ? 当然いるわよミジュ」


「そうなのか」


 それが倒すのを止めた理由みたいだな。


 まあ、確かに人殺しはしたくないからな。



「なら、あいつはどうしようか? 放っておくか?」


「放っておくのは善ではないのである! なんとか解決するのである!」


「ああ、そうだな! あんなの放っておけないよな!」


「洗浄しておきましょう」


 セレンさんにぶっかけられて、正常な思考になった。



 ケイカさんがあれでは、放っておくこともできなさそうだな。


 さて、どうしようか?


「チカさんとイアーユさんが光線で倒すのを止めたということは、他に何か良い方法があるということなのかな?」


「その可能性はありそうなのです」


「それが何かは分からないのか?」


「分からないでナンス」


「そうなのか……」


 俺たちに何ができるのだろうか?

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