第102話 今更すぎるだろ

「そういえば、お姉さんたちの名前を聞いてないキュ!」


「えっ? ああ、そういえば、そうだったな」


 ものすごく今更だけど、聞いてみようか。


「君らに名前はあるのか?」


「ないのである」

「ありませんでございます」

「ないでげすぜ」


「そうなのか。なら、名付けるか。何にしようかな?」


「我は善にふさわしい名前が良いのである」

「ワタクシにこだわりはありませんよでございます。妙な名前は遠慮しますがでございます」

「我輩も欲にふさわしい名前が良いでげすぜ」


「分かったよ」


 うーむ、そうだなぁ……



「善は『ケイカ』性力は『セイカ』欲は『ノゾミ』にしようか。それで良いか?」


「なかなか良い名前なのである」

「ワタクシはそれで構いませんでございます」

「我輩も構わんでげすぜ」


「なら、決定だな。ケイカさん、セイカさん、ノゾミさん、よろしく」


「うむ、こちらこそよろしくである。では、さっそく善行に行くのである!」

「こちらこそよろしくお願いしますでございます。では、次は生殖活動でございます」

「よろしくでげすぜ。それじゃあ、世界を手に入れに行こうでげすぜ!」


「ああ、そうしよう!」


「はい、また洗浄しておきますね」


 またぶっかけられた。



「ケイカたちには、まだ見せていない特技や特殊能力があったりするのか?」


「我には『悪を感知する能力』があるのである。効果は名前通りである。善のステータス令嬢である我に、ふさわしい能力である!」


「まあ、確かにふさわしいと言えるな。ところで、ケイカさんにとっての悪とはなんなんだ?」


「我が気に入らないもの、それが悪である! そして、善とは我である!」


「そ、そうなのか……」


 えっ!?

 なんだその回答は!?


 すごく独善的だな!?



「他に何かあるのか?」


「ないのである」


「ケイカさんは、戦闘が得意だったりしないのか?」


「あまり得意ではないのである」


「そうなのか」


 警察官みたいな格好をしているのに、戦えないのか。


 意外だな。



「ワタクシには『生殖能力を強化する能力』がありますでございます。この能力は、ヒモノさんの生殖能力を強化するものでございます」


「そうなのか。セイカさんらしい能力だな」


「では、さっそく使いましょうでございます」


「それはやめろ!?」


「もう使用しましたでございます」


「ええっ!? うっ!? な、なんだこれは!?」


 体が熱い!?

 異常なほどムラムラするぞ!?


「ヒモノ様、すさまじい攻撃力ですわ!?」

「あ、あれは、私のモザイクでも防げなさそうであります!?」

「す、すごいとしか言いようがないわッスわ!?」

「あ、あれがヒモノさんなのミャン!?」


 なぜか女性たちが騒いでいる。


「ほう、これは見事でございますね。では、生殖活動開始でございます」


「そうはいきません。不潔すぎるので、洗浄します」


 セレンさんにぶっかけてもらった。


 ムラムラは治まった。


 た、助かった……



「他に何かあるのか?」


「ありませんでございます」


「セイカさんに戦闘能力はあるのか?」


「まったくありませんでございます」


「そうなのか」


 まったくないのか。



「ノゾミさんは何かあるか?」


「我輩には『貴金属、宝石類を出す能力』があるでげすぜ」


「な、なんだと!? どのくらい出せるんだ!?」


「大量に出せるでげすぜ」


「貴金属、宝石類が大量でナンス!? それを売れば大金持ちでナンス!」


「すぐ売りに行きましょうでナス~。そして、一生のんびりしましょうでナス~」


「残念ながら、この能力で出したものは、我輩が触れていないとすぐさま消えてしまうでげすぜ」


 ええ……

 それでは売れないじゃないか……


「はぁ、使えないでナンス……」


「ヒモノさんにはガッカリですよでナス~」


「そこ、うるさいぞ!?」


「ヒモノさん、そのふたりを洗浄しましょうか?」


「ああ、そうだな、頼むよ。徹底的に洗浄して、怠け癖を直してくれ」


「分かりました」


「えっ、や、やめてでナンス!?」

「わ、私は遠慮しておきますよでナス~」


「遠慮はいりませんよ。では、洗浄します」


「「あああああああああああああああっ!!!」」


 イアーユさんとヴィーミラはぶっかけられた。


 しかし、怠け癖は直らなかった。



「その貴金属や宝石は何に使うんだ?」


「そのまま殴るとかでげすかね?」


「そ、そうなのか」


 微妙な能力だな。


「他に何かあるか?」


「いや、ないでげすぜ」


「ノゾミさんに戦闘能力はあるのか?」


「ないでげすぜ」


「そうか……」


 新たなステータス令嬢が出たのに、戦力はまったく上がっていないんだな!



「さて、出発しようか」


「それじゃあ、鳥類にするッスよ」


 トーリさんが鳥類になって空を飛べる能力を使用した。


 俺たちは鳥類になった。


「あの、これはなんですかミャン?」


「あっ、リザァカさんたちは飛べないよな。トーリさん、指導してやってくれ」


「了解ッス! みんな立派な鳥類にしてみせるッス!!」


「ちょ、鳥類ミャン!? どういうことですかミャン!?」


「あーしたちは、鳥類になったッス! これで飛べるッス!」


「意味が分かりませんよミャン!?」


「羽ばたけば分かるッス! さあ、練習するッス! そっちの新入りたちもッスよ!」


「良かろうである。飛べるようになれば、善行も積みやすくなるのである」


「そうでございますね。飛べるようになれば、雌を見つけやすくなるでしょうでございます」


「うむ、世界征服もしやすくなるでげすぜ」


 リザァカさんたちは飛ぶ練習をした。


 少々時間はかかったが、みんな立派な鳥類になれた。

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