第95話 危険な道しかない
「五階でやることは、まだあるのか?」
「もうないのです」
「そうか。なら、六階に行ってみようか」
「ヒモノさん、そろそろ暗くなるわッピ。明日にしましょうッピ」
「そうだな。じゃあ、ここで休むとしようか」
俺たちは地上に下り、人類に戻った。
マ・ドクシたちのステータスウィンドウせんべいを食べてみようか。
リリィさんにせんべいを焼いてもらい、みんなで食べてみた。
「なんだこれ? なんの味もしないな? なぜだろう?」
「わたくしの電球が、あのぬいぐるみはこういう味だからだと言っているのです」
「それは食べられないということなのかな?」
「その通りなのです」
なるほどな。
「もっと美味しいものが食べたいキュ!」
「では、他のものも作りましょう」
その後、食事を取り、洗浄してもらって、就寝した。
次の日。
俺たちは六階にやって来た。
ここは一階のような洞窟なんだな。
広大な円形の部屋の中央に下り
「チカさん、また道案内を頼むよ」
「うーん……」
「チカさん、どうしたんだ?」
「どうやら分かれ道があるようなのです」
「分かれ道? 日本に帰れそうな道はあるのか?」
「そこは不明なのです」
「そうなのか。では、どんな道なんだ?」
「危険な道と、とても危険な道のふたつなのです」
「ええ……」
「ヒモノさん、どちらに行くのですか?」
「まだマシな方にしよう。みんなもそれで良いよな?」
「賛成よッピ。わざわざ危険な方を通りたくはないわッピ」
「ワタクシとしては攻めたい気もしますが、ここは自重しておきますわ。皆様の安全を優先しましょう」
「分かったのです。では、出発するのです」
俺たちは飛び立った。
しばらく飛んで行くと、地上に妙なものが置いてあった。
植物製のように見える半球型の茶色いカゴを裏返しにして、木製のつっかえ棒で支えている。
カゴの大きさは直径五メートルくらい、棒の長さは二メートルくらいだ。
なんだあれは?
まるでスズメを捕らえる罠みたいだな。
餌は仕掛けられていないけど。
「あそこに美味しそうなお菓子があるキュ……」
「本当ですねキュ~……」
キュキュとキュウィがカゴの方を見ながら、そう言った。
「ふたりとも、何を言っているんだ? そんなものはないぞ?」
「ヒモノ、なぜそこにいるんだ……」
「おおっ、あれは聖剣である俺様に
「ヒモノさん、勝手に先に行かないで欲しいのです……」
「ヒモノ、今日はそこで休憩ッスか……」
「あそこに良い茶葉がありますねコピッ……」
「あれでお茶を
「ヒモノさん、なんであんなところにいるのッピ……」
「ヒモノさん、今日はそこで寝るのですかピッ……」
「あそこにスライディングしやすそうな場所があるウニッ……」
「ヒモノ、妾を置いて行かないでよニャ……」
「ヒモノさん、なぜそんなところで寝ているのですかニュ……」
「あれは美味しそうな肉でゴザル……」
「あの麺料理は美味しそうでゴザイマスル……」
「ヒモノさん、待ってでヤンス……」
「ヒモノさん、そんなところで寝たら風邪を引きますよでヤス……」
「あそこにうまそうな肉があるでウンソ……」
「あの像はなかなか良い出来栄えオタ……」
「おおっ、金銀財宝があるでナンス……」
「あれを売れば一生のんびり暮らせるでナス~……」
「あ、あれは、なんという豪華な玉座ダッシ……」
「お姉さんを置いて先に行っちゃダメよ……」
「社長、どこに行くのですか……」
「あのカゴは食材なのでしょうか?」
「ヒモノ様、なんて攻めた姿をしていますの……」
「ヒモノ殿、先行しすぎでありますよ……」
「ヒモノさん、いつの間にそんなところに行ったのッスわ……」
「ヒモノさん、変なところで寝てはいけませんッショ……」
「うまそうな肉があるギョクッ……」
「あれは衣服を切り裂いて良い美女ウッマ……」
「これは切り裂くしかないダス……」
カゴの方を見ながら、妙なことを言い出す者が出始めた。
というか、俺とセレンさん以外の全員がおかしいぞ!?
いったいどうしてしまったんだ!?
「ヒモノさん、これは敵の不潔な攻撃です!」
「えっ!?」
「おそらく幻覚を見せる能力だと思います!」
「そうなのか!? 俺には見えないぞ!?」
「今はそんなことを気にしている場合ではありません!」
「それもそうだな! さっさとヤツを倒そう!」
俺は聖剣キノコと温泉黒卵を、カゴに向かわせた。
「ブミィィィィィィィィッ!!!」
カゴをブミらせた。
「お菓子はどこに行ったのキュ?」
「突然消えたでゴザル」
みんなが元に戻った。
どうやら倒したようだな。
「あのカゴは、どんな敵だったんだ?」
「あれはカゴの下に幻覚を出し、獲物をおびき寄せ、捕食する敵のようなのです」
「捕食? どうやって?」
「わたくしの電球が、あのカゴの内側に口があり、そこで食べると言っているのです」
「そ、そうなのか……」
ただのカゴっぽく見えるのに、そんなのあるのかぁ。
「なんで俺とセレンさんには、幻覚が見えなかったんだ?」
「私には『自身を常に清潔にする能力』がありますから、あのような不潔なものは効きません」
「そうだったのか。あの手のものが効かないのはありがたいな」
みんな洗脳されても、セレンさんが洗浄してくれそうだな。
「俺が見えなかったのはなぜだ?」
「あの能力は、見た人の最も欲しているものが見えるのです」
まあ、確かにそうみたいだったな。
「ただし、対象者が欲しているものを見たことがない場合は、能力が正常に機能しないことがあると、わたくしの電球が言っているのです」
「えっ、そうなのか? なら、俺は見たことのないものを欲しているのか?」
「そうなるのです」
それはなんだろう?
見たことのないもので、欲しいものか……
あっ!?
ま、まさか!?
アレなのか!?
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