第93話 縛るのが趣味?

 メェールさんたちを縛っていた水着が消えた。


「やっと消えたわねッピ」


「みんな大丈夫か?」


「ええ、問題ないわッピ。オヴァーンサを食べたいとは思わなくなったしねッピ」


「そうか。それは良かった」


「ところで、ヒモノさん、あなたにはああいう趣味があるのッピ?」


「なんのことだ?」


「女性をひもで縛る趣味があるのかということよッピ」


「えっ!?」


「あるのねッピ?」


「な、なんのことやら……」


「仕方ないわねニャ。良妻の妾は、夫の趣味に付き合ってあげるわよニャ」


「ええっ!?」


「さあ、ヒモノさん、私を好きなように縛るでヤンス」


「私も良いわよッスわ。こういうの初めてだから、優しくしてねッスわ」


「くっ、仕方ないでナンス。養ってもらうために、私も付き合ってあげるでナンス」


「一生養ってくれるなら、私も縛られてあげますよでナス~」


「お姉さんも包帯で縛られてあげるわよ」


「ヒモノ様は、攻めている素晴らしいご趣味をお持ちなのですわね! ワタクシも縛られてあげますわ!」


「何を言っているんだ、お前らは!?」


「ちょっと、邪魔しないでよッピ! ワタクシが縛ってもらうのよッピ!」


「何言ってんのよニャ! 妾が縛ってもらうのよニャ!」


「いやいや、ここは私に任せるでヤンス!」


「いいえ、姉さん、ここは私の出番よッスわ!」


「ほら、ヒモノ、早く縛るでナンス」


「縛って満足したら、一生養ってくださいねでナス~」


「お姉さん、良いことを思い付いたわ! ここにいるみんなを縛っちゃいましょう!」


「その通りですわね。ここは全員を攻めるのがよろしいと思いますわ!」


「これは不潔すぎますね! 徹底的に洗浄します!」


「「「あああああああああああああああっ!!!」」」


 いつもより念入りに洗浄された。



 さて、後始末をするか。


 ちゃぶ台と丸椅子のエクスレトを取り込んだ。


 うーん、体に変化はないな。


 レベルは上がらなかったみたいだ。



 ちゃぶ台のステータスウィンドウせんべいを見てみた。


 レベルは五百億、HP、MP、攻撃力、防御力が三〇億なのか。


 素早さ、器用さ、頭脳、運は三〇兆くらいある。


 極端なステータスをしているヤツだな。


 特殊能力は『少し気配を察知できるような気がする能力』があるそうだ。


 微妙な能力だな。


 丸椅子の方も同じようなステータスをしているな。



「こいつらを食べてみるでゴザル!」


「リリィお姉さん、料理してキュ!」


「分かりました」


 リリィさんがチェーンソーとダンボール箱を出して料理を始めた。



「完成しました。どうぞ」


 リリィさんが皿を調理台の上に並べた。


 そこには、ひと口サイズに切り分けられたちゃぶ台と丸椅子と、何かのスープと、適度な大きさに切り分けられたステータスウィンドウせんべいがあった。


「リリィお姉さん、これは何キュ?」


「ちゃぶ台と丸椅子の塩焼き、ちゃぶ台と丸椅子と畳とキノコのスープ、ステータスウィンドウせんべいを切ったものです」


 とんでもない単語が並んでいる料理だな。


 これがパワーワードってヤツなのか?



 では、食べてみるか。


 いただきます。


 俺はちゃぶ台の塩焼きを食べてみた。


 食感は赤身の肉みたいだな。

 弾力があって、食べ応えがある。


 味はイカみたいだな。


 丸椅子の方も同じような味と食感だ。


 ステータスウィンドウせんべいもイカの味がする。


 スープは魚介系の出汁みたいな味がする。


 どれも、とても美味しいぞ。



「リリィさん、ごちそうさま。どれも美味しかったよ」


「お粗末様でした」


 ん?

 なんだか暗くなってきたな。


 今日はここまでにしておくか。



 次の日から三日間、休憩を挟みつつ飛び続けた。


 それにしても、なかなか上り階段にたどり着かないな。


 ここってもしかして、他の階より広いのか?


「ヒモノさん、そろそろ暗くなるッピ。今日はここまでにしましょうッピ」


「そうだな。そうしよう」


 俺たちは地上に下り、就寝した。



 次の日。


 俺たちはようやく上り階段がある部屋の入り口にたどり着いた。


 いつものデザインの螺旋らせん階段が、中央に設置されている和室だ。


 あの階段も和室と全然合ってないな。


「ヒモノさん、わたくしの電球が、階段の付近に敵がいると言っているのです」


「えっ、またいるのか? 姿が見えないぞ」


「今回の敵はあまり大きくないうえに、数が少ないようなのです。もっと近づかないと見えないのです」


「そうなのか。近付いたら襲ってくるよな?」


「はい、その通りなのです」


「そうなのか。なら、不用意には近付きたくはないなぁ」


 ちゃぶ台たちみたいに、爆発したら嫌だしな。


「ヒモノ、こういう時は、あーしの偵察用鳥類を使うッスよ」


「ああ、なるほど。では、さっそく頼むよ」


「分かったッス」


 トーリさんが魚のフライを飛ばした。



「見つけたッスよ」


 宙に浮いた画面に、映像が映し出された。


 そこにはトイプードルのような茶色い犬のぬいぐるみを背中に載せた、茶色い馬のぬいぐるみがいた。


 両方ともデフォルメされているぬいぐるみで、とてもかわいらしい。


「こいつらが敵なのか?」


「はい、その通りなのです」


「そうなのか」


 あまり強くなさそうだな。


 いや、見かけだけで判断するのは良くないか。


 こんな見た目でも、凶悪な能力を持っているのかもしれないからな。



「さて、どう戦おうか?」


「ヒモノ、あいつらが動き出したッス! こっちに向かって来ているッス!」


「えっ!?」


 まだ作戦を決めてないのに!?


 くっ、仕方ない、出たとこ勝負をするしかないな!



 馬と犬のぬいぐるみが空を飛び、俺たちの前までやって来た。


 な、なんだあいつらは!?


 全長三〇センチくらいしかない馬のぬいぐるみなのに、ものすごくまがまがしいものを感じるぞ!?


 もしかして、あいつらはかつてないほどの強敵なのか!?

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